2025年IT導入補助金で役務をITツール登録する場合に気を付けること

2025年2月21日に、IT導入補助金のホームページ上に2025年のIT導入支援事業者登録の手引き・ITツール登録の手引きと共に、役務をITツールとして登録するための価格説明資料の様式などが公開されました。
大分類III役務については、これまでもITツール導入時の設定や、導入後の保守サポートを1つのITツールとして登録することで、ソフトウェアの交付申請を行う際に合わせて補助対象とすることができました。
今回、補助対象となる役務に新たに「活用コンサルティング」が追加され、それと合わせて役務のITツール登録方法や実績報告方法などに変更が入っています。
本記事では、ソフトウェアと合わせてお客様に提供することで、スムーズなIT利活用に繋げていただくことができるこの「役務」のITツール登録する際に、IT導入支援事業者が気を付ける点について説明いたします。

役務がITツール?

そもそも役務がITツールとは何ぞやという話ですが、IT導入補助金では下記補助対象となるものは、すべて個々の「ITツール」として登録申請を行い、事務局から承認を得られたものについて、組み合わせて補助金申請を行うことができます。

IT導入補助金の補助対象

たとえばカテゴリー1のソフトウェアを補助金を活用して導入したい場合、そのソフトウェアと合わせ、導入設定費や保守サポート費も併せて補助金申請することで、ソフトウェアのみならず、ソフトウェアを活用するためには必要不可欠な役務についても補助を受けることができます。

昨年まではカテゴリー5は「導入コンサルティング」のみでしたが、購入したものはいいもののその後活用されず放置されるようなことがないように、「活用コンサルティング」も補助対象として追加されました。

IT導入補助金2025で補助対象となる役務

カテゴリー5(導入コンサルティング・活用コンサルティング)

カテゴリー対象となるもの
導入コンサルティングマスタ類の設定項目洗い出しに係る費用
パッケージ導入計画作成費用
業務移行計画(並行稼動)作成費用
教育計画作成費用
新システム本稼動判定(検収)基準設定費用
データ移行計画作成費用
復旧計画策定費用
カスタマイズ項目洗い出し費用
パッケージFit/Gap分析費用
活用コンサルティングITツール利活用に関するノウハウの提供を目的とするコンサルティング費用
<業務例>
●機能アップデートに係る教育(研修)に関する業務
●他社でのツール活用事例の共有や当該事例を基にした改善提案 など
ITツール利用定着のためのコンサルティング費用
<業務例>
●ITツール利用状況のモニタリング
●モニタリングに対する評価・改善策の提案 など
経営実態の変化に対応したITツールの利活用に係るコンサルティング費用
<業務例>
●組織改編(人事異動等)による新規ユーザー(補助事業者)への教育(研修)
●予定されている法改正等に対応するための利用方法に関する教育(研修)

各項目について、それぞれの業務内容と価格(時間単価×時間×人数)をExcelに記載して説明する必要があります。

カテゴリー5のITツールは、1申請あたり1ツールしか申請できません。
そのため、顧客Aには導入コンサルティングのみ提供、顧客Bには活用コンサルティングのみ提供、顧客Cには導入コンサルティングと活用コンサルティングの両方を提供したいという場合には、パターンA、パターンB、パターンCそれぞれのITツール登録を行っておく必要があります。

導入コンサルと活用コンサルの組み合わせ

カテゴリー6(導入設定・マニュアル作成・導入研修)

  1. 導入設定費用、テーブル設定費用等
  2. CSVデータ・アップロード作業に係る費用(既存データ対象)
  3. カスタマイズ作業に係る費用
  4. 研修資料作成、研修実施費用
  5. 運用マニュアル作成費用
  6. RPAのシナリオ制作費、AI初期学習設定

カテゴリー7(保守サポート)

  1. 保守費用
  2. 問合せ窓口費用

カテゴリー6・カテゴリー7については、登録時にいずれかのソフトウェアとの紐づけが必須となります。(また、紐づける対象のソフトウェアが先に承認済となっている必要があります)

IT導入補助金2025の役務提供価格の設定

カテゴリー7(保守サポート)の費用については、最大2年分の費用が補助対象となるため(申請時に1年または2年いずれかを選んで申請)、価格説明資料に記載する費用は、1年分の費用となります。※特に去年までと考え方は変わりません

カテゴリー5・6については1つしか登録できず、個数・年数で価格の変更も行えないため、フルで提供した場合の価格を設定しておき、後は顧客により実施しない事項がある場合は、その内容に応じて補助金申請額を調整する必要があります。

【例】導入設定・マニュアル作成・導入研修すべて行うITツールを登録した場合

ITツール業務提供価格
ソフトウェアソフトウェア本体20万円
役務導入設定費用、テーブル設定費用等6万円
カスタマイズ作業に係る費用2万円
研修資料作成、研修実施費用2万円
運用マニュアル作成費用2万円
標準提供価格32万円

全てをフルで提供した場合の価格は32万円であるのに対し、例えばこのうち運用マニュアル作成をしないのであれば、かかる費用は30万円として補助金申請をすることとなります。
導入設定費が非常に軽微なものとなるお客様の場合であれば、導入設定費用・テーブル設定費用も6万円ではなく3万円で申請する場合もあるかと思います。

IT導入補助金2025で役務を申請した場合の実績報告時の注意点

役務を補助対象として申請した場合、IT導入支援事業者は実績報告時に、事務局が指定した様式に沿って実施内容説明資料を提出する必要があります。(様式は現在未公表)
登録された業務以外の業務が実施されている場合や、実際に実施した業務内容と実績報告額との整合性が確認できない場合、実態のない業務内容を実施したものとして報告した場合は、補助対象外又は交付決定の取消しとなる場合があるとしていますので、十分に注意しましょう。

また、役務の実施実態資料(業務日誌、勤怠管理簿、議事録等)の提出を求める可能性があるともしていますので、役務を補助対象とした場合には、お客様事に、いつ・誰が・何時から何時にわたってどのような役務を提供したのか等の情報をきちんとまとめておくことをお勧めします。

さいごに

人件費に関する補助対象経費は、いずれの補助金においても、固定資産を補助対象とするものよりも複雑になりがちです。価格の根拠があいまいになりやすいから、国としても慎重にならざるを得ないのかと思います。
とはいえ、手間ではあってもきちんと理解したうえで適切に処理をすれば複雑なものではありませんので、しっかり制度を理解したうえでITツール登録を行い、お客様への積極的にご案内いただければと思います。

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