IT導入補助金2025 1次採択率について

2025年6月18日に、IT導入補助金2025の1次採択結果が発表されました。
本記事では、1次の採択率と、残念ながら不採択となってしまった事業者様が、採択を目指すためのポイントをお伝えします。

目次

IT導入補助金2025の1次採択率

1次の採択率は、通常枠が50.7%、インボイス枠が57.6%、セキュリティ対策推進枠は100%という結果となりました。加点がつくセキュリティ対策推進枠に対し、多くの人が申請する通常枠・インボイス枠においては、ものづくり補助金並みの採択率となりました。

申請枠申請者数採択者数採択率
通常枠2,9791,51150.7%
インボイス枠(インボイス対応類型)6,4463,71057.6%
セキュリティ対策推進枠77100%

従来80%を超えるような採択率であった中、全体的に審査が厳しくなったのか、それとも今年の制度変更に対応しきれておらず審査での評価が低くなってしまったのか、1次の結果だけではまだ判断がつきかねる状況ではあるため、引き続き2次、および1次不採択の人が再申請も行う3次の結果でようやく今年の審査傾向が見えるのかなと思います。

採択を目指すためのポイント

不対策の事業者様が多い一方で、もちろん採択されている事業者様もいらっしゃいます。
ここからは、IT導入補助金2025の制度変更を加味して、採択を目指すために何が行えるかを確認していきたいと思います。

申請要件を満たしているか

基本的ですが確認しておきたいこととして、一度過去に採択された事業者様は、一定期間を開けないとIT導入補助金を再利用することはできません。たとえば通常枠の場合は、下記のような制限があります。

※IT導入補助金2024の通常枠及び複数社連携IT導入枠で交付決定を受けた事業者(グループ構成員を含む。)は、交付決定日から12カ月以内にIT導入補助金2025の通常枠で申請することはできない。
※ 「サイバーセキュリティお助け隊サービス」の登録を受けたITツールについて、IT導入補助金2022、2023及び2024において、いずれかの枠で交付決定を受けた場合又はIT導入補助金2025において、いずれかの枠で申請を行っている若しくは交付決定を受けた場合、本事業の申請を行うことはできない。

通常枠で過去採択を受けた方が通常枠、インボイス枠で過去採択を受けた方がインボイス枠で再申請をしたいという場合、前回交付決定から12カ月空いている必要があります。
また、「サイバーセキュリティお助け隊サービス」の登録を受けたITツールで2022~2025の間に採択を受けている場合は、再度採択を受けることはできません。

補助対象となるITツールで申請をしているか

IT導入補助金は前提として、事前に事務局の審査を通ったITツールのみが補助対象となっていますが、公募要領の「申請要件」として、下記項目があります。

(タ) 導入するITツールに比して役務費用が占める割合が著しく高額でないこと。

この項目自体はこれまでもありましたが、今年のIT導入補助金で役務に関するITツールが「高額」が理由で差戻が起こっていることが多いことから、「役務」に対する評価がより厳しくなっている様子が見られます。
そのため、「昨年まではこのソフトウェアと役務の組み合わせでも普通に採択されていた」という場合であっても、今年は改めてソフトウェアの価格(本来の補助対象)に対して役務費用(おまけ部分)の比率が高くなっていないか、再考する必要もあるかと思います。

減点対象に当てはまっていないか

補助金は他事業者との相対評価の面もあることから、申請者が減点対象に当てはまっていないことも重要です。(1つ程度ならまだしも、複数当てはまっているという場合はなかなか難しいと思います)

通常枠の場合(各申請枠によって相違があるためご注意ください)の減点項目は下記の通りです。

1) IT導入補助金2023のデジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)及びIT導入補助金2024のインボイス枠(インボイス対応類型及び電子取引類型)において交付決定を受けた事業者

2023年、2024年に別枠で交付決定を受けている場合に、審査で減点が行われます。

2) IT導入補助金2025において、インボイス枠(インボイス対応類型及び電子取引類型)で申請を行っている若しくは交付決定を受けた事業者

2025年に別枠で申請または交付決定を受けている場合には減点が行われます。

※ なお、1)及び2)において選択されたITツールと同一の機能(会計・受発注・決済)を有するITツールを導入する場合は更なる減点を行う。

また、上記補足のとおり、過去採択を受けたITツールによって大幅減点が行われます。

3) IT導入補助金2023又はIT導入補助金2024において交付決定を受けたソフトウェアのプロセスと、今回導入するソフトウェアが有するプロセスが重複する事業者

2023年、2024年で交付決定を受けたソフトウェアのプロセスと、今回導入しようとしているソフトウェアのプロセスが重複している場合、減点が行われます。
尚、過去採択を受けたソフトウェアはもう過去のIT導入補助金のサイトから検索して調べることができないため(今年度も同じ内容でITツール登録されていれば検索できますが)、どのプロセスで登録されていたかは、販売店にご確認いただくか(ただこれも担当の方が覚えていらっしゃればとなります)、想像するしかないかと思います。

※ なお、プロセスが完全に一致する場合、不採択とする。

また、上記補足の通り、プロセスが重複するだけではなく完全一致の場合には、不採択となります。
特に業種特化型のソフトウェアの場合に完全一致に当てはまりやすいため、ご注意ください。

4) IT導入補助金2024以降において賃金引上げ計画による加点を受けたうえで採択されたにも関わらず、申請した加点要件を達成できなかった事業者(やむを得ない理由によるものを除く。)

2024年に交付決定を受けて12カ月たっていても、前回申請時に賃上げ加点を受け、しかし達成していないという場合は、減点となります。

5) 中小企業庁が所管する他補助金において、賃金引上げ計画による加点を受けたうえで採択されたにも関わらず、申請した加点要件を達成できなかった事業者(やむを得ない理由によるものを除く。)

IT導入補助金に限らず、他中小企業庁の補助金で賃上げ加点を受け、未達成だった場合には減点が行われます。

今年は特に「過去申請とプロセス重複」または「完全一致」で不採択となってしまっている事業者様が多いのではないかと推察します。

取れる加点を取っているか

採択の確率をあげるためには、取れる加点は積極的に取っていくことをお勧めします。6月には加点項目が1つ追加されているのもありますので、これから申請や再申請を行う場合には、当てはまる加点・取れそうな加点がないかご確認ください。

下記は通常枠の加点項目となります。

1) 地域未来投資促進法の地域経済牽引事業計画(IT導入補助金の申請受付開始日が当該計画の実施期間内であるものに限る。)の承認を取得していること。

各市区町村・都道府県等で定めている「基本計画」に基づき作成した「地域経済牽引事業計画」があり、認定も受けており、かつ計画の実施期間中にIT導入補助金の申請受付開始日が含まれている、ということで相当ハードルが高く、IT導入補助金のためにこれから取るというものではなく、あくまで既にお持ちであれば、というものです。お勧め度は低いです。

2) 交付申請時点で地域未来牽引企業に選定されており、地域未来牽引企業としての「目標」を経済産業省に提出していること。

こちらも1)同様にIT導入補助金のためにというのではなく、既に該当していれば、というものです。

3) 導入するITツールとしてクラウド製品を選定していること。

ソフトウェアがクラウド対応している場合には無条件で加点がつきます。事業者様はITツール検索結果画面で確認することもできます。

4) 導入するITツールとして「サイバーセキュリティお助け隊サービス」を選定していること。

この加点があるため、そもそもセキュリティ対策推進枠は採択されやすいのかと思います。

5) 導入するITツールとしてインボイス制度対応製品を選定していること。

クラウド対応同様に、ソフトウェアがインボイス対応の場合は無条件で加点が尽きます。事業者様はITツール検索結果画面で確認することもできます。

6) 補助金申請額150万円未満の申請者であって、事業計画期間において、賃上げ要件を全て満たす3年の事業計画を策定し、実行していること。

申請時に賃金計画を入力しますが、それと合わせて「賃上げの実施」を宣言することで加点を受けることができます。補助金額150万以上の場合は賃上げは義務となります。

加点を受けて採択をうけ、未達成だった場合は、減点項目に記載がある通りIT導入補助金およびほかの中小企業庁系補助金で数年間減点を受けることになります。

なお、賃上げ要件については、自社の最低賃金(時給換算したもの)を「地域別最低賃金+30円以上」より「地域別最低賃金+50円以上」の目標値を設定することで、通常の賃上げよりもさらに高い加点を受けることができます。

賃上げは補助金を受け取った後3年間継続して行う必要がありますので、選択の際はよくよくご検討ください。

7) 補助金申請額150万円以上の申請者であって、2-1-1(2)(テ)に基づき策定した事業計画において、事業場内最低賃金を地域別最低賃金+50円以上の水準にしていること。

賃上げが義務である150万以上の補助金を受ける事業者が、自社の最低賃金(時給換算したもの)を「地域別最低賃金+50円以上」とする場合に加点を受けることができます。

8) 中小機構が運営するデジタル化支援ポータルサイト「デジwith」における「IT戦略ナビwith」を交付申請前に行っていること。

下記サイトで、IT導入補助金を申請するGbizIDと同じメールアドレスを入力して実施を行い、結果を添付することで加点がつきます。

所要時間5分もかからず、加点の中でも一番のおすすめです。

9) 令和6年度に「健康経営優良法人2025」に認定された事業者であること。

令和6年度に受けている必要があるため、あくまで既に認定をうけていれば加点を受けることができます。

10) 交付申請時点で、えるぼし1段階目~3段階目又はプラチナえるぼしのいずれかの認定、くるみん、トライくるみん又はプラチナくるみんのいずれかの認定を受けていること。

こちらもすでに認定を受けていれば加点を受けられます。一般事業主行動計画の公開だけでは加点対象とはなりません。

11) 交付申請締切日時点において、中小企業庁「成長加速マッチングサービス」で会員登録を行い、挑戦課題を登録していること。

6月から新しく追加された加点です。下記サイトで自社の情報を登録し、課題を登録しいずれかの支援機関に公開することで加点を受けられます。

当方は支援機関側で登録していますが、細かく記入されている事業者様と、1行程度のシンプルな課題を登録されている事業者様と様々です。一般公開はされませんが、課題解決の支援ができると判断した支援機関から連絡が来る可能性もありますので、自社の解決したい課題をこの機会に公開して挑戦してきたいという場合には良いのではないでしょうか。
登録作業自体はそんなに複雑ではありません。

さいごに

1次の採択率がなかなか厳しく、今までの感覚で申請してまさかの不採択で驚かれた事業者様、IT導入支援事業者様も多いのではないでしょうか。

補助金の制度は毎年少しずつ変わっていきますので、「前回同様に」という考えはいったん捨てて、改めて今年の状況にあっているかを分析した上で、申請・再申請を検討いただければと思います。

中小企業診断士。 補助金の申請支援や融資に関する相談など、中小企業のお金に関するお悩みの解決に尽力しています。国の施策はとにかく複雑なものが多いですが、1件1件について常により良い結果を目指し、わかりやすくをモットーに、全力で事業者様をご支援しております。