補助金を検討するとき、多くの方が気にするのが「採択率」です。

「採択率が高い補助金を選べば、受かりやすいはず」
そう考えるのは自然なことです。
しかし、採択率の数字だけを見て申請の判断をすると、思わぬ落とし穴にはまることがあります。

本記事では、採択率の正しい読み方と、補助金を申請するかどうかを判断するうえで本当に大切な基準をお伝えします。
補助金を初めて検討している方にも、過去に不採択を経験した方にも、ぜひ読んでいただきたい内容です。

採択率とは何か?まず基本を理解する

補助金の採択率とは、「申請した件数のうち、採択(承認)された件数の割合」のことです。

計算式はシンプルです。

採択率 = 採択件数 ÷ 申請件数 × 100(%)

たとえば、1,000件の申請に対して600件が採択された場合、採択率は60%になります。

この数字を見ると「60%なら半分以上受かるから大丈夫」と感じるかもしれません。
しかし、採択率という数字には、いくつかの「落とし穴」が隠れています。

採択率は「申請すれば受かる確率」ではない

採択率を「自分が申請したときに受かる確率」と勘違いしている方がいますが、これは正確ではありません。

採択率はあくまで、その公募回において、実際に申請した人たちの中で何割が採択されたかを示しているにすぎません。
申請の質や事業内容は千差万別です。
事業計画の内容が充実していた申請者もいれば、準備が不十分なまま申請した人もいます。

採択率60%という数字の中には、しっかり準備した申請者も、準備不足の申請者も、すべてひとまとめにされています。
つまり、自分がどれだけ準備できているかによって、採択される確率は大きく変わるのです。

採択率の計算に含まれる「ノイズ」

採択率の数字を見るときに知っておきたいのが、分母(申請件数)の中に「事業化する気がない申請」や「要件を満たしていない申請」が含まれている可能性があるということです。

たとえば、補助金に詳しくないまま「とりあえず申請してみよう」という状態で出した申請、あるいは申請要件を正確に把握せずに提出した申請などが含まれることがあります。
これらの申請は採択されにくいため、採択率の計算上では「分母を増やして採択率を下げる」方向に働きます。

逆に言えば、要件をきちんと満たし、事業計画を丁寧に作り込んだ申請者にとっては、採択率の数字よりも実態は有利な場合があります。

採択率が高い=申請しやすい、ではない理由

「採択率が高い補助金を狙えばいい」という考え方は、一見合理的に見えます。
しかし、採択率と申請のしやすさは必ずしも連動しません。

採択率が高くなる理由はさまざまある

採択率が高い理由は、大きく分けて以下の2パターンがあります。

① 補助額や対象が限定的で、応募者が少ない
補助上限額が小さい、対象業種や地域が絞られているなど、そもそも申請できる事業者が少ないために採択率が高くなっているケースです。
「誰でも申請できる」わけではなく、最初から対象者が絞り込まれているため採択率が高く見えるだけで、自社が対象に該当しないこともあります。

② 申請要件が厳しく、準備できる事業者しか申請していない
要件が厳しいために、準備できた事業者だけが申請に進んでいるケースです。
この場合、採択率の数字は高くなりますが、その「準備のハードル」を越えられない事業者には意味がありません。

採択率が低い補助金でも、自社には最適なことがある

逆に、採択率が比較的低い補助金でも、「自社の事業内容・投資目的とぴったり合っている」「補助額が大きく、活用効果が高い」という場合は、積極的に挑戦する価値があります。

補助金の選択は採択率だけで判断するのではなく、自社の事業計画との適合度で考えることが大切です。

採択率よりも重要な3つの判断基準

補助金を申請するかどうかを判断するとき、採択率よりもはるかに重要な基準があります。
ここでは、中小企業診断士として多くの補助金申請をサポートしてきた経験から、特に大切な3つの判断基準をお伝えします。

判断基準① 自社の事業計画と補助金の目的が合っているか

補助金にはそれぞれ「何を支援するための制度か」という目的があります。
設備投資による生産性向上を支援するもの、デジタル化を推進するためのもの、小規模事業者の販路開拓を後押しするものなど、さまざまです。

審査において重視されるのは、「自社がやりたいことと、この補助金の目的が一致しているか」です。
どれだけ事業計画書をきれいに仕上げても、補助金の趣旨と自社の投資目的がずれていては採択は難しくなります。

補助金を選ぶときは、「採択率が高いから申請する」ではなく、「この補助金の目的と自社のやりたいことが合っているから申請する」という順番で考えることが基本です。

判断基準② 採択後の実行体制を整えられるか

補助金は採択されてからが本当のスタートです。
採択後には、設備の発注・導入、実績報告書の作成と提出、その後も一定期間の事業化報告など、さまざまな手続きが続きます。

補助金の申請を検討するときに、意外と見落とされがちなのがこの「採択後の実行体制」です。

  • 申請している設備やサービスの導入を、予定どおりのスケジュールで進められるか
  • 実績報告に必要な証拠書類(見積書・発注書・請求書・納品書・通帳の写しなど)を整理できるか
  • 補助金の対象期間内に事業を完了できるか

これらの体制が整っていない状態で採択されてしまうと、後々「実績報告が書けない」「補助金を返還しなければならない」という深刻な問題につながることがあります。

採択率を気にする前に、「採択されたあとを現実的にイメージできるか」を自問してみてください。

判断基準③ 補助金がなくてもやるべき投資かどうか

これが最も大切な判断基準です。

「補助金をもらえるから投資しよう」という発想で進めると、補助金の採否によって経営判断が振り回されてしまいます。
不採択だったとき、その投資自体が宙に浮いてしまうことになります。

補助金の審査においても、「補助金がなくてもこの投資に取り組む意志があるか」は、事業計画の本気度として評価されるポイントのひとつです。
「補助金があるからやる」ではなく「この投資が必要だから、補助金も活用したい」という姿勢の申請者のほうが、事業計画書の説得力が高くなります。

補助金はあくまで「事業の取り組みを後押しする制度」です。
補助金の申請よりも先に、「この投資は自社の事業にとって本当に必要か」を問い直すことが、結果的に審査でも評価される計画につながります。

採択率の見方で注意すべきこと

採択率を参考情報として活用する場合にも、いくつか注意が必要です。

公募回によって採択率は大きく変わる

同じ補助金であっても、公募回(何次公募か)によって採択率が大きく変わることがあります。

たとえば、特定の公募回では申請が集中して競争率が上がった結果、採択率が低下するケースがあります。逆に、予算の消化状況や応募件数によって、採択率が上がることもあります。

過去の採択率はあくまで「参考情報」であり、次の公募回でも同じ採択率になるとは限りません。
「過去の採択率が高かったから次も高いだろう」という判断は危険です。

業種・地域・申請枠によっても採択率は異なる

多くの補助金では、申請できる「枠」が複数用意されており、枠ごとに採択率が異なります。
たとえば通常枠と特別枠では採択率が大きく異なることがあり、どの枠で申請するかによって結果が変わります。

また、業種や地域によって競合する申請者の数が異なるため、全体の採択率と自社が属するカテゴリでの採択状況は異なる場合があります。

補助金の採択率を調べる際は、全体の数字だけでなく、自社が申請する枠の情報を確認することが重要です。最新の公募情報や採択結果は、中小企業庁のミラサポplusや各補助金の公式サイトで確認できます。

採択率が低くても、採択企業は必ず存在する

採択率が低い補助金を見て「これは無理だ」と最初から諦めてしまう方がいます。
しかし、どんなに採択率が低くても、採択されている企業は必ず存在します。

採択されている企業に共通しているのは、採択率の高低よりも、「補助金の目的と自社の事業計画の整合性が高く、計画の実現可能性を具体的に示せている」という点です。

「高採択率」をアピールするコンサルタントへの注意点

補助金支援を行うコンサルタントや支援機関の中には、「採択率〇〇%」という実績を前面に打ち出して集客しているケースがあります。
経営者の立場からすれば、実績として採択率が高いコンサルタントに依頼したいと思うのは自然なことです。

ただし、この「高採択率」という数字には、いくつか注意して見ておくべき点があります。

注意点① 採択率の算出方法が不透明なことがある

コンサルタントが掲げる「採択率」は、公式な統計ではなく、自社で集計・公表した数字です。
そのため、どの期間の、どの補助金の、何件の申請を母数にしているのかが不明なケースがあります。

たとえば、採択されやすい小規模な補助金に絞って申請支援を行っていれば、採択率は自然と高くなります。
あるいは、不採択になりそうな案件は最初から受け付けないという運用をしていれば、見かけ上の採択率は上がります。
数字の背景にある条件を確認しないまま、採択率だけを比較することには限界があります。

注意点② 採択を優先するあまり、投資内容が補助金に引き寄せられることがある

採択率を重視するコンサルタントの中には、「この補助金に通りやすい事業計画に整えましょう」という発想で支援を進めるケースがあります。
つまり、経営者がやりたい投資をベースに計画を立てるのではなく、採択されやすいように投資の内容や方向性を補助金に合わせて調整してしまうということです。

この進め方では、申請書類の上では筋の通った計画に見えても、経営者本人が「本当にこれをやりたかったのか」と感じるような内容になってしまうことがあります。
補助金に採択されること自体が目的になってしまい、事業の実態とずれた投資計画が出来上がるリスクがあります。

注意点③ 採択されても、事業に合わない投資では経営にプラスにならない

補助金はあくまで「投資にかかった費用の一部を補助する制度」です。
補助金が出るとしても、投資した設備やシステムが自社の事業に本当に必要なものでなければ、残りの自己負担分はコストとして残ります。

採択されてからしばらくして「補助金のために導入したが、現場では使いにくい」「当初の課題が解決されなかった」という声を聞くことがあります。
補助金に採択されることと、その投資が経営にプラスになることは、必ずしも同じではないのです。

支援機関を選ぶ際には、採択率の数字だけでなく、「経営者がやりたいことを起点に一緒に計画を考えてくれるかどうか」を確認することが大切です。
採択率は結果の数字であり、支援の質を直接示すものではありません。

「採択率が高い補助金を探す」よりも先にやること

補助金を活用したいと思ったとき、まず採択率を調べ始めるという方は少なくありません。
しかし、採択率を探す前にやるべきことがあります。

ステップ1:自社の「やりたいこと」を言葉にする

補助金は手段であり、目的ではありません。
まず「自社の事業をどうしたいのか」「そのためにどんな投資が必要なのか」を言葉にすることが最初のステップです。

たとえば「設備が古くなったから更新したい」という漠然とした理由ではなく、「老朽化した〇〇の設備を更新することで生産性を20%向上させ、増加する受注に対応できる体制を整えたい」というように、投資の目的と期待する効果を具体的に整理します。

ステップ2:自社の状況に合った補助金を探す

「やりたいこと」が明確になったら、それに合った補助金を探します。
この順番が大切です。

補助金を探す際には、採択率だけでなく、以下の点を確認してください。

  • 自社の業種・規模が対象要件を満たしているか
  • 投資したい内容が補助対象の経費に該当するか
  • 公募スケジュールと自社の投資計画のタイミングが合うか
  • 補助率と補助額の上限が自社の計画に見合っているか
  • 自己負担分(補助金が出ない部分)の資金を確保できるか

ステップ3:早めに専門家に相談する

補助金の種類や要件は複雑で、公募のたびに内容が変わることもあります。
また、補助金によっては、採択されるための事業計画書の書き方にノウハウが必要です。

「まだ具体的に決まっていないから相談するのは早い」と感じる方もいるかもしれませんが、実は計画段階こそ専門家に相談するのに適したタイミングです。
計画が固まった後では、補助金のスケジュールに間に合わないこともあるからです。

まとめ ― 採択率ではなく「自社にとっての意味」で判断する

補助金の採択率は、申請の参考情報のひとつにはなりますが、それだけで申請の可否を判断するのは危険です。

本記事のポイントを整理します。

  • 採択率は「自分が受かる確率」ではなく、「申請者全体の中で採択された割合」にすぎない
  • 採択率が高くても、自社が対象要件を満たさなければ意味がない
  • 採択率よりも重要なのは、「補助金の目的と自社の事業計画の適合度」「採択後の実行体制」「補助金なしでもやるべき投資かどうか」
  • 採択率は公募回・枠・業種によっても変わるため、過去の数字を過信しない
  • 「高採択率」をアピールするコンサルタントの数字は、算出方法や対象範囲を確認する
  • 補助金を探す前に、まず「自社のやりたいこと」を明確にする

当事務所では、「補助金ありき」の申請支援は行っていません。
まず「事業のなりたい姿」を一緒に整理したうえで、それを実現するための手段として補助金が有効かどうかを判断し、サポートするのが当事務所のスタンスです。

「補助金を活用したいが、何から始めればよいかわからない」「自社に合った補助金を探したい」という方は、お気軽にご相談ください。

よくある質問(FAQ)

Q
採択率が高い補助金を選べば採択されやすいですか?
A

必ずしもそうではありません。採択率が高い補助金は、対象者が限定されていたり要件が厳しかったりするケースがあります。採択率よりも「自社の事業計画と補助金の目的が合っているか」を優先して選ぶことが大切です。

Q
採択率はどこで調べられますか?
A

各補助金の採択結果は、公式サイトで確認できます。ただし、公募回によって採択率は変動するため、最新の情報を参照してください。また採択率は「全体」の数字であり、自社が申請する枠や業種に絞った数字とは異なる場合があります。なお、事業承継・M&A補助金のように、補助金の採択結果が会社の機密情報に大きくかかわる場合は、詳細な採択情報は公開されていません。

Q
過去に不採択だった補助金に再申請することはできますか?
A

多くの補助金は再申請が可能です。近年では補助金の不採択理由は一般的に通知されません。公募要領等により不採択の理由を分析し、事業計画を見直したうえで再申請することで、採択の可能性を高めることができます。再申請を検討する際は、専門家に相談することをおすすめします。

Q
補助金の申請に向けて、まず何から始めればよいですか?
A

最初に取り組むべきは、「自社がどのような投資をしたいのか、その目的は何か」を言葉にすることです。補助金を探す前に投資の目的を整理しておくことで、自社に合った補助金が見つかりやすくなり、事業計画書も作りやすくなります。計画が固まっていない段階でも、専門家に相談することで方向性を整理できます。

Q
補助金の採択率と採択のしやすさは違うのですか?
A

はい、異なります。採択率は申請者全体の数字であり、準備が不十分な申請者も含まれています。自社の事業計画と補助金の目的がしっかり合致していて、丁寧に準備された申請は、採択率の数字よりも有利な状況になることがあります。採択のしやすさは、採択率よりも「準備の質」に左右されます。

Q
採択率が高いコンサルタントに頼めば、自社の投資も高確率で採択されますか?
A

必ずしもそうとは言えません。コンサルタントが掲げる採択率は自社集計の数字であり、対象にしている補助金や案件の範囲によって大きく異なります。また、採択率を重視するあまり、経営者がやりたい投資の内容を補助金の要件に合わせて変えてしまうケースもあります。採択されることが目的になると、経営の実態に合わない投資計画になるリスクがあります。支援機関を選ぶ際は採択率の数字よりも、「自社の事業の方向性を一緒に考えてくれるかどうか」を重視することをおすすめします。


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