人手不足が深刻化する中、従業員の健康管理を経営上重要な課題と考え、改善に取り組む企業が増加しています。
本記事では、一部補助金の加点項目ともなっている健康経営優良法人についてご説明します。
目次
健康経営とは?
健康経営とは、経営資源の中のヒトに焦点をあて、従業員の健康維持・向上に戦略的に投資等を行うことで、企業価値向上を図る取組です。
「健康経営」とは、従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践することです。企業理念に基づき、従業員等への健康投資を行うことは、従業員の活力向上や生産性の向上等の組織の活性化をもたらし、結果的に業績向上や株価向上につながると期待されます。
出典:経済産業省「健康経営」
人手不足も深刻化する中、縁があって自社で働いてくれている従業員はかけがえのない存在です。また、今後新たな人材を雇用していくにあたっても、企業が従業員をどのように考え積極的な取り組みを行っているかというのは、応募者にとって重要な選定基準ともなっており、健康経営の重要性は年々高まっている状況です。
健康経営優良法人2025 スケジュール
大企業:2024年8月19日(月)~10月11日(金)17:00
中小企業:2024年8月19日(月)~10月18日(金)17:00
健康経営優良法人は通年認定を受けられるわけではなく、毎年夏から秋にかけて申請を行い、審査後、翌年3月に認定企業が発表されます。
また、認定は翌年までの1年間のため、1度認定を受ければその後ずっと「健康有料法人認定企業」と名乗れるわけではありません。
補助金の加点のために早急に認定を受けられるというものではなく、また、加点目的に認定を受けるべきものでもありませんので、自社の企業価値向上のため、計画的に取り組まれることをお勧めします。
健康経営優良法人とは?
健康経営優良法人とは、経済産業省の認定制度で、優良な健康経営に取り組む企業を「見える化」するものです。
企業規模に応じて大規模法人部門と中小規模法人部門と分かれており、認定を受けるために必要な要件も異なります。
「法人」と名がつくように、個人事業主は申請をすることはできません。
また、前提として、加入している保険者(協会けんぽ等)が実施している健康宣言事業に、自社が参加している必要があります。(保険者が健康宣言事業を実施していない場合は、自治体の健康宣言事業に参加するか、自社独自の健康宣言で代替可能)
例:協会けんぽ三重支部健康事業所宣言
健康経営優良法人の認定を受けるメリット
自社の企業価値向上
一番の大きなメリットとなるかと思います。
自社の健康経営に取り組んでいる企業は、取り組んでいない企業と比較して、高い株価リターンが見込まれる、離職率の低下につながるなど、様々なメリットが国の統計からも明らかになっています。
中小企業向け補助金の加点を受けられる
2024年においては健康経営優良法人の認定を受けている企業は、下記補助金において加点措置を受けることができます。
働き方改革推進支援資金(企業活力強化貸付)
「働き方改革」に取り組むために必要な設備資金・長期運転資金の融資について、優遇金利が適用されます。
外国人の在留資格審査手続きの簡素化
健康経営有料法人の認定を受けた企業に採用・採用予定の外国人の在留資格審査において、在留資格審査の手続きが簡素化されます。
ハローワーク求人票へのロゴ掲載
中小企業の採用にハローワークはとても有効で、コストもかかりません。そんなハローワークへ求人票を出す際に、健康経営のロゴを表示することで、他の求人票と差別化を図ることができます。
健康経営優良法人の申請手続き
細かい手順や、申請書作成における注意点などは、事務局のホームページ内の資料やセミナー等が充実しているため、そちらを参照いただくのが一番かと思います。
大まかな流れとしては、下記のとおりです。
Step1 | (新規の場合)申請専用サイトのIDを取得する |
Step2 | 専用サイトから申請書(Excel形式)をダウンロードする |
Step3 | 自社の取組状況を記載し、アップロードする ※締め切りまではアップロード後も修正可能 |
Step4 | 事務局から請求書が届いたら申請料を払う |
Step5 | 結果を確認する |
IDの作成および申請書のダウンロードに費用は発生しませんので、今回申請しないという場合においても、自社の現状を整理する目的で申請書をダウンロードし、現状を記入いただくのもおすすめです。
選択肢に「この選択肢を選ぶ場合は優良法人の認定対象外」ということが明記されているため、認定を得るために自社が何を解決しなければならないのか、現時点での課題を見える化できます。
おわりに
中小企業は大企業と比較し、賃金や福利厚生で差別化を図ることは難しい現実があります。人手不足が進む中、中小企業が「やりがい」といった要素だけで選ばれるということは、正直難しくなってきています。しかし一方で、中小企業はさまざまなことにチャレンジしやすいというメリットもあります。
健康経営優良法人の認定を目指すことで、自社の従業員に対する取り組みを見える化することは、有効的な取り組みの1つだと考えます。
そのうえで留意する必要があるのが、「認定を受ければそれで従業員満足度が向上し、入社希望者が増える」というわけでもないということです。
企業のメンタルヘルスケア対策支援を行う株式会社アドバンテッジリスクマネジメント様では、
健康経営に関する興味深いアンケートも公表されています。
従業員が実感を感じられない取組や、現場を無視した一方的な取組により認定を受けたとしても、従業員の満足度向上にはつながりません。
例えば小規模な組織横断プロジェクトチームを構築し、経営層と従業員が共に取り組むことなどによって、実が伴った認定を目指していただければと思います。