2025年1月10日より、事業再構築補助金の13次の公募が開始しました。
コロナ等の事業環境の変化に対応するために、新市場への進出や、これまでとは異なる事業・業種への転換を図るなど、思い切った大胆な取組を行う企業を支援するために開始された補助金です。
中小企業向けの補助金ではなかなか補助対象にならない建物費や広告費等が補助対象となることから、多くの企業が応募し、それに伴い様々な問題も発生した補助金です。
本記事では、対象となる中小企業がスムーズな申請に繋げられるようにするために、事業再構築補助金の制度についてわかりやすく説明いたします。
目次
事業再構築補助金の目的
事業再構築補助金は、経済社会の変化(コロナによる人々の意識の変化、価格高騰など)に対応するために、思い切った大胆な事業再構築(”再構築”ですので、既存のビジネスモデルの延長線上というよりは、これまでの枠組みを大きくはみ出すような取組)を行う企業に対し、そのために必要な経費の一部を補助するものです。
これまで続けていた事業をこのまま今後も継続するだけでは安定した事業の継続が厳しい。新たな社会ニーズに対応するビジネスに思いきってチャレンジしたい。そんな思いを抱えていても、新たな取組にはどうしても投資が必要となるものであり、第一歩を踏み出すことにためらう企業様は多いのではないでしょうか。
この補助金は、そのような初めの第一歩を踏むための資金の一部を補助することで、企業がさらなる高みへと成長することを応援する補助金です。
事業再構築補助金の活用イメージ
国からは、具体的な活用イメージとして3つが挙げられています。
業種 | 建設業 | 卸売・小売業 | 製造業 |
---|---|---|---|
既存事業 | 解体工事業 | 飲食料品卸売業 | 半導体製造装置部品製造 |
新事業 | 製造業 | 製造・小売業 | 洋上風力設備の部品製造 |
再構築内容 | 建築物の解体を行う事業者が、解体作業時に発生する素材を使用した燃料製造を新たに開始。 | 米、肥料、農業資材等卸売事業者が、米加工品製造及び販売を新たに開始。 | 半導体製造装置の技術を応用した洋上 風力設備の部品製造を新たに開始。 |
特徴としては、ただ「新事業にチャレンジする」というものではなく、これまでに培った経験や強みなど、保有する経営資源などを活かして新事業に取り組むものであるというのがあります。
(まったくの無関係多角化は、どうしても実現可能性の面で認められづらいというのがあります)
事業再構築補助金の申請共通要件
補助金に申請するための共通要件です。
事業再構築補助金は、取組内容に応じて複数の申請枠があり、この基本要件に加え、各申請枠別の要件を満たすことが必要です。
- 「事業再構築」の定義に該当する事業であること
- 事業計画について金融機関等や認定経営革新等支援機関の確認を受けること
- 補助事業終了後3~5年で付加価値額の年平均成長率3~4%以上増加、又は従業員一人当たり付加価値額の年平均成長率3~4%以上増加を達成すること
1.「事業再構築」の定義に該当する事業であること
国の方で、どのような取組が「事業再構築」であるのかを「事業再構築指針」というもので定めています。自社の事業が当てはまるかは、「事業再構築指針の手引き」を見るほうがわかりやすいです。具体的には、下記のいずれかに当てはまるものを「事業再構築」としています。
新市場進出 | 新たな製品(サービス)で新たな市場に進出する |
事業転換 | 主な「事業」を変更する(産業分類でいう「中分類」もしくは「小分類」の変更) |
業種転換 | 主な「業種」を変更する(産業分類でいう「大分類」の変更) |
事業再編 | 合併、会社分割、株式交換、株式移転、事業譲渡を行い、そのうえで新市場進出・事業(業種)転換等を行う |
2.事業計画について金融機関等や認定経営革新等支援機関の確認を受けること
申請の際には、「金融機関による確認書」又は「認定経営革新等支援機関による確認書」を合わせて提出する必要があります。
事業実施にあたり自己資金だけではなく融資等によって資金調達をする場合は「金融機関による確認書」を提出し、金融機関からの借り入れを必要としない場合は「認定経営革新等支援機関による確認書」を提出することになります。
当事務所も認定経営革新等支援機関ですので、確認書の発行が可能です。
3.補助事業終了後3~5年で付加価値額の年平均成長率3~4%以上増加、又は従業員一人当たり付加価値額の年平均成長率3~4%以上増加を達成すること
補助金は税金を原資としているため、国としても、補助金を渡して満足というわけにはいかず、その後、実施した取組が軌道に乗って国の経済の活性化につながることが求められています。
そのため、作成する事業計画は、毎年3%以上の付加価値額(営業利益+人件費+減価償却費)の向上が見込まれるものである必要があります。
営業利益をどのように高めていくのか(売上を向上する、経費を削減する…)、賃上げが求められる中で人件費の計画はどうしていくのか等、具体的で実現性の高い計画の策定が求められます。
事業再構築補助金の申請枠・補助金額・補助率
13次で応募可能な申請枠および各枠における補助金額・補助率は、下記のとおりです。
申請枠 | 補助上限額 | 補助率 |
---|---|---|
成長分野進出枠(通常類型) | 従業員数に応じ上限が変わり 最大7,000万円 | 中小:1/2~2/3 中堅:1/3~1/2 |
成長分野進出枠(GX進出類型) | 従業員数に応じ上限が変わり 最大1億円 | 中小:1/2~2/3 中堅:1/3~1/2 |
コロナ回復加速化枠(最低賃金類型) | 従業員数に応じて 最大1,500万円 | 中小:1/2~3/4 中堅:1/2~2/3 |
成長分野進出枠(通常類型)
ポストコロナに対応した、成長分野への大胆な事業再構築にこれから取り組む事業者や、国内市場縮小等の構造的な課題に直面している業種・業態の事業者が取り組む事業再構築を支援。
10 年間で、市場規模が 10%以上拡大する業種・業態に属す事業を新事業とするか、もしくは10%以上縮小が見込まれる業種・業態から他の事業に転換するための取組等が対象となります。リストにない業種・業態であっても、第三者の客観的なデータを基に拡大・縮小が示せるのであれば、リスト外の業種・業態も対象となります。
成長分野進出枠(GX進出類型)
ポストコロナに対応した、グリーン成長戦略「実行計画」14 分野の課題の解決に資する取組をこれから行う事業者の事業再構築を支援。
令和3年6月18日付で策定された「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」において、「実行計画」が策定されている14分野に関し、各分野ごとに「現状と課題」として記載のある「課題」の解決に資する取組が対象となります。
コロナ回復加速化枠(最低賃金類型)
コロナ禍が終息した今、最低賃金引上げの影響を大きく受ける事業者の事業再構築を支援。
2023 年 10 月から 2024 年9月までの間で、3 か月以上最低賃金+50 円以内で雇用している従業員が全従業員数の 10%以上いる企業が、事業再構築を行う場合に対象となります。
事業再構築補助金の補助対象経費
事業再構築補助金で補助対象となるのは、
- 建物費(建物の建築・改修等)
- 機械装置・システム構築費
- 技術導入費(知的財産権導入に要する経費)
- 外注費(加工、設計等)
- 広告宣伝費・販売促進費(広告作成、媒体掲載、展示会出展等)
- 研修費(教育訓練費等)
等となります。自社の従業員の人件費、従業員の旅費、不動産、汎用品の購入費等は補助対象外となります。
また、建物費については基本的に改装費が対象となります。新築はよほどの理由がなければ認められませんので(対象事業を実施できるような賃貸物件等が近隣に全くないことが客観的に説明できるなど)基本的にはおすすめしていません。
他にも、事業実施に直接的に関係ないエリア(休憩室など)も対象外となるため、建築費の見積もり全額ではなく見積もり全額のうち一部が対象となるようなイメージです。
事業再構築補助金の補助対象となる投資期間
補助金の支払い対象となるのは、申請後に審査員による審査を受けて、採択(合格)を受けた企業が、その後事務局に対して見積書等を提出して許可を得た(交付決定を受けた)後の発注分が対象となります。
交付決定を受ける前に発注してしまったものは全て対象外となってしまいますので、特にご注意ください。(採択を受けて喜んですぐに発注してしまった、というお話をたまに聞きます)
事業再構築補助金の申請に必要な書類等
補助金の申請にあたって準備するものについては、下記のようなものがあります。(申請枠や、加点希望に応じて追加で必要なものもあります)
- 事業計画書(最大15枚)
- 金融機関・認定経営革新等支援機関による確認書
- 直近2期分の決算書
- ミラサポplus「ローカルベンチマーク」の事業財務情報(国が作成したWebサイト上で財務情報を入力し、それをPDF出力したものです)
- 従業員数を示す書類(労働者名簿)
- 固定資産台帳
- 確定申告書
- その他申請類型の条件を満たすことを証明する書類
事業計画書の作成がメインとなります。専門家の協力を得る場合は、1カ月以上の相談期間をとってしっかり話し合ったうえで作成を進めることをお勧めします。
※金融機関の確認書が必要となる場合は、特に金融機関内で稟議を通すための時間が必要です。
事業計画書をある程度作成したうえで金融機関に持ち込みを行い、そこから数週間の処理時間が必要となることが多いため、メインバンクにあらかじめご相談いただくことも重要です。
さいごに
事業再構築補助金は、最初に述べた通り多くの企業がこぞって申請を行った結果、事務手続きの不備等も多く発生したのか、事務局の体制が非常に厳しいものとなっています。
とはいえ、厳しい事業環境が続く中、新しい取り組みを行いたい企業にとって魅力的な補助金ではありますので、十分に公式HPの情報等を確認し、申請準備を進めていただければと思います。
また、その際に一緒に取組を行うためのパートナーとして当事務所をご指名いただけましたら、これ以上の幸せはありません。