📖 本記事は「経営力向上計画」シリーズの第3回です。制度の全体像は第1回、税制優遇は第2回をご覧ください。
経営力向上計画のメリットとして最も注目されるのは、前回解説した中小企業経営強化税制(即時償却・税額控除)ですが、実はそれだけではありません。
経営力向上計画の認定を受けることで、補助金の審査において加点を受けられたり、日本政策金融公庫の低利融資や信用保証協会の保証枠拡大といった金融支援を利用できたりするメリットがあります。
本記事では、税制優遇以外の「知っておくと得する」メリットについて、具体的にどのような場面で活かせるのかをお伝えします。
メリット①:補助金の審査で「加点」が受けられる
加点とは何か
補助金の審査は、事業計画書の内容を審査員が採点する方式で行われます。
多くの補助金では、基本的な審査項目に加えて「加点項目」が設けられており、一定の条件を満たすと追加の得点がもらえます。
経営力向上計画の認定を受けていることは、この加点項目の一つに該当する補助金があります。
経営力向上計画が加点対象になる主な補助金
| 補助金名 | 加点の内容 |
|---|---|
| 小規模事業者持続化補助金 | 経営力向上計画の認定を受けた事業者は「政策加点」の対象 |
加点対象となる補助金の種類や加点の内容は、公募回や年度によって変わります。必ず最新の公募要領で確認してください。また、加点は採択を保証するものではなく、あくまで審査上のプラス要素の一つです。
加点の効果はどの程度あるのか
加点の配点は公表されていないことが多く、「何点もらえるのか」は正確にはわかりません。
ただし、補助金の審査は僅差で採択・不採択が分かれることが珍しくないため、わずかな加点が結果を左右する可能性は十分にあります。
特に小規模事業者持続化補助金は、審査項目の配点に対して加点の比重が比較的大きいと言われており、取れる加点はすべて取っておくことが実務上の鉄則です。
経営力向上計画の認定は、補助金申請の「前」に受けておく必要があります。公募回ごとに、いつまでに認定を受けたものが加点対象となるかは異なります。補助金の公募が始まってから慌てて認定を取ろうとすると間に合わないことがあるため、設備投資を検討し始めた早い段階で認定を受けておくのが効果的です。
メリット②:日本政策金融公庫の低利融資が利用できる
制度の概要
経営力向上計画の認定を受けた事業者は、日本政策金融公庫の「中小企業経営力強化資金」を利用できます。これは、通常の融資よりも低い金利で資金を調達できる制度です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 融資対象 | 経営力向上計画の認定を受けた中小企業者等 |
| 融資限度額 | 7,200万円(うち運転資金4,800万円)※中小企業事業の場合は別途 |
| 金利 | 基準金利から一定の引き下げ(時期により異なる) |
| 用途 | 経営力向上計画の実行に必要な設備資金・運転資金 |
活用のメリット
設備投資の資金調達を金融機関からの借入で行う場合、金利の差は長期間にわたって累積していきます。
たとえば0.5%の金利差でも、1,000万円を5年間借りれば十数万円の差になります。
経営力向上計画の認定を受けるだけで利用できるため、設備投資と融資を同時に検討している場合は積極的に活用したい制度です。
補助金は原則として「後払い」です。採択されても、まず自社で全額を立て替えて設備を購入し、実績報告後に補助金が振り込まれます。この立て替え期間の「つなぎ資金」として日本政策金融公庫の融資を活用するのは、実務上非常に有効な組み合わせです。
制度の概要
中小企業が金融機関から融資を受ける際、信用保証協会の保証を付けるケースが多くあります。
力向上計画の認定を受けた事業者は、通常の保証枠とは別枠で追加の保証を利用できるようになります。
| 保証の種類 | 通常の保証枠 | 経営力向上計画による別枠 |
|---|---|---|
| 普通保証 | 2億円 | +2億円(合計4億円) |
| 無担保保証 | 8,000万円 | +8,000万円(合計1.6億円) |
「別枠」の意味
通常の保証枠をすでに使い切っている、あるいは枠の残りが少ない中小企業にとって、別枠の追加保証は大きな意味を持ちます。
「保証枠がいっぱいだから融資を受けられない」という状況を解消できる可能性があります。
もちろん、保証枠が追加されるだけで自動的に融資が受けられるわけではありません。
金融機関の融資審査は別途行われますが、保証枠の拡大は融資の前提条件をクリアしやすくする効果があります。
メリット④:食品等流通法の認定代替
食品等の流通に関わる事業を行っている中小企業の場合、経営力向上計画の認定が食品等流通合理化計画の認定に代わるものとして扱われるケースがあります。
これにより、別途の計画認定を受ける手間を省ける場合があります。
対象となる事業者は限定的ですが、食品製造業・食品卸売業・食品小売業等に該当する場合は、認定経営革新等支援機関に確認してみてください。
補助金加点・金融支援を最大限に活かすための考え方
「計画ありき」ではなく「経営課題ありき」で考える
経営力向上計画の認定を受けると、ここまで紹介したようにさまざまな支援制度を利用できます。
しかし、「加点が欲しいから計画を作る」「融資の金利を下げたいから認定を取る」という順番で考えると、形だけの計画になりがちです。
大切なのは、まず自社の経営課題と「なりたい姿」を明確にし、その実現のために経営力向上計画を活用するという考え方です。実態のある計画であれば、補助金の審査でも「この会社は本気で経営を変えようとしている」という印象を与えることができます。
税制と金融支援を組み合わせて使う
経営力向上計画の最大の強みは、一つの計画認定で複数の支援制度を同時に活用できることです。たとえば、以下のような組み合わせが考えられます。
組み合わせ例:設備投資を行う場合
① 経営力向上計画を策定・認定を受ける
② 中小企業経営強化税制で即時償却または税額控除を活用
③ 日本政策金融公庫の低利融資で設備資金を調達
④ 小規模事業者持続化補助金に申請し、加点を得る
⑤ 補助金が振り込まれるまでのつなぎ資金を③で対応
このように、設備投資に関わる「税金」「融資」「補助金」の3つの課題を一つの計画でカバーできるのが経営力向上計画の大きな利点です。
計画は「作って終わり」ではない
経営力向上計画は認定を受けて終わりではありません。
計画に記載した取り組みを実行し、その効果を検証していくことが本来の目的です。
計画どおりに進まない場合は変更申請も可能ですので、経営環境の変化に応じて柔軟に見直していくことが大切です。
よくある質問(FAQ)
- Q補助金の加点のためだけに経営力向上計画を取得することは可能ですか?
- A
制度上は可能ですが、強くおすすめはしません。経営力向上計画は自社の経営課題と向き合い、具体的な改善策を計画に落とし込むものです。加点のためだけに形式的な計画を作っても、中長期的な経営には役立ちません。ただし、補助金の申請を検討しているのであれば、早めに計画を策定して認定を受けておくことは合理的な判断です。
- Q経営力向上計画の認定にはどのくらいの期間がかかりますか?
- A
申請書に不備がなければ、約30日(所管省庁が単一の場合)です。複数省庁にまたがる場合は約45日かかります。経営力向上計画申請プラットフォームによる電子申請(経済産業部局宛のみ)であれば約14日(休日除く)です。余裕を持ったスケジュールで申請してください。
- Q経営力向上計画の認定にはお金がかかりますか?
- A
計画の認定申請自体に手数料はかかりません。無料です。ただし、認定経営革新等支援機関に策定の支援を依頼する場合は、支援機関に対する報酬が発生する場合があります。
- Q日本政策金融公庫の融資は経営力向上計画の認定があれば必ず受けられますか?
- A
いいえ。経営力向上計画の認定は融資の申込要件の一つですが、融資の可否は日本政策金融公庫による審査で判断されます。事業計画の妥当性や返済能力などが総合的に評価されます。
金融支援のために経営力向上計画の申請を行いたい場合は、事前に金融機関にご相談ください。
- Qすでに認定を受けた計画の内容を変更できますか?
- A
はい、変更認定申請を行うことで計画の内容を変更できます。設備の追加取得や事業内容の変更などがある場合は、変更申請を行ってください。
まとめ ― 税制だけではもったいない
経営力向上計画というと「即時償却のために取る」というイメージが強いですが、実際には補助金の加点、低利融資、保証枠の拡大など、税制以外にも経営を支える多面的なメリットがあります。
特に設備投資を計画している中小企業にとっては、「税金」「融資」「補助金」という3つの経営課題を一つの計画でまとめて対策できる点が大きな魅力です。
「税制優遇だけ使えればいい」と思っている方も、ぜひ金融支援や補助金の加点も含めた総合的な活用を検討してみてください。
次回は、経営力向上計画の具体的な書き方と申請の流れを解説します。
- 第1回:経営力向上計画とは?中小企業が認定を受ける5つのメリット
- 第2回:経営力向上計画で設備投資の税負担を軽くする方法
- 第3回:経営力向上計画は補助金の採択率を上げる?加点と金融支援の活用法(本記事)
- 第4回:経営力向上計画の書き方と申請の流れ
