オーバーツーリズムの未然防止・抑制による持続可能な観光推進事業1次の公募が開始しました(締切:2025年3月14日)

2025年2月17日より、オーバーツーリズムの未然防止・抑制による持続可能な観光推進事業の1次公募が開始しました。
この補助金は、観光客が集中する一部の地域や時間帯によって、過度の混雑やマナー違反による地域住民への生活への影響や、観光者の満足度低下が生じることを未然に防止・抑制するための取組について支援をするものです。
本記事では、対象となる中小企業がスムーズな申請に繋げられるようにするために、補助金の制度についてわかりやすく説明いたします。

オーバーツーリズムの未然防止・抑制による持続可能な観光推進事業の概要

オーバーツーリズムの未然防止・抑制による持続可能な観光推進事業では、オーバーツーリズムの未然防止・抑制のための下記のような取組が補助対象となります。

オーバーツーリズムの未然防止・抑制による持続可能な観光推進事業の補助対象

本補助金では、地方公共団体やDMOが中心となり地域一体でオーバーツーリズム対策に取り組む「地域一体型」と、地方公共団体やDMOのほか民間事業者等が単独または連携して取り組む「実証・個別型」と2つの申請類型が存在します。
本記事では、このうち民間事業者等がこの補助金を利用することを想定し、「実証・個別型」について説明いたします。

オーバーツーリズムの未然防止・抑制による持続可能な観光推進事業1次公募のスケジュール

オーバーツーリズムの未然防止・抑制による持続可能な観光推進事業の1次公募は、下記スケジュールが予定されています。状況により2次公募も予定しているとしていますが、1次の審査状況によっては2次公募はないということですので、検討されている方は1次で申請されることをお勧めします。

オーバーツーリズムの未然防止・抑制による持続可能な観光推進事業1次公募のスケジュール

補助金の対象となるのは、交付決定後から2026年2月27日までに発生した費用(契約・発注~支払の一連の取組)のみが対象となります。事前に契約したものや既に購入したものなどは補助対象とはなりませんのでご注意ください。

オーバーツーリズムの未然防止・抑制による持続可能な観光推進事業の申請要件

オーバーツーリズムの未然防止・抑制による持続可能な観光推進事業の1次公募に、民間事業者等が申請する場合の要件は、以下のとおりです。

  1. 受⼊環境の整備・増強、実情に応じた需要の適切な管理、⽐較的空いている時間帯・時期・場所への需要の平準化、マナー違反⾏為の防⽌・抑制、地域住⺠と協働した観光振興等、観光地において⽣じることが想定される様々な課題のうち、⼀つまたは複数のタイプに係る取組を実施すること
  2. 関係する地⽅公共団体と連携して事業に取り組むこと
  3. 取組の実施主体や連携する主体に、反社会的勢⼒と関係する者が含まれていないこと

民間事業者等が申請する場合は、あらかじめ関連する地方自治体から同意書を取得する必要があります。

オーバーツーリズムの未然防止・抑制による持続可能な観光推進事業の補助金額・補助率

補助金額・補助率は、下記のとおりです。

補助上限額補助率
5,000 万円1/2

オーバーツーリズムの未然防止・抑制による持続可能な観光推進事業の補助対象経費

オーバーツーリズムの未然防止・抑制による持続可能な観光推進事業で補助対象となるのは、対象となる取組の実施に係る経費と、地域全体の観光地域づくりのための経費です。
具体例としては下記のとおりです。

対策計画/補助事業計画に基づく事業

補助対象事業具体的な経費例事業実例
受⼊環境の整備・増強
観光客が集中する地域における交通⼿段や観光インフラの充実に係る事業
・観光客向けの移動⼿段確保に係る経費
・⼿荷物配送スキームに通じた⼿ぶら観光の推進に係る経費
・ポイ捨て防⽌のための ICT を活⽤したごみ箱設置費 等
●観光特急バスの運行開始(京都・京都市交通局)
●路線バスのラゲージスペース整備(箱根・箱根登山バス株式会社)
●インバウンドを対象としたキャリケース配送実証事業(日本電気株式会社)
需要の適切な管理
実情に応じた⼊域管理や異なる需要に対応した運賃設定の促進等に係る事業
・渋滞緩和のためのパークアンドライド駐⾞場整備費
・⼊域制限の実証・導⼊に係る経費
・⼊場料⾦の導⼊に係る経費 等
●登山事前登録システムの導入・試行(富士山・静岡県)
●登山道入り口仮説ゲートの設置・通行規制(富士山・山梨県)
需要の分散・平準化
空いている時間帯・時期・場所への誘導・分散化に係る事業
・混雑状況を可視化・リアルタイム配信に係る経費するためのウェブサイトやアプリ開発費
・早朝プログラム等のコンテンツ開発費 等
●混雑情報の配信サイトの開設(白川郷・白川村役場)
●嵯峨嵐山エリアの局地的混雑を踏まえた回遊ルート誘導実証(嵯峨嵐山・京都市)
マナー違反⾏為の防⽌・抑制啓発
マナー違反の防⽌や旅マエ・旅ナカにおける啓発に係る事業
・マナー啓発のための看板・ポスター設置等の経費プロモーション費⽤
・外国⼈観光客へのマナー啓発のための多⾔語化対応費 等
地域住⺠と協働した観光振興
観光の意義や効果に係る地域住⺠の理解・認知向上に図る事業
・地域住⺠等向けにオーバーツーリズム対策事業について説明する資料作成・活⽤経費
・観光が地域にもたらす恩恵を地域住⺠に対して周知する経費
・地域資源を活⽤した住⺠参加型の観光コンテンツ造成費 等
●持続可能な観光計画の策定(銀山温泉・尾花沢市)
調査・分析
現状の把握・分析や新たな制度導⼊の検討に係る事業
・事業の調査分析費
・新たな制度導⼊の検討にあたっての専⾨家意⾒聴取に係る経費
・事業の効果検証費 等

地域全体の観光地域づくりに関わる事業

補助対象事業具体的な経費例
地域全体の観光地域づくりに関わる事業・協議会運営に関わる経費
・地域の観光計画の磨き上げ・効果検証に要する経費
・地域住⺠などの理解・認知度向上に係る経費 等

本事業の実施のための経費のみが補助対象となり、自社の恒常的に発生する経費などは対象外となります。

オーバーツーリズムの未然防止・抑制による持続可能な観光推進事業の申請に必要な書類等

補助金の申請にあたって準備するものについては、下記のとおりです。各種様式は申請用マイページからダウンロードすることが可能です。

様式名概要作成者
様式 1:申請主体情報・補助事業⼀覧申請主体、補助対象事業者に関する情報のほか、補助事業、補助対象経費についてとりまとめて記載する様式申請主体
様式 2:事業概要観光地としての地域の概要や現状の分析、事業の概要を記載する様式申請主体
様式 3:補助事業計画個別の補助事業について目的やKPI、実施場所・期間・内容等の概要を記載する様式補助対象事業者
様式 4:経費計画個別の補助事業に要する経費について記載する様式補助対象事業者
様式 5:事業スケジュール個別の補助事業のスケジュールについて記載する様式補助対象事業者
様式 6:連携する地⽅公共団体の同意書関係地⽅公共団体

3社で連携して事業を行う場合は、代表者のみ様式1・2を作成し、様式3・4・5に関しては3社がそれぞれ作成する必要があります。

本事業は民間事業者の利益向上のために実施されるものではありませんので、事業計画は観光客・地域・住民それぞれがメリットを得られるものであるかどうか、十分に留意して策定しましょう。

さいごに

2024年12月の訪日外国人旅行客数は349万人と、単月として過去最高を達成。2014年1月~12月の総数も約3,700万人と、年間合計数も過去最高となりました。各月においてもコロナ前の2019年以上となり、コロナで落ち込んだ観光需要が回復すると共に、それ以上の需要拡大が見込まれています。
オーバーツーリズム防止・抑制に向けた取り組みは、地方公共団体等のみが積極的に行えばよいわけではなく、民間事業者も共に取り組むことでより大きな効果が期待できます。
補助金を活用し、ぜひ地域のより良い環境整備に繋げていただければと思います。

中小企業診断士。 補助金の申請支援や融資に関する相談など、中小企業のお金に関するお悩みの解決に尽力しています。国の施策はとにかく複雑なものが多いですが、1件1件について常により良い結果を目指し、わかりやすくをモットーに、全力で事業者様をご支援しております。