デジタル化・AI導入補助金(旧:IT導入補助金)において、役務をITツールとして登録する制度は、IT導入補助金2025から引き継がれています。令和8年度(2026年度)からは制度名称が変わるとともに、AI機能の申告義務化やIT導入支援事業者に求められる役割の明確化など、実務上押さえておくべき変更点がいくつかあります。
本記事では、役務のITツール登録の基本的な考え方と、デジタル化・AI導入補助金における留意点を、IT導入支援事業者(ITベンダー)向けに整理します。
役務がITツール?
そもそも「役務がITツール」とはどういう意味かというと、デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)では、補助対象となるものをすべて個々の「ITツール」として事務局に登録申請し、承認を得た上で補助金申請を行う仕組みになっています。ソフトウェア本体だけでなく、導入に必要な設定作業、保守サポート、そしてコンサルティングといった「役務」も、ITツールとして登録することで補助対象に含めることができます。

たとえばカテゴリー1のソフトウェアを補助金で導入したい場合、そのソフトウェアと合わせて導入設定費や保守サポート費もセットで申請することで、ソフトウェア活用に不可欠な役務についても補助を受けられます。
IT導入補助金2025から「活用コンサルティング」が補助対象に追加され、デジタル化・AI導入補助金でも引き続き対象となっています。これは、導入したものの使われずに放置されるような事態を防ぎ、ITツールを事業に定着させることを重視する制度の方向性を反映したものです。
デジタル化・AI導入補助金で補助対象となる役務
役務の補助対象区分は、大分類IIIとして以下のカテゴリーに整理されています。基本的な構成はIT導入補助金2025から変わっていませんが、令和8年度から支援事業者に求められる役割がより明確に規定されています。
カテゴリー5(導入コンサルティング・活用コンサルティング)
| カテゴリー | 対象となるもの |
|---|---|
| 導入コンサルティング | マスタ類の設定項目洗い出しに係る費用、パッケージ導入計画作成費用、業務移行計画(並行稼動)作成費用、教育計画作成費用、新システム本稼動判定(検収)基準設定費用、データ移行計画作成費用、復旧計画策定費用、カスタマイズ項目洗い出し費用、パッケージFit/Gap分析費用 |
| 活用コンサルティング | ITツール利活用に関するノウハウの提供を目的とするコンサルティング費用 (例:機能アップデートに係る教育・研修、他社活用事例の共有と改善提案 など) |
| ITツール利用定着のためのコンサルティング費用 (例:利用状況のモニタリングと評価・改善策の提案 など) | |
| 経営実態の変化に対応したITツールの利活用に係るコンサルティング費用 (例:組織改編時の新規ユーザーへの教育・研修、法改正対応の利用方法に関する研修 など) |
カテゴリー5のITツールは、1申請あたり1ツールしか申請できません。そのため、顧客Aには導入コンサルティングのみ、顧客Bには活用コンサルティングのみ、顧客Cには両方を提供したい場合には、それぞれの組み合わせに対応した3つのITツール登録を事前に行っておく必要があります。
また、各業務内容と価格(時間単価×時間×人数)を所定のExcel様式に記載して価格の根拠を説明する必要があります。これはIT導入補助金2025から変わらない運用です。

カテゴリー6(導入設定・マニュアル作成・導入研修)
カテゴリー6で補助対象となる費用の例は以下のとおりです。
- 導入設定費用、テーブル設定費用等
- CSVデータ・アップロード作業に係る費用(既存データ対象)
- カスタマイズ作業に係る費用
- 研修資料作成、研修実施費用
- 運用マニュアル作成費用
- RPAのシナリオ制作費、AI初期学習設定
カテゴリー7(保守サポート)
カテゴリー7で補助対象となる費用の例は以下のとおりです。
- 保守費用
- 問合せ窓口費用
カテゴリー6・カテゴリー7については、登録時にいずれかのソフトウェア(カテゴリー1)との紐づけが必須となります。また、紐づける対象のソフトウェアが先に承認済となっている必要があります。

役務提供価格の設定
カテゴリー7(保守サポート)の費用は最大2年分が補助対象となるため、価格説明資料には1年分の費用を記載します。
カテゴリー5・6については1つしか登録できず、個数・年数による価格変更もできないため、フルで提供した場合の価格を登録しておく必要があります。実際には顧客によって提供しない業務が生じる場合は、その内容に応じて交付申請額を調整します。
【例】導入設定・マニュアル作成・導入研修すべて行うITツールを登録した場合
| ITツール | 業務 | 提供価格 |
|---|---|---|
| ソフトウェア | ソフトウェア本体 | 20万円 |
| 役務 | 導入設定費用、テーブル設定費用等 | 6万円 |
| カスタマイズ作業に係る費用 | 2万円 | |
| 研修資料作成、研修実施費用 | 2万円 | |
| 運用マニュアル作成費用 | 2万円 | |
| 標準提供価格 | 32万円 |
フルで提供した場合の価格が32万円であるのに対し、顧客Aに対して運用マニュアル作成を提供しない場合は30万円として申請することになります。導入設定が軽微なお客様であれば、設定費用を6万円ではなく3万円で申請するケースもあるでしょう。
令和8年度(デジタル化・AI導入補助金)での変更点
令和8年度からの制度名称変更に伴い、役務登録に関連して実務上押さえておきたい変更点が2点あります。
AI機能の申告が必要になった
令和8年度からは、ITツール登録申請時に、当該ツールが「AIを用いた機能」を搭載しているかどうかの申告が必須となりました。具体的には「生成AI(文章・画像・プログラム等を生成できるもの)」と「生成AI以外のAI技術(分析・予測等)」を区別して申告します。
役務(カテゴリー5・6)の登録においても、AI初期学習設定などAI関連の業務が含まれる場合は、この申告内容との整合性を意識した登録が必要です。
IT導入支援事業者に求められる役割が明確化された
令和8年度版の登録案内では、IT導入支援事業者の役割として「導入支援・定着支援・活用支援・フォローアップを行う体制を整えること」に加え、「より高度な利用方法や情報分析の方法のレクチャー等を実施すること」が明記されました。活用コンサルティングの重要性がより強調された形です。
単にツールを販売して終わりではなく、導入後の成果創出にコミットする姿勢が求められていることを、登録内容にも反映させる必要があります。
令和8年度の詳細な変更点については、以下の記事もあわせてご確認ください。
▶ 【令和8年度版】デジタル化・AI導入補助金 ITベンダーのための実務ガイド
▶ 【令和8年度】IT導入補助金→デジタル化・AI導入補助金2026へ|公募要領から読み解く変更点
役務を申請した場合の実績報告時の注意点
役務を補助対象として申請した場合、IT導入支援事業者は実績報告時に、事務局が指定した様式に沿って実施内容説明資料を提出する必要があります。
登録された業務以外の業務が実施されていた場合、実際に実施した業務内容と報告額との整合性が確認できない場合、または実態のない業務内容を実施したものとして報告した場合は、補助対象外または交付決定の取消しとなる可能性があります。
また、役務の実施実態資料(業務日誌、勤怠管理簿、議事録等)の提出を求められる場合があります。役務を補助対象とした場合には、お客様ごとに「いつ・誰が・何時から何時にわたって・どのような役務を提供したか」をきちんと記録・管理しておくことを強くお勧めします。
よくある質問
- Qデジタル化・AI導入補助金でも役務(活用コンサルティング)は補助対象ですか?
- A
はい、補助対象です。デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)でも、大分類III役務として、カテゴリー5(導入コンサルティング・活用コンサルティング)・カテゴリー6(導入設定・マニュアル作成・導入研修)・カテゴリー7(保守サポート)は引き続き補助対象となっています。令和8年度から制度名称が変わっていますが、役務の基本的な構成はIT導入補助金2025を踏襲しています。
- Q令和8年度から役務登録で新たに対応が必要になったことはありますか?
- A
主に2点あります。①ITツール登録申請時に「AI機能の有無」の申告が必要になりました。役務においてAI関連業務(AI初期学習設定等)が含まれる場合は、申告内容との整合性を確認してください。②IT導入支援事業者に求められる役割として「高度な利用方法や情報分析のレクチャー等の実施」が明記されるなど、活用支援の重要性がより強調されました。
- Q活用コンサルティングの登録手続きはどこで確認できますか?
- A
登録手続きの詳細は、事務局が公表している「ITツール登録マニュアル」に記載されています。令和8年度(デジタル化・AI導入補助金)から制度・様式が変更されている場合があるため、必ず最新の公式資料を確認してください。
- Q活用コンサルティングをITツール登録するときの主な注意点は何ですか?
- A
主に3点です。①価格説明資料の様式に従って価格設定の根拠(時間単価×時間×人数)を明示すること、②業務内容・実施期間を明確に定義すること、③実績報告時に成果物・実施記録(業務日誌、議事録等)を適切に管理できる体制を整えること、です。登録内容と実際に提供するサービスの内容に乖離があると補助対象外や取消しにつながるため、実態に即した登録が最重要です。
- Qカテゴリー5・6・7の登録手続きはどこで確認できますか?
- A
事務局が公表している「ITツール登録マニュアル」に詳細が記載されています。デジタル化・AI導入補助金(令和8年度)から様式や手続きが変更されている場合があるため、必ずデジタル化・AI導入補助金の公式サイト(it-shien.smrj.go.jp)で最新資料を確認してください。
さいごに
人件費に関わる役務の補助対象化は、固定資産の補助よりも手続きが複雑になりがちです。価格の根拠を示す作業や実績報告時の記録管理など、手間がかかることも事実です。しかし、制度をきちんと理解した上で適切に対応すれば、決して難しいものではありません。
デジタル化・AI導入補助金では、単にツールを提供して終わりではなく、お客様がITを活用して成果を出せるよう支援することが、IT導入支援事業者としての役割として明確に位置づけられています。役務登録を適切に活用し、お客様へのサービスの幅を広げていただければと思います。
個別の登録手続きや実績報告に関してご不明な点がある場合は、お気軽にご相談ください。
