2025年1月30日に、中小企業省力化投資補助金の一般枠の公募要領が公開されました。
省力化投資補助金自体は以前より公募が行われていましたが、これまでこの補助金で申請対象となるのは、補助金公式ホームページ上から閲覧できるオンラインカタログに掲載された一部製品のみでした。
しかし企業によっては省力化を進めるためには、カタログに掲載された汎用品ではなく、自社の現場にあったオーダーメイド製品が必要不可欠だという場合も多いかと思います。
今回新たに追加された一般枠では、カタログに掲載されていないオーダメイド機器等について補助を受けることができます。
本記事では、対象となる中小企業がスムーズな申請に繋げられるようにするために、省力化投資補助金一般枠の制度についてわかりやすく説明いたします。
目次
省力化投資補助金一般枠の目的
中小企業省力化投資補助事業(一般型)は、中小企業等の売上拡大や生産性向上を後押しするため、人手不足に悩む中小企業等がIoT・ロボット等の人手不足解消に効果がある設備を導入するための事業費等の経費の一部を補助することにより、省力化投資を促進して中小企業等の付加価値額や生産性向上を図るとともに、賃上げにつなげることを目的とする。
(「省力化投資補助金(一般枠)公募要領」より)
省力化投資補助金の一般枠は、人手不足状況にある中小企業等が、人手不足解消に効果があるオーダーメイド設備等を導入を支援する補助金です。
省力化投資補助金一般枠の活用イメージ
国からは、具体的な活用イメージとして2つ挙げられています。
通信販売事業でオンラインショッピングの顧客数及び購買量に対応するため、自動梱包機及び倉庫管理システムをオーダーメイドで開発・導入 | 自動車関連部品製造事業で検査が難しい微細な自動車関連部品の製造を効率的に行うため、最新のデジ タルカメラやAI技術等を活用した自動外観検査装置を事業者の現場に合わせた形で導入 |
多くの補助金は、自社の新たな取組について補助することが多いですが、省力化投資補助金は既存事業の省人化を対象としています。必ずしもフルオーダーメイド機器の開発・導入が求められるわけではなく、自社の現場に合った形で省力化設備を導入する費用については柔軟に補助対象となりそうです。
省力化投資補助金一般枠の申請要件
省力化投資補助金一般枠に申請するための要件は下記のとおりです。
※公募要領の説明がだいぶ少ないのですが、おそらくこういう意味であると思います
- 補助事業終了後3~5年の事業実施期間において、労働生産性を、年平均成長率+4.0%以上増加させること
- 補助事業終了後3~5年の事業実施期間において、1人あたり給与支給総額の年平均成長率を、事業実施都道府県における最低賃金の直近5年間の年平均成長率以上、又は給与支給総額の年平均成長率+2.0%以上増加させること
- 補助事業終了後3~5年の事業実施期間において、事業場内最低賃金を、事業実施都道府県における最低賃金+30円以上高い水準とすること
- 交付申請時までに、次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画を公表すること(従業員21名以上の場合のみ)
- 補助事業者の業務領域・導入環境において、当該事業計画により業務量が削減される割合を示す省力化指数を計算した事業計画を策定すること
- 事業計画上の投資回収期間を根拠資料とともに提出すること
- 3~5年の事業計画期間内に、補助事業において、設備投資前と比較して付加価値額が増加する事業計画を策定すること
- 人手不足の解消に向けて、オーダーメイド設備等の導入等を行う事業計画を策定すること
- 外部SIerを活用する場合、3~5年の事業計画期間内における保守・メンテナンス契約を中小企業等とSIer間で締結することとし、SIerは必要な保守・メンテナンス体制を整備すること
- 本事業に係る資金について金融機関(ファンド等を含む。)からの調達を予定している場合は、金融機関による事業計画の確認を受け、金融機関による確認書を
要件2番や3番が達成できなかった場合には、未達成の度合いに応じて補助金の返還が求められるほか、その後他の補助金を受ける際に減点がつくことにもなりますので特にご注意ください。
5番の省力化指数は、 [(設備導入による削減時間)-(設備導入による増加時間)] ÷(設備導入による削減時間)で計算します。
8番については、汎用設備であっても、事業者の導入環境に応じて周辺機器や構成する機器の数、搭載する機能等が変わる場合や、汎用設備を組み合わせて導入することでより高い省力化効果や付加価値を生み出すことが可能である場合には、オーダーメイド設備であるとみなすとしています。
一方で、汎用設備を単体で導入する場合は補助対象外と明記しています。
省力化投資補助金一般枠の補助金額・補助率
省力化投資補助金一般枠における補助金額・補助率は、下記のとおりです。
補助上限額 | 補助率 |
---|---|
従業員数が5人以下 750万円(1,000万円) 6~20人 1,500万円(2,000万円) 21~50人 3,000万円(4,000万円) 51~100人 5,000万円(6,500万円) 101人以上 8,000万円(1億円) | 中小:1/2 小規模・再生:2/3 ※ 補助金額 1,500 万円までは 1/2 もしくは 2/3。補助金額 1,500 万円を超える部分は 1/3。 |
補助上限の引き上げ要件
① 給与支給総額の年平均成長率+6.0%以上増加
② 事業場内最低賃金が事業実施都道府県における最低賃金+50円以上の水準
いずれの条件も満たす場合、補助上限額は上記表の括弧内の金額に引き上げられます。
よほどでなければ受け取れる補助金額より、大幅賃上げで必要となる増加賃金額のほうが高くなる可能性が高いため、大幅賃上げをもともと予定していた企業や、これを機に一斉賃上げを実現しようという企業が対象となるかと思います。
補助率の引上げ要件
2023年10月から2024年9月までの間で、3 か月以上、補助事業実施場所で雇用している全従業員のうち、事業実施都道府県における最低賃金+50 円以内で雇用している従業員が30%以上いる中小企については、補助率が1/2から2/3に引き上げられます。
特に連続する3カ月である必要はないため、賃金台帳を確認し、合致する場合はぜひ活用したいです。
省力化投資補助金一般枠の補助対象経費
省力化投資補助金一般枠で補助対象となるのは、
- 機械装置・システム構築費(必須)
- 技術導入費
- 専門家経費
- 運搬費
- クラウドサービス利用費
- 外注費知的財産権等関連経費
となります。
設備については、省力化とは少しベクトルが異なりますが、生産性向上に必要な防災性能の優れた生産設備等を補助対象経費に含めることは可能としています。BCP対応により結果的に生産性向上・省力化につながるということでしょうか。
省力化投資補助金一般枠のスケジュール
補助金の支払い対象となるのは、申請後に審査員による審査を受けて、採択(合格)を受けた企業が、その後事務局に対して見積書等を提出して許可を得た(交付決定を受けた)後の発注分が対象となります。
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交付決定を受ける前に発注してしまったものは全て対象外となってしまいますので、特にご注意ください。
省力化投資補助金一般枠の申請に必要な書類等
現時点では申請時提出書類および計画書の様式等は公表されていません。3月下旬に様式公開ということですので、情報が出ましたらこの記事を更新いたします。
さいごに
省力化投資補助金は、人手不足の状況にある企業が、オーダメイド設備、または自社の現場にあった複数の汎用設備を導入することで、生産性向上を行うと共に、従業員の賃上げを行い活気のある企業をつくることに活用することが可能です。
申請の際には、省力化効果を定量的に説明する必要がありますので、あらかじめメーカーや販売店等とどの設備を導入することで、どの工程がどの程度の生産性向上が見込めるのかといった話を早めに進めておくことをお勧めします。
もし計画書策定において専門家の支援が必要という場合には、当事務所も選択肢の一つとしていただけますと大変幸いです。