2025年2月14日より、ものづくり補助金の19次の公募が開始しました。
その名前から「製造業」向けと思われがちな補助金ですが、自社の生産性向上につながる投資(機械・システム等)を行い新製品または新サービスの提供を行うのであれば、業種を問わずに利用可能な補助金で、中小企業庁の補助金の中でも長年続く人気の補助金です。
本記事では、対象となる中小企業がスムーズな申請に繋げられるようにするために、ものづくり補助金の制度についてわかりやすく説明いたします。
目次
ものづくり補助金19次の目的
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金は、中小企業・小規模事業者が今後複数年にわたる相次ぐ制度変更に対応するため、生産性向上に資する革新的な新製品・新サービス開発や海外需要開拓を行う事業のために必要な設備投資等に要する経費の一部を補助する事業を行うことにより、中小企業者等の生産性向上を促進し経済活性化を実現することを目的とします。
(「ものづくり補助金19次公募要領」より)
ものづくり補助金は、賃上げを始め企業に求められる責任が次々と変化する中、自社の生産性を向上することで新製品・新サービスの提供や、海外展開を実現するための設備投資等を支援する補助金です。
ものづくり補助金の活用イメージ
国からは、具体的な活用イメージとして2つ挙げられています。
製品・サービス高付加価値化枠 | グローバル枠 |
---|---|
最新複合加工機を導入し、これまではできなかった精密加工が可能になり、より付加価値の高い新製品を開発 | 海外市場獲得のため、新たな製造機械を導入し新製品の開発を行うとともに、海外展示会に出展 |
特徴としては、新たな取組に繋がらない(例えば、老朽化設備の単なる入れ替えなど)には利用できないということです。最新設備等を導入することで、ぜひ新たな取引先の開拓や、新製品の提供などにチャレンジください。
ものづくり補助金19次の申請枠
ものづくり補助金は2つ申請枠があり、自社の取組にあった枠で申請を行う必要があります。
- 製品・サービス高付加価値化枠
- グローバル枠
製品・サービス高付加価値化枠
革新的な新製品・新サービス開発の取り組みに必要な設備・システム投資等について補助を受けることができます。
”革新的な新製品・新サービス開発”という話ですので、単に「新製品を作ります(新サービスを提供します)」というのでは足りず、自社の強み(技術力等)を活かし、顧客等に新たな価値を提供することまでが求められています。
また、業種ごとに同業の中小・小規模企業において既に相当程度普及している新製品・新サービスは該当しないとしていますので、競合他社との差別化要素などについても丁寧な説明が必要です。
グローバル枠
海外事業を実施し、国内の生産性を高める取り組みに必要な設備・システム投資等について補助を受けることができます。
本補助事業では、海外事業について、海外への直接投資に関する事業、海外市場開拓(輸出)に関する事業、インバウンド対応に関する事業、海外企業との共同で行う事業を海外事業と定義しています。
ものづくり補助金19次の申請要件
補助金に申請するための共通要件です。
要件 | 概要 |
---|---|
基本要件① 付加価値額の増加要件 | 補助事業終了後 3~5 年の事業計画期間において、事業者全体の付加価値額の年平均成長率(CAGR)を 3.0%以上増加させること。 |
基本要件② 賃金の増加要件 | 補助事業終了後 3~5 年の事業計画期間において、 従業員(非常勤を含む)及び役員それぞれの給与支給総額の年平均成長率を 2.0%以上増加させること、又は従業員及び役員それぞれの 1 人あたり給与支給総額の年平均成長率を事業実施都道府県における最低賃金の直近 5 年間(2019 年度を基準とし、2020 年度~2024 年度の 5 年間をいう。)の年平均成長率以上増加させること。 |
基本要件③ 事業所内最低賃金水準要件 | 補助事業終了後 3~5 年の事業計画期間において、事業所内最低賃金(本補助事業を実施する事業所内で最も低い賃金)を、毎年、事業実施都道府県における最低賃金より 30 円以上高い水準にすること。 |
基本要件④ 従業員の仕事・子育て両立要件 (従業員数 21 名以上の場合のみ) | 「次世代育成支援対策推進法」第 12 条に規定する一般事業主行動計画の策定・公表すること |
付加価値額とは、営業利益、人件費、減価償却費を足した金額となります。
要件②③については、達成できなかった場合には補助金の返還が求められるほか、その後他の補助金を受ける際に減点がつくことにもなりますので特にご注意ください。
また、グローバル枠で申請する際には、追加要件があります。
ものづくり補助金19次の補助金額・補助率
19次で応募可能な申請枠および各枠における補助金額・補助率は、下記のとおりです。
申請枠 | 補助上限額 | 補助率 |
---|---|---|
製品・サービス高付加価値化枠 | 従業員数 5 人以下 750 万円 6~20 人 1,000 万円 21~50 人 1,500 万円 51 人以上 2,500 万円 | 中小:1/2 小規模・再生:2/3 |
グローバル枠 | 3,000 万円 | 中小:1/2 小規模・再生:2/3 |
補助上限の引き上げ要件
ものづくり補助金の申請に当たっては、一定の賃上げを毎年行うことが申請要件となっています。
しかし、基本要件以上に大幅な賃上げに取り組む事業者について、従業員数規模に応じて補助上限額が最大1000万円引き上げられます。
受け取れる補助金額より、大幅賃上げで必要となる増加賃金額のほうが高くなる可能性が高いため、大幅賃上げをもともと予定していた企業や、これを機に一斉賃上げを実現しようという企業が対象となるかと思います。
補助率の引上げ要件
2023年10月から2024年9月までの間で、3 か月以上、補助事業実施場所で雇用している全従業員のうち、事業実施都道府県における最低賃金+50 円以内で雇用している従業員が30%以上いる中小企については、補助率が1/2から2/3に引き上げられます。
特に連続する3カ月である必要はないため、賃金台帳を確認し、合致する場合はぜひ活用したいです。
ものづくり補助金19次の補助対象経費
ものづくり補助金で補助対象となるのは、
- 機械装置・システム構築費(必須)
- 技術導入費
- 専門家経費
- 運搬費
- クラウドサービス利用費
- 原材料費(開発のために必要な分のみで、販売製品の原材料は対象外)
- 外注費
- 知的財産権等関連経費
等となります。
また、グローバル枠のうち、海外市場開拓(輸出)を行う場合は、追加で下記も対象となります。
- 海外旅費
- 通訳・翻訳費
- 広告宣伝・販売促進費
機械装置やシステム構築費については、基本的に新規に購入するものが対象となり、すでに所持している装置やシステムの改修についは対象外となります。
(新規で導入する設備等について、購入と合わせて改良も行う場合は、補助対象となります)
ものづくり補助金19次のスケジュール
補助金の支払い対象となるのは、申請後に審査員による審査を受けて、採択(合格)を受けた企業が、その後事務局に対して見積書等を提出して許可を得た(交付決定を受けた)後の発注分が対象となります。
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交付決定を受ける前に発注してしまったものは全て対象外となってしまいますので、特にご注意ください。
これまでは交付申請の締め切りは設定されていませんでしたが、今回は採択後2カ月以内と指定がされています。交付申請には見積書や相見積書などの提出が必要となりますので、採択後速やかに手続きが行えるよう、導入予定の設備はある程度事前に明確にしておく他、有効な見積書の取得をきちんと行っておきましょう。(申請時に取った見積書の有効期限が、交付時には切れていることが多いです)
ものづくり補助金19次の申請に必要な書類等
補助金の申請にあたって準備するものについては、下記のようなものがあります。(申請枠や、加点希望に応じて追加で必要なものもあります)
- 基本情報(電子申請画面で直接入力)
- 事業計画書(A4で3ページ以内)
- 補助経費に関する誓約書(電子申請画面で直接誓約)
- 賃金引上げ計画の誓約書(電子申請画面で直接誓約)
- 次世代法一般事業主行動計画URL(従業員21人以上の企業は電子申請画面でURL入力)
- 直近2期分の決算書等
- 従業員数の確認資料(確定申告書や従業員名簿等)
- 資金調達に係る確認書(金融機関から借り入れをして事業を実施する場合)
事業計画書の作成がメインとなります。専門家の協力を得る場合は、1カ月以上の相談期間をとってしっかり話し合ったうえで作成を進めることをお勧めします。
※金融機関の確認書が必要となる場合は、特に金融機関内で稟議を通すための時間が必要です。
事業計画書をある程度作成したうえで金融機関に持ち込みを行い、そこから数週間の処理時間が必要となることが多いため、メインバンクにあらかじめご相談いただくことも重要です。
過去のものづくり補助金との相違点
過去のものづくり補助金と比較して、特に大きな変更点をご説明します。ここに記載していない細かな変更もありますので、検討される方は必ず最新の公募要領をご確認ください。
電子申請入力項目の増加
これまでものづくり補助金は、10ページもしくは15ページの事業計画書を添付し、それをもって審査されていましたが、19次では、文章は基本的に電子システム上で直接入力を行い、図や表などの補足部分のみ、添付資料としてA4で3ページ以内のものを提出することになります。
まだ入力フォーマットは公開されていませんが、事業承継補助金や、海外サプライチェーン補助金などと似たような形となるのかと推測します。
指定された入力項目の中で、わかりやすく、かつ各審査項目を満たすことのアピールが必要となります。
AIによる類似チェックなどが今まで以上に行いやすくなると思いますので、誰かのマネをした申請は今まで以上に厳禁となります。自社にあった計画を、わかりやすく丁寧に文章にして申請を行いましょう。
一般事業主行動計画の要件化
子育て両立に関する事業計画の策定・公表が申請要件となりました。計画書の作成や公表の作業自体は難しいものではありませんが、公表されたものは一般の方が検索することができますので、現状に即したものをこの機会に作成し、公表を行いましょう。
交付申請の期限設定
これまではものづくり補助金の採択を受けた後、すぐに交付申請を行う必要はなく、事業実施期間締め切り日までに交付決定を受け、受発注を行えば補助対象となりました。
今回からはスムーズに事業を進めることを目的としてかと思いますが、交付申請締め切りが設定されましたので、採択後に速やかに次に進むための手続きを行う必要があります。
※余談ですが、前回から遂行状況報告についてもタイミングが明確に指定されるようになりました。今回も採択者には改めて説明があるかと思いますが、各手続きの締め切りには十分にご注意ください。
オーダメイド枠の削除
前回まであったオーダーメイド枠は、省力化投資補助金の方に移行されました。検討されていた方は、省力化投資補助金のHPの方をご確認ください。
さいごに
ものづくり補助金は多くの企業が設備投資を行い、顧客に新たな価値を提供するために利用できる人気の補助金です。計画の多くが電子申請画面からの直接入力となりますので、計画書の見栄えの良し悪しではなく、計画内容そのものが深く審査されるようになるかと思います。
「他社がこれで採択されてた」ではなく、自社の現状・ありたい姿に見合った事業計画の作成を行っていただければと思います。
また、その際に一緒に取組を行うためのパートナーとして当事務所をご指名いただけましたら、これ以上の幸せはありません。