政府は、2024年11月29日に令和6年度補正予算案を閣議決定しました。今後、国会審議を経て年内に成立する見込みです。
そのような中、中小企業庁は本日2024年12月6日に、中小企業・小規模事業者等関連の補正予算のポイントについて情報を公開しました。補助金をはじめとした中小企業向け施策について確認することができますので、来年の自社の事業計画の策定等に役立てていただければと思います。
目次
参考:中小企業庁 令和6年度補正予算案 中小企業・小規模事業者等関連ポイント
1.持続的な賃上げを実現するための生産性向上・省力化・成長投資支援
物価高や、構造的な人手不足等、厳しい経営環境に直面する中小企業・小規模事業者の“稼ぐ力”を強化するため、様々な方法で支援を行うとしています。
1.生産性向上支援の拡充
ものづくり補助金
ものづくり補助金については、下記の対応が予定されています。
- 最低賃金近傍の事業者について、補助率を1/2→2/3に引上げ
- 製品・サービス高付加価値化枠(いわゆる通常枠)について、21人以上の中小企業を対象に補助上限を引き上げ
- 賃上げ動向を踏まえ、賃上げ要件等の見直し
今年あったオーダーメイド枠は省力化投資補助金の方に吸収されそうな感じです。
21人以上について補助上限を引き上げの意図は不明ですが、前回の概算要求の内容から考えて、中小企業→中堅企業への成長を後押ししたいのかもしれません。
今年は12月までに終える補助事業が必須だったため、来年も同様に2025年以内に完了する設備投資が求められる可能性は高いかと思います。(オーダーメイド型はそもそもこの点を満たすのが厳しかったですね)
IT導入補助金
IT導入補助金については、下記の対応が予定されています。
- 最低賃金近傍の事業者について、補助率を1/2→2/3に引上げ
- セキュリティ枠の上限引き上げ・要件見直し
- 汎用ツール・導入後支援の補助対象化
赤文字部分が2025年の変更部分となります。
また、今年は不正受給問題に揺れに揺れたため、申請はこれまでよりは厳しいものになるかもしれません。(いままでが他補助金に対して、採択率も含め優しすぎたとも言えますが)
小規模事業者持続化補助金
小規模事業者持続化補助金については、下記の対応が予定されています。
- 枠の整理等、制度を簡素化
卒業枠・後継者支援枠が廃止されました。小規模事業者が誰でも使える枠としては「一般型」一択となります。
ウェブ関連費に関する締め付けについて変更もあるとうれしいですが、現在の公表内容では「ウェブサイト関連費」も対象であることは確実そうであるものの、上限については不明です。。
事業承継・M&A補助金(旧:事業承継・引継ぎ補助金)
事業承継・M&A補助金については、下記の対応が予定されています。
- PMI推進枠の新設
- 早期承継促進のための枠再編
- 補助上限の引き上げ
「引継ぎ」が「M&A」に代わりました。税制優遇関連の施策と合わさり、M&A押しですね。
PMI推進枠は補助金のスケジュールとPMIのスケジュールはマッチするのだろうか、という疑問はちょっとあります。
2.新事業への進出にかかる支援の推進
新事業進出補助金【新設】
既存基金の活用とあるので、実質「事業再構築補助金」の後釜的補助金かなと思います。補助対象経費的も再構築補助金と同じような内容となっています。お勧め度は事務局が変わるのかどうかによります。
【参考】事業再構築補助金
3.成長支援の新設・強化
中小企業成長加速化補助金【新設】
「売上100億円を目指す中小企業等への設備投資や、中小機構による多様な経営課題への支援等を創設」とのことですが、こちらもやはり中小企業→中堅企業への成長を後押ししたい様子です。
大規模市長投資補助金同様、申請要件や採択率は厳しそうです。
中堅・中小成長投資補助金
大規模成長投資補助金続投です。今年は要件を満たしていても、大規模寄りの企業にとても普通の中小企業では太刀打ちできない感じでしたが、もっと幅広くチャンスが獲得できる内容になればいいなと思います。…が、今のところ出ている情報では、特に今年と大きな変化はなさそうです。
【参考】2024年大規模成長投資補助金
100億企業育成ファンド出資事業
中小機構のファンド出資事業に関する予算のようです。
4.省力化投資支援の運用改善
省力化投資補助金
- オーダーメイド型も幅広く対象となる枠の新設
- 既存のカタログ形式の申請についての運用改善
徐々にカテゴリは追加されて行っていますが、肝心の製品登録に時間がかかりすぎていて、おすすめしたくてもできないもったいない補助金です。大幅なてこ入れが入るとのことで、要件を満たすのであればチャレンジいただくのもおすすめです。
2.価格転嫁対策の強化
中小企業取引対策事業
中小企業の価格交渉・価格転嫁を促進するとのことですが、基本的に調査および情報発信が中心となっており、引き続き中小企業の自助努力が求められそうです。
3.資金繰り支援、経営改善・事業再生・再チャレンジ支援
日本政策金融公庫による資金繰り支援
公庫に関しては下記の対応が予定されています。
- 省力化投資に取り組む事業者の支援を拡充
- コロナ特別貸付の借換え等の対応を目的とした制度を設立
- セーフティネット貸付の金利引き下げ措置を継続
- 賃上げ貸付利率特例制度の継続
- 能登半島への資金繰り支援の継続等
信用保証協会による資金繰り支援
信用保証協会に関しては、下記の対応が予定されています。
- プロパー融資と組み合わせ協調支援型の信用保証制度を創設
- 経営改善サポート保証を継続
経営改善・事業再生・再チャレンジ支援の拡充
- 早期経営改善計画策定支援事業を通じた経営改善支援の拡充
- 中小企業活性化協議会を通じた再チャレンジ支援の拡充
早期経営改善計画は、自社の経営をより良くするための経営計画策定について、専門家の支援料の2/3を国が補助してくれる制度です。
中小企業活性化協議会は、自力での収益力の改善や事業再生等が極めて困難な中小企業等に対する相談に乗ってくれる公的機関です。
これらの公的施策もぜひ活用いただき、経営者の方には一人で抱え込まず誰かに相談をしていただきたいです。
4.中小企業・小規模事業者活性化
事業環境変化対応型支援事業
商工会・商工会議所等の専門家派遣や、よろず支援拠点(その名のとおり経営に関するお困りごとについて無料で相談できる)窓口対応人員の強化とあります。どちらも無料で診断士や税理士等に相談できるので、こちらもぜひ活用いただきたいです。
中小企業活性化・事業承継総合支援事業
事業承継・引継ぎ支援センターの体制を拡充とのことで、まず事業承継にお悩みの方は、こちらも無料で専門家が相談にのってくれるため、後継者について考え始めたら早期に活用いただくことをお勧めします。
5.災害からの復旧・復興
令和6年能登半島地震等の切れ目ない復旧支援の継続
地方公共団体による小規模事業者支援推進事業の拡充
災害からの復旧・復興についても引き続き予算が設定されています。
感想
全体的に中堅企業または比較的大きな中小企業の成長を後押ししたい様子がみられます。
全ての中小企業等が活用できる公的機関の無料相談等も活用しながら、補助金がなくとも自身でしっかりと成長できる事業計画策定の重要性が増していくものかと思われます。
また、IT導入補助金の不正問題等により、補助金については今後より審査や受給後のチェック体制が厳しくなるものと思われます。メリット部分のみではなく、デメリットも理解したうえで有効活用いただければと思います。