「売上が伸びない」「資金繰りが不安」「そもそも誰に相談すればいいのか分からない」──こうした悩みを一人で抱えている中小企業の経営者は少なくありません。

実は、国や自治体が運営する無料の経営相談窓口が全国各地に存在します。ところが、名前が分かりにくく、広告も出していないため、ほとんど知られていないのが実情です。

この記事では、「もっと早く知りたかった」と言われることの多い公的支援先を、できるだけ分かりやすく整理します。

なぜ、公的な経営支援は知られていないのか

理由はとてもシンプルです。

  • テレビCMやネット広告を出していない
  • 制度名が堅く、検索しても見つけにくい
  • 商工会や金融機関を通じてしか案内されないことが多い

つまり、「知らなくても不思議ではない」のが現実です。
「経営者なのに知らなかった」と気にする必要はまったくありません。
大切なのは、こうした制度があると知ったうえで、必要なときに活用することです。

まず知っておきたい|全国共通の無料相談窓口

よろず支援拠点──「経営の悩みなら、まずここへ」

よろず支援拠点は、中小企業庁が全国47都道府県すべてに設置したワンストップの無料経営相談所です。

相談できる内容

売上向上、資金繰り、集客・マーケティング、IT活用、人材確保など、経営に関する幅広いテーマに対応しています。相談は無料で、回数制限も原則ありません。

こんな方におすすめ

  • 何が課題なのか、自分でもまだ整理できていない
  • 「とりあえず話を聞いてほしい」という段階
  • どの支援制度を使えばよいか分からない
知っておきたいポイント

よろず支援拠点は「相談と情報提供」が中心の機関です。
申請書の作成代行や、事業計画書を一緒に仕上げるといった実務対応は基本的に行っていません。
また、担当者によって得意分野が異なるため、相談前に拠点に問い合わせて、テーマに合ったアドバイザーを確認しておくとスムーズです。

地域に根ざした身近な相談先

商工会議所・商工会──「地元企業のかかりつけ医」

商工会議所(主に市部)と商工会(主に町村部)は、古くから地域の事業者を支えてきた団体です。

相談できる内容

経営全般の相談、補助金・融資制度の情報提供、記帳指導、労務に関する初歩的な相談などに対応しています。

こんな方におすすめ

  • 地元で長く事業を営んでいる方
  • 顔の見える関係で相談したい方
  • 補助金や融資の制度情報をまず知りたい方
知っておきたいポイント

専門性の高い課題(例:IT戦略、知的財産、海外展開など)については、外部の専門家やほかの支援機関を紹介してもらえるケースが多くあります。
入口の相談先としてまず利用してみるのがおすすめです。

産業支援センター(都道府県・市町村)──「自治体が運営する事業づくりの相談所」

都道府県や市町村が設置している支援機関で、地域によって名称はさまざまです(「産業振興センター」「中小企業支援センター」など)。

相談できる内容

創業相談、新規事業や販路開拓の相談、IT導入の支援、専門家の派遣やセミナーの開催など、地域ごとに特色のある支援メニューを展開しています。

こんな方におすすめ

  • 創業したばかり、またはこれから創業を考えている方
  • 新しい事業や取り組みを始めたい方
  • 自治体独自の支援制度を知りたい方

特定のテーマに強い専門窓口

事業承継・引継ぎ支援センター──「会社の将来を一緒に考える場所」

全国の各都道府県に設置されている、事業承継に特化した公的窓口です。
「後継者がいない」「まだ何も決まっていない」という段階からでも相談できます。

相談できる内容

  • 親族内承継の進め方
  • 従業員承継の検討
  • 第三者承継(M&A)の初期相談
  • 事業承継に向けた計画づくりの支援
知っておきたいポイント

相談・情報提供は無料ですが、M&Aの実行段階に入ると民間の仲介機関や専門家の関与が必要になることがあります。まずは「情報収集と方向性の整理」のために気軽に利用してみてください。

中小企業活性化協議会──「資金繰り・金融機関対応に困ったときの相談先」

各都道府県に設置されている、資金繰りや事業再生に関する支援機関です。

相談できる内容

  • 収益改善に向けた課題整理
  • 金融機関との調整支援(リスケジュールの相談など)
  • 再生計画の策定支援
知っておきたいポイント

「本当に苦しくなってから行く場所」というイメージをもたれがちですが、実際には早い段階で相談するほど、選択肢が広がります。「少し不安を感じ始めた」というタイミングでも相談して問題ありません。

より専門的な支援を受けたいとき

中小企業基盤整備機構(中小機構)──「国の中核支援機関」

中小機構は、国(経済産業省所管)の中核的な中小企業支援機関です。テーマ別の専門支援を幅広く展開しています。

主な支援テーマ

  • 経営の高度化・成長支援
  • 事業再生支援
  • 事業承継支援
  • 海外展開支援
  • 共済制度の運営(小規模企業共済・経営セーフティ共済)

個別のテーマで深い支援を受けたい場合や、ほかの窓口では対応しきれない課題がある場合に活用を検討してみてください。

公的支援と民間専門家の違いを整理する

「公的支援があるなら、民間の専門家には頼まなくてよいのでは?」と感じるかもしれません。しかし、それぞれ得意な領域が異なります。以下の表で整理します。

支援の内容公的支援民間専門家
経営課題の相談・整理
情報提供・方向性のアドバイス
事業計画書の作成△(助言まで)
補助金の申請支援×
実務の代行・伴走支援×

使い分けの目安

「考える段階」「情報を整理する段階」では公的支援を活用し、「具体的に動かす段階」「計画を形にする段階」では民間専門家を活用する──この使い分けが現実的です。

もちろん、最初から民間専門家に相談しても問題ありません。大切なのは、段階に合った支援先を選ぶことです。

どこから調べればいいか分からないときは──ミラサポplus

「結局、自分にはどの窓口が合っているのか分からない」という方には、ミラサポplusの利用をおすすめします。

ミラサポplusは、中小企業庁が運営する公式の支援情報ポータルサイトです。以下のような情報をまとめて確認できます。

  • お住まいの地域にある支援機関の検索
  • 補助金・助成金・融資制度の一覧と検索
  • 業種や目的に応じた支援制度の絞り込み

「いきなり窓口に行くのは気が引ける」という場合でも、まずこのサイトで情報を集めるだけでも、次のアクションが明確になります。

当事務所の考え方──公的支援と民間支援は「対立」ではなく「連携」

当事務所(中小企業診断士事務所)では、公的支援の活用をまったく否定していません。むしろ、以下のような進め方をおすすめしています。

おすすめのステップ

ステップ1:まず無料の公的窓口で、現状の課題を整理する
ステップ2:方向性が見えたら、必要な部分だけ民間の専門家を活用する
ステップ3:事業計画書の作成や補助金申請など、実務が必要な場面で専門的なサポートを受ける

この流れは、費用面でも無駄がなく、とても健全なアプローチです。

当事務所が大切にしているのは、「補助金ありき」ではなく「事業のなりたい姿」を起点に考えるということです。補助金はあくまで、その姿を実現するためのサポートツールの一つに過ぎません。だからこそ、「まず公的支援で方向性を整理し、必要に応じて専門家のサポートを組み合わせる」という進め方を推奨しています。

事業計画書の策定、補助金申請の実務支援、制度活用のご相談など、具体的なアクションの段階でお力になれれば幸いです。

まとめ|まずは「知ること」から始めてみませんか?

この記事で紹介した公的支援窓口を改めて整理します。

窓口名主な特徴向いている方
よろず支援拠点経営全般のワンストップ相談何から相談すればよいか分からない方
商工会議所・商工会地域密着の総合的な支援地元で長く事業を営む方
産業支援センター創業・新事業に強い創業期や新しい取り組みを始める方
事業承継・引継ぎ支援センター承継テーマの専門窓口後継者問題を抱えている方
中小企業活性化協議会資金繰り・再生の支援資金面の不安を感じている方
中小企業基盤整備機構国の中核支援機関専門的・横断的な支援を求める方

経営の悩みは、一人で抱えるほど視野が狭くなりがちです。まずは「こういう相談先がある」と知っておくだけでも、いざというときの安心感が変わります。

「無料で相談できる場所を知った上で、本当に必要なサポートを選ぶ」。
それが、賢い経営支援の活用法です。