2025年3月10日に、宿泊施設サステナビリティ強化支援事業の公募要領が公開されました。
この補助金は、訪日外国人旅行者の受け入れに向けて、宿泊施設が実施するサステナビリティの向上に関する取組を支援をするものです。
本記事では、対象となる民間企業がスムーズな申請に繋げられるようにするために、補助金の制度についてわかりやすく説明いたします。
目次
宿泊施設サステナビリティ強化支援事業の概要
宿泊施設サステナビリティ強化支援事業では、近年、訪日外国人旅行客を中心にサステナブルな旅行や宿泊施設を利用したいというニーズが高まっていることから、旅館・ホテル等の宿泊施設がサステナビリティの向上に関する取組を支援するものです。

このため、本補助金の補助対象者は、宿泊事業者に限定されます。
宿泊施設サステナビリティ強化支援事業のスケジュール
宿泊施設サステナビリティ強化支援事業の申請は、2025年3月24日(月)~2025年5月30日(金)17時の間で受付が行われます。
二次公募は、一次公募の申請状況によって検討するとしていますので、基本的には今回の申請期間中に申請を行うことをお勧めします。
手続きの流れは下記のとおりです。補助金の対象となるのは、交付決定後に発生した費用(契約・発注~支払の一連の取組)のみが対象となります。事前に契約したものや既に購入したものなどは補助対象とはなりませんのでご注意ください。
審査については、早く申請した事業者から先に審査を行い、採択決定をしていくとしています。
また、必要に応じて書類審査に加えてヒアリングも行われる可能性があります。

宿泊施設サステナビリティ強化支援事業の申請要件
宿泊施設サステナビリティ強化支援事業で対象となるのは、要件①を満たす宿泊事業者で、かつ要件②または要件③いずれか一方の要件を満たす事業者です。(①か②、または①か③の組み合わせが必須で、①のみ満たすという場合は対象外です)
要件 |
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要件①:旅館業法第3条第1項に規定する許可を受けた宿泊事業者 |
要件②:宿泊業の高付加価値化のための経営ガイドラインの登録を受けた方、又は同制度の登録申請をされた方 |
要件③:要件②の登録を受けておらず、有価証券報告書を内閣総理大臣に提出する会社又はその関連会社であり、かつ観光施設における心のバリアフリー認定制度の認定を取得済み又は 1 年以内に取得予定である方 |
同一事業者(代表者が同一、または親会社や子会社など企業会計が同一)が4施設以上分について補助金申請を行うことはできません。(いいかえると、同一事業者は3施設分までが補助対象となります)
第三条 旅館業を営もうとする者は、都道府県知事(保健所を設置する市又は特別区にあつては、市長又は区長。)の許可を受けなければならない。ただし、旅館・ホテル営業又は簡易宿所営業の許可を受けた者が、当該施設において下宿営業を営もうとする場合は、この限りでない。
(旅館業法第3条第1項)
なお、旅行業法第2条では、旅行業を下記のように定義しています。
第二条 この法律で「旅館業」とは、旅館・ホテル営業、簡易宿所営業及び下宿営業をいう。
2 この法律で「旅館・ホテル営業」とは、施設を設け、宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業で、簡易宿所営業及び下宿営業以外のものをいう。
3 この法律で「簡易宿所営業」とは、宿泊する場所を多数人で共用する構造及び設備を主とする施設を設け、宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業で、下宿営業以外のものをいう。
4 この法律で「下宿営業」とは、施設を設け、一月以上の期間を単位とする宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業をいう。
5 この法律で「宿泊」とは、寝具を使用して前各項の施設を利用することをいう。
(旅行業法第2条)
このため、旅館、ホテル、民宿、カプセルホテル、簡易宿所営業として許可を受けた民泊などが対象になるかと思います。
宿泊業でも補助対象外となる要件
- 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(昭和23年法律第122号)第2条第6項に規定する店舗型性風俗特殊営業を営む者である
- 本補助金で申請する設備について、国や地方自治体の補助金を重複して受けている(または受ける)
- 宿泊事業者と工事(又は機器の発注)を請負う工事業者の代表者が同一である、又は企業会計が同一である
宿泊施設サステナビリティ強化支援事業の補助金額・補助率
宿泊施設サステナビリティ強化支援事業の補助金額・補助率は、下記のとおりです。
補助上限額 | 補助率 |
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1000万円 | 1/2 |
宿泊施設サステナビリティ強化支援事業の補助対象経費
宿泊施設サステナビリティ強化支援事業で補助対象となるのは、下記経費です。
補助対象経費 | 例 |
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①宿泊施設において既存設備を入れ替える事で建物全体の省エネ対策に資する設備・備品の購入・設置に要する経費(設備・備品の購入・設置に附随する経費を含む。) | ・ 省エネ型空調 ・ 省エネ型ボイラー・配管 ・ 二重サッシ ・ 節水トイレ ・ 照明機器 ・ その他建物全体の省エネに資する設備・備品 |
② 宿泊施設において新たな設備を導入する事で環境負荷低減や、CO2 削減に寄与する設備・備品の購入・設置に要する経費(設備・備品の購入・設置に附随する経費を含む。) | ・ 太陽光発電、蓄電設備 ・ 温室効果ガス排出量計測システム ・ その他環境負荷低減や、CO2削減寄与に必要な設備・備品 |
既存の設備の入れ替えではなく、新たな設備にも活用できることがポイントです。他の省エネ関係の補助金の場合、既存設備との入れ替えにより省エネ効果を得られるものについて補助対象となることが多く、入れ返せずに補助対象とできることはまれでありメリットも高いと考えます。
宿泊施設サステナビリティ強化支援事業の申請に必要な書類等
宿泊施設サステナビリティ強化支援事業の申請にあたって必要となるものについては、下記のとおりです。「宿泊業の高付加価値化のための経営ガイドライン」と「有価証券報告書等」についてはいずれか一方の提出が必須です。
様式名 | 概要 |
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事業計画申請書 | 申請システムにて記入 |
事業計画書 | 申請システムにて記入 |
費用積算書 | 申請システムにて記入 |
整備箇所写真 | 任意様式で作成し提出 |
図面 | 任意様式で作成し提出 |
見積書(2者以上) | 導入を予定している設備・備品等のカタログで、省エネ効果が明示されているものを添付 |
宿泊業の高付加価値化のための経営ガイドライン(登録番号または登録申請送信メールの写し) | 任意様式 |
・有価証券報告書のURL ・観光施設における心のバリアフリー認定制度(取得計画表または認定通知書の写し) | 任意様式 |
提出時優先採択:【資料 A】宿泊施設の損益管理実態が分かる資料 | 令和6年4月1日から令和7年5月30日までの期間内の1カ月分。 売上と費用の月次(週次)目標を設定し、当月実績と比較して、達成度合いを管理している資料を理想とするが、売上と費用の実績を管理していることが分かる資料の提出で代用可。 |
提出時優先採択:【資料 B】集客促進を目的とした顧客情報の管理や統計分析等を実施してい ることが分かる資料 | 令和6年4月1日から令和7年5月30日までの期間内の1カ月分以上。 公式HPや公式SNSのインサイトにて閲覧数等の統計を管理している資料を理想とするが、マーケティング戦略を構築する際に利活用する顧客属性(アンケートや予約情報から集計した情報)を Excel や PMS 上で集計・グラフ化していることが分かる資料の提出で代用可。 |
提出する資料や、満たす要件、申請の速さによって順次優先的に審査が行われていきます。
出来る限り優先採択される方法で申請が行えるとベストです。

さいごに
訪日外国人旅行客を抜きにしても、エネルギー価格の高騰が続く中、省エネ設備等の積極導入は非常に重要です。許可を受けた宿泊事業者であれば申請要件を満たすことは難しくないかと思いますので、投資予定があるという事業者様は積極的なチャレンジをおすすめします。