補助金と助成金は、どちらも企業の取り組みを後押しする「返済不要の制度」ですが、
制度の目的や採択方法が大きく異なるため、状況によって向き・不向きがはっきり分かれる のが特徴です。

特に、初めて制度を検討する企業では、

  • 「どちらが申請しやすいのか?」
  • 「今の自社に合うのはどちらか?」
  • 「受給までの流れが大きく違うのでは?」

といった疑問が多く寄せられます。

ここでは、制度の特徴だけでなく、実際の支援経験から見た“判断の目安” をまとめています。
「どちらを優先して検討すべきか?」を迷わず判断できる内容になっていますので、
自社の状況と照らし合わせながらお読みいただくのがおすすめです。

補助金とは(おさらい)

補助金は、国や自治体が「こういう取り組みを増やしたい」という政策に沿って、企業の投資や新しいチャレンジを後押しするための制度です。
代表的には次のような取り組みが対象になります。

  • 新しい設備や機械の導入
  • 生産性向上や省力化に向けた投資
  • 新商品・新サービスの開発
  • 新たな市場への販路拡大 など

多くの補助金は「公募」という形で募集されます。
募集期間のあいだに計画書を提出し、他の応募者と一緒に審査を受ける“コンテスト”のようなイメージです。

補助金の主な特徴は次のとおりです。

  • 審査で採択された企業だけが受給できる(必ずもらえるわけではない)
  • 事業計画書など、比較的ボリュームのある書類が必要
  • 設備などを支払った後に精算される「後払い」が基本
  • 数百万円〜数千万円規模の投資が対象になるケースが多い

つまり補助金は、「ある程度まとまった投資や新しいチャレンジを、後押しするための制度」 と言えます。


助成金とは

助成金は、おもに「雇用」「人材育成」「働き方の見直し」に関する取り組みを支援する制度です。
厚生労働省が所管するものが多く、次のような場面で活用されます。

  • 有期雇用の従業員を正社員に転換した
  • 社員のスキルアップのために外部研修を受講させた
  • 育児・介護と仕事の両立支援制度を整えた
  • テレワークや短時間勤務など、柔軟な働き方を取り入れた など

助成金の特徴は、

  • 要件を満たしていれば、原則として支給される(審査というより「確認」に近い)
  • 取り組みの前後で、就業規則や申請書類などの整備が必要
  • 1人あたり数十万円〜数百万円といった単位で支給されることが多い

といった点です。
つまり助成金は、「人に関する取り組みを進めることで、企業にも社会にもメリットを生み出す制度」 と言えます。


補助金と助成金の共通点と違い

まずはざっくりと、共通点と違いを整理しておきます。

共通している点

  • どちらも返済不要の公的支援である
  • 事前に計画を立てて申請する必要がある
  • 途中で内容を変える場合、あらためて相談・手続きが必要になる
  • 実績報告や書類の保管など、後からの事務手続きも求められる

違っている点(ざっくり整理)

  • 対象となる「テーマ」
    • 補助金:設備投資・新事業・生産性向上など
    • 助成金:雇用・人材育成・働き方の見直しなど
  • お金の出し方
    • 補助金:採択された一部の企業に配分される(競争あり)
    • 助成金:要件を満たしていれば、原則として支給される
  • 書類の内容
    • 補助金:事業計画書、収支計画、設備の選定理由などを詳しく記載
    • 助成金:就業規則の整備、労働条件の変更内容、対象となる従業員の情報など
  • 金額や投資規模
    • 補助金:数百万円〜数千万円規模の投資を前提とするものが多い
    • 助成金:1人あたり数十万円〜、取り組み単位で加算されていくイメージ

このように、「何に対する支援なのか」「お金の出し方がどう違うのか」 を押さえておくと、
自社にとってどちらがメインになりそうかが見えてきます。

補助金と助成金の違い(一覧で比較)

項目補助金助成金
目的設備投資・新事業・生産性向上雇用環境改善・働き方改革
審査あり(競争型)なし(要件を満たせば原則支給)
もらえる可能性申請しても採択されない場合あり基準を満たせば受給できる
資金の流れ後払い方式(立替が必要)制度により前払い・後払い
必要書類計画書、証憑、実績報告など多数労務関係の書類整備が中心
事業との関係投資・成長戦略に直結人材・職場環境に直結

補助金が向いているケース

補助金は、次のようなケースで特に利用を検討しやすい制度です。

  • 新しい設備や機械を入れて、生産能力や品質を高めたい
  • 省力化・自動化により、人手不足への対策を進めたい
  • 新商品・新サービスを開発し、新しい市場に挑戦したい
  • 店舗改装や設備更新を通じて、売上増加につながる投資をしたい

共通しているのは、「将来の売上・利益を伸ばすための投資であること」 です。
計画の内容や数字の根拠をきちんと整理すれば、金融機関や社内の説得材料にもなります。

助成金が向いているケース

一方、助成金は次のような取り組みを検討している企業に向いています。

  • 有期雇用の従業員を正社員として長く働いてもらいたい
  • 社員教育や資格取得の支援を強化したい
  • テレワークや短時間勤務など、働き方を柔軟にしたい
  • 育児・介護と仕事の両立支援制度を整えたい

こちらの共通点は、「人材を大事にし、より働きやすい職場づくりを進めるための制度」 ということです。
取り組みそのものが会社の体制改善につながるため、金銭面以外のメリットも大きいといえます。


どちらを使うべきか?(判断の目安)

「意味はなんとなく分かったが、自社は結局どちらから検討すべきか?」
というご相談をよくいただきます。

補助金と助成金は、どちらが“上”というものではなく、
「今の会社の状況」と「これから何を変えたいか」によって向き・不向きが分かれる というイメージです。

補助金を優先した方がよいケース

次のような場合は、補助金を中心に検討するのがおすすめです。

  • 具体的に導入したい設備やシステムがある
  • 売上・利益の伸び悩みを、投資を通じて打開したい
  • 金融機関からの借入と合わせて、設備投資を計画している
  • 将来の事業展開や新事業の構想があり、実現に向けた資金が必要

このようなケースでは、「投資の規模や効果を説明できるかどうか」 がカギになります。

助成金を優先した方がよいケース

一方、次のような状況に当てはまる場合は、まず助成金から検討するのが現実的です。

  • すぐに大きな設備投資をする予定はない
  • 人材の定着や育成に課題を感じている
  • 働き方改革や就業規則の見直しを検討している
  • 雇用管理の整備に不安があり、専門家にも相談したい

この場合は、「今ある人材や体制をどう良くしていくか」 を起点に考えると進めやすくなります。

両方使えるケースもある

実際には、
「設備を入れて生産性を上げたいし、同時に人材育成も進めたい」
という企業も少なくありません。

  • 中長期的な成長投資 → 補助金
  • 人材や働き方の整備 → 助成金

というように、段階を分けて両方を上手に組み合わせる ことも可能です。
ただし、スケジュール管理や条件の整理が必要になるため、このような場合は専門家に相談して進めるのがおすすめです。


専門家への相談が役立つ場面

補助金・助成金は、制度を理解し、自社に合うものを選び、
さらに申請・実績報告まで進める必要があるため、どうしても手間がかかります。

次のような場合は、早めに専門家に相談していただくとスムーズです。

  • 自社に合う補助金・助成金を一覧で整理してほしい
  • 条件や就業実態が複雑で、対象になるかどうか判断が難しい
  • 申請書や計画書を書く時間がなかなか取れない
  • 不正受給にならないよう、リスクを確認しながら進めたい

制度そのものを知ることも大切ですが、「自社の状況に当てはめてどう使うか」 を一緒に考えることで、
無理のない形で公的制度を活用しやすくなります。

  • 商工会議所
  • 金融機関
  • 助成金の専門家(社労士)
  • 補助金の専門家(中小企業診断士や行政書士等)

など、複数の専門家へ相談することで最適な制度を選べます。


まとめ

  • 補助金は「設備投資・新事業・生産性向上」を後押しする制度
  • 助成金は「雇用・人材育成・働きやすい職場づくり」を支援する制度
  • どちらも返済不要だが、対象テーマや進め方、金額のイメージは異なる
  • 自社の現状と課題に合わせて、「今はどちらを優先するか」を整理することが大切

どちらが正解というより、「今の会社にとって、まずどの一歩が現実的か」 を一緒に考えることが重要です。

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