設備投資を検討する際、製造業の経営者から最も多く聞くのが、

  • 「この設備、補助金は使えますか?」
  • 「補助金と融資、どちらを優先すべきでしょうか?」

という質問です。

確かに、補助金も融資も、設備投資を進めるうえで有効な手段です。

しかし実務では、「補助金か、融資か」という二択で考えたこと自体が失敗の入り口だったというケースも少なくありません。

本記事では、公募回や年度に依存せず、

  • 補助金と融資をどう位置づけるべきか
  • 設備投資の性格によって判断がどう変わるのか
  • 失敗しないための実務的な判断軸

を、設備投資判断の総論として整理します。

そもそも「補助金 vs 融資」で考えること自体がズレることがある

最初に強調しておきたいのは、補助金と融資は“対立する選択肢”ではないという点です。

  • 補助金:政策目的に沿った投資を後押しする制度
  • 融資:事業判断に基づき、資金を調達する手段

両者は性格がまったく異なります。

にもかかわらず、

「補助金があるなら、まずは補助金」
「補助金がダメなら融資」

という順序で考えてしまうと、設備投資そのものの判断が歪むことがあります。

設備投資判断で最初に考えるべきは「資金調達」ではない

設備投資で最初に整理すべきなのは、

  • 補助金が使えるか
  • 融資が出るか

ではありません。

本来、最初に考えるべきは、

  • この設備で事業はどう変わるのか
  • 今、本当に導入すべきタイミングなのか

という点です。

この整理を飛ばしたまま、

  • 「補助金があるから」
  • 「金利が低いから」

という理由で進めると、手段が目的化した設備投資になりやすくなります。

設備投資の性格別|補助金と融資の向き・不向き

ここからは、設備投資を性格別に分けて考えてみます。

① 更新・維持が目的の設備投資

例:

  • 老朽設備の入替
  • 故障リスク回避
  • 生産停止を防ぐための更新

このタイプの投資は、

  • 事業内容が大きく変わらない
  • 売上構造も基本的に同じ

という特徴があります。

判断の考え方
  • 補助金:相性は良くないケースが多い
  • 融資:通常の設備資金として合理的

無理に補助金を狙うことで、

  • 導入時期が遅れる
  • 申請負担だけが増える

よりも、融資で早く確実に導入する方が正解になることは珍しくありません。

② 事業構造を変えるための設備投資

例:

  • 高付加価値加工への転換
  • 工程集約・自動化
  • 新規分野への本格参入

このタイプの投資は、

  • 事業の変化が明確
  • 中長期戦略の中核になる

という特徴があります。

判断の考え方
  • 補助金:うまく噛み合えば強力な後押し
  • 融資:補助金と併用するケースも多い

ただし重要なのは、
「補助金が取れるからやる」のではなく、「やる投資に補助金を当てる」
という順序を守ることです。

③ タイミングが最重要な設備投資

例:

  • 受注増への即応
  • 外注費削減のための内製化
  • 機会損失を防ぐ投資

この場合、

  • 半年〜1年の遅れが致命的
  • 市場や顧客の動きが早い

というケースも多く見られます。

判断の考え方
  • 補助金:待つことで機会損失が出やすい
  • 融資:スピード重視で相性が良い

補助金額以上の利益を逃す可能性があるなら、
融資を選ぶ方が合理的です。

補助金を選んで失敗しやすい設備投資の特徴

これまでの実務を振り返ると、次のような設備投資は、補助金選択が失敗につながりやすい傾向があります。

  • 更新投資なのに補助金を狙った
  • 補助金の制約で計画変更ができなくなった
  • 採択待ちで導入時期を逃した
  • 補助金を前提に資金計画を組んだ

これらはすべて、「補助金を使うこと」が判断の軸になってしまった結果です。

融資を選んだ方が結果的にうまくいくケース

一方で、

  • 導入スピードを優先した
  • 設備仕様を柔軟に変えた
  • 現場の判断で改善を重ねた

といった設備投資では、融資を使ったことで結果的に成功したケースも多く見られます。

融資は、

  • 自由度が高い
  • 計画変更がしやすい
  • 経営判断を邪魔しない

という強みがあります。

補助金と融資は「優劣」ではなく「役割」で考える

補助金と融資は、

  • どちらが上
  • どちらが得

という関係ではありません。

  • 補助金:政策と合致した投資を後押しする
  • 融資:経営判断を実行するための資金手段

役割が違うだけです。

だからこそ、

「この設備投資は、
補助金の制約を受け入れても進める価値があるか?」

という問いを、必ず一度立ち止まって考える必要があります。

判断を誤らないためのチェックポイント

設備投資の前に、次の問いに答えてみてください。

  • 補助金がなくても、この投資はやるか
  • 導入時期を遅らせても問題ないか
  • 計画変更が必要になったとき対応できるか
  • 制度の制約を理解したうえで進められるか

これらに不安がある場合、融資を選ぶ判断は十分に合理的です。

まとめ|補助金も融資も「正解」は状況次第

設備投資において、

  • 補助金が正解
  • 融資が正解

と一概に言える答えはありません。

重要なのは、

  • この設備投資は何を実現したいのか
  • 今やるべきか
  • どんな制約を受け入れられるか

を整理したうえで、補助金と融資を“手段として選ぶ”ことです。

補助金を使わない判断も、融資を選ぶ判断も、どちらも立派な経営判断です。

だからこそ、「どちらが使えるか」ではなく「どちらが合っているか」という視点で、設備投資を考えていただければと思います。