M&Aが成立した。あとは経営統合(PMI)を進めるだけ。
そう思ったとき、「PMIにかかる費用を補助してくれる制度がある」と聞いたことはありませんか?

それが、事業承継・M&A補助金の「PMI推進枠」です。

PMI推進枠は、M&A後の経営統合に取り組む中小企業が、専門家の活用費用や統合に伴う設備投資費用の一部を補助してもらえる制度です。PMIを「お金がかかるから後回し」にせず、しっかり取り組むための支援として位置づけられています。

本記事では、PMI推進枠の概要・2つの類型の違い・対象となる経費・活用するうえでの考え方を、中小企業診断士の視点からわかりやすくお伝えします。

なお、補助金の補助上限額・補助率・申請スケジュールは公募回ごとに変更される場合があります。最新情報は必ず事業承継・M&A補助金の公式サイトまたはミラサポplusでご確認ください。

この記事のポイント
  • PMI推進枠とは、M&A後の経営統合(PMI)にかかる費用を国が補助する制度です
  • 「専門家活用類型」(PMI支援の専門家費用)と「事業統合投資類型」(統合に伴う設備投資等)の2つの類型があります
  • 2類型には前後関係があり、同一公募回での同時申請はできません
  • 補助金はあくまでPMIを進めるための「後押し」です。PMIの計画が先にあって、補助金はその手段として活用するものです

事業承継・M&A補助金とは

事業承継・M&A補助金(旧称:事業承継・引継ぎ補助金)は、中小企業の事業承継やM&Aを促進し、生産性向上と持続的な成長を支援することを目的とした国の補助金制度です。2017年度から実施されており、毎年複数回の公募が行われています。

補助の対象となる取り組みの内容に応じて、以下の4つの申請枠が設けられています。

申請枠対象となる取り組み
事業承継促進枠親族内承継・従業員承継を行う後継者による設備投資等
専門家活用枠M&Aの実施に際して活用する専門家(FA・仲介等)の費用
PMI推進枠M&A後の経営統合(PMI)にかかる専門家費用・設備投資等
廃業・再チャレンジ枠事業承継・M&Aに伴う廃業にかかる費用

PMI推進枠はこのうち、M&Aが成立した「その後」の統合プロセスを支援する枠として位置づけられています。M&Aの成約に向けた費用(専門家活用枠)とは対象が異なる点に注意が必要です。

PMI推進枠とは

PMI推進枠とは、経営資源の引き継ぎ(M&A)を行った、または行う予定の中小企業が、PMI(事業再編・事業統合)に取り組む際にかかる専門家の費用および統合に伴う設備投資費用等の一部を補助する制度です。

目的は、M&A後の経営統合を円滑に進め、統合効果を最大化することで、中小企業の生産性向上と経済の活性化を図ることにあります。国がPMI推進枠を設けた背景には、「M&Aが成立しても、その後の統合プロセスに取り組めず期待した成果が出ない」という事例が少なくないという実態があります。

PMI推進枠の2つの類型

PMI推進枠は、PMIの進捗状況に応じて「専門家活用類型」「事業統合投資類型」の2つの類型に分かれています。

①専門家活用類型

PMIを進める際に必要となる専門家の活用費用を補助する類型です。経営統合の方針策定・組織統合の設計・業務プロセスの整備・人事制度の設計支援など、PMIに関わる専門家への報酬・委託費が対象となります。

「PMIを進めたいが、どこから手をつければよいかわからない」「外部の専門家の助けを借りながら統合を進めたい」という段階で活用できる類型です。

②事業統合投資類型

統合効果の最大化を目的とした設備投資等の費用を補助する類型です。ITシステムの統合・生産設備の統合・業務効率化のための機器導入など、PMIの実行段階で必要となる有形・無形の投資が対象となります。

「統合の方針と計画が固まり、いよいよ設備や仕組みを整備するフェーズに入った」という段階で活用できる類型です。

2類型の前後関係と注意点

この2類型には前後関係があります。一般的には、まず専門家を活用して統合計画を設計し(専門家活用類型)、その後に設備投資等を実行する(事業統合投資類型)という流れが想定されています。

同一公募回での2類型の同時申請は認められていません。自社のPMIの進捗状況を確認したうえで、どちらの類型が現在の状況に合っているかを判断して申請することが必要です。

注意:補助上限額・補助率は公募回ごとに確認が必要です

PMI推進枠の補助上限額・補助率は公募回によって変更される場合があります。過去の公募では専門家活用類型の補助上限額は150万円程度、事業統合投資類型はより大きな投資を対象としていましたが、最新の公募要領を必ずご確認ください。

PMI推進枠の対象者

PMI推進枠の対象者は、経営資源の引き継ぎ(M&A)を行った、または行う予定の中小企業者および個人事業主です。具体的な対象者要件は公募回ごとに公募要領で定められています。

一般的に確認が必要な主な要件は以下のとおりです。

  • 中小企業者・小規模事業者・個人事業主であること(大企業は原則対象外)
  • M&Aによって経営資源を譲り受けた、または譲り受ける予定があること
  • 補助事業期間内に取り組みを実施・完了できること
  • 過去に同補助金で不正受給等がないこと

なお、専門家活用枠(買い手支援)との同時申請が認められているケースもあります。詳細は公募要領でご確認ください。

PMI推進枠を活用するうえでの考え方

PMI推進枠は有用な制度ですが、活用するうえで大切な考え方があります。当事務所として、この点は特に強調してお伝えしたいことです。

補助金が先ではなく、PMIの計画が先

「PMI推進枠という補助金があるから、とりあえず申請してみよう」という考え方は、本来の順番が逆です。

補助金の申請において審査員が見るのは、「このM&Aで何を達成しようとしているのか」「そのためにPMIをどう進めるのか」という計画の中身です。PMIの目的と方針が明確であってはじめて、補助金はその実現を後押しする手段として機能します。

PMIの計画なき補助金申請は、採択されにくいだけでなく、仮に採択されたとしても「補助金を使い切ること」が目的になってしまうリスクがあります。

「M&Aで何を実現したいか」から逆算する

PMI推進枠を活用するための事業計画を考えるとき、出発点は「このM&Aで何を実現したかったか」です。

  • 売上・顧客基盤を拡大したい → どんな統合が必要か
  • 技術・人材を引き継ぎたい → 何を優先して整備するか
  • 後継者不在を解決したい → 組織をどう安定させるか

この目的から逆算して「PMIで何に取り組むか」を決め、その取り組みを後押しする手段として補助金を位置づける。
この順番が、採択後に本当の成果につながる補助金活用の姿です。

専門家活用類型は「伴走支援」として捉える

PMIは初めて経験する経営者がほとんどです。「何をすればよいかわからない」という状態のまま時間だけが過ぎることが、PMI失敗の最大の原因のひとつです。

専門家活用類型は、中小企業診断士などの専門家に伴走してもらいながらPMIを進めるための支援です。補助金を活用することで、専門家への相談コストを抑えながら、確実に統合プロセスを前に進めることができます。

PMI推進枠の申請の流れ(一般的なステップ)

補助金の申請スケジュールは公募回ごとに異なりますが、一般的な流れは以下のとおりです。

  1. 公募要領の確認:最新の公募要領を入手し、対象者要件・対象経費・補助率・スケジュールを確認する
  2. 事業計画の策定:PMIの目的・取り組み内容・期待する効果を整理した事業計画を作成する
  3. Jグランツでの申請:電子申請システム「Jグランツ」を通じてオンライン申請する
  4. 審査・採択:事務局による審査を経て採択・不採択が決定する
  5. 交付決定後に事業実施:交付決定通知を受けてから補助事業を開始する(交付決定前の発注・契約・支払いは補助対象外となるため注意)
  6. 実績報告・補助金交付:事業完了後に実績報告書を提出し、審査を経て補助金が交付される
必ず交付決定後に着手すること

補助金は「先払い」ではなく「後払い」です。交付決定の通知が届く前に発注・契約・支払いを行った場合、その経費は補助対象外となります。「採択されたら動き出せばいい」ではなく、「交付決定通知が来てから動き出す」が正しい手順です。

当事務所のPMI・補助金支援について

当事務所(イグナル・コンサルティング)は、認定経営革新等支援機関として、PMIの伴走支援および事業承継・M&A補助金の申請支援を行っています。

PMIは「何をすべきか」の整理から始まります。「M&Aは成立したが、次のステップが見えない」「PMI推進枠を使ってみたいが、自社に合った進め方がわからない」という段階からご相談いただけます。

補助金ありきの支援ではなく、まず「このM&Aで何を実現したいか」を一緒に整理し、そのうえで補助金を含めた最適な手段を提案するスタンスで支援しています。

ご相談は無料です。お気軽にお問い合わせください。

まとめ

事業承継・M&A補助金のPMI推進枠は、M&A後の経営統合プロセス(PMI)を国が費用面で後押しする制度です。

PMI推進枠には、専門家活用費を補助する「専門家活用類型」と、統合に伴う設備投資を補助する「事業統合投資類型」の2類型があり、PMIの進捗に合わせて活用する仕組みになっています。

ただし、補助金の活用はあくまで手段です。「このM&Aで何を実現したいか」という目的を明確にし、PMIの計画を先に立てることが、補助金を本当の意味で活かす前提条件です。

最新の公募情報・補助率・スケジュールは、事業承継・M&A補助金 公式サイトまたはミラサポplusでご確認ください。

よくある質問(FAQ)

Q
PMI推進枠とは何ですか?
A

PMI推進枠とは、事業承継・M&A補助金の申請枠のひとつで、M&A後の経営統合(PMI)にかかる専門家費用や設備投資等の一部を補助する制度です。「専門家活用類型」(PMIに関わる専門家費用の補助)と「事業統合投資類型」(統合効果最大化のための設備投資等の補助)の2類型があります。

Q
専門家活用類型と事業統合投資類型は同時に申請できますか?
A

同一公募回での同時申請はできません。2類型には前後関係があり、一般的にはまず専門家活用類型でPMIの設計・支援を受け、次の公募回で事業統合投資類型を活用するという順番が想定されています。自社のPMIの進捗状況を確認したうえで、適切な類型を選んで申請してください。

Q
PMI推進枠の補助上限額・補助率はどのくらいですか?
A

補助上限額・補助率は公募回ごとに変更される場合があります。過去の公募では専門家活用類型の補助上限額は150万円程度でしたが、必ず最新の公募要領をご確認ください。最新情報は事業承継・M&A補助金の公式サイトまたはミラサポplusで確認できます。

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