令和7年度まで「IT導入補助金」として実施されていた制度が、令和8年度から「デジタル化・AI導入補助金」に名称変更されました。

「中身は大きく変わったの?」と聞かれると、結論としては基本的な仕組みはほぼ同じです。
補助額・補助率・枠構成・申請の流れとも、2025年度の制度を踏襲しています。

ただし、公募要領を細かく比較すると、見落としがちな変更点がいくつかあります。
この記事では、通常枠とインボイス枠(インボイス対応類型)を中心に、令和7年度版の公募要領と比較して確認できた具体的な違いを整理しました。

変更点① 名称と事業名の変更

もっとも分かりやすい変更点です。

令和7年度令和8年度
名称IT導入補助金2025デジタル化・AI導入補助金2026
事業名サービス等生産性向上IT導入支援事業中小企業デジタル化・AI導入支援事業
事務局TOPPAN株式会社TOPPAN株式会社(変更なし)

事務局も申請の仕組み(IT導入支援事業者との共同事業体、ITツールの事前登録制度)も変わりません。枠構成も通常枠・インボイス枠(インボイス対応類型/電子取引類型)・セキュリティ対策推進枠・複数社連携枠で同じです。

変更点② ソフトウェアの定義に「AI」が明記

2025年版の公募要領では、ITツールの定義に含まれるソフトウェアは単に「ソフトウェア」と記載されていました。

2026年版では、これが「ソフトウェア(AIを含む)」と変更されています。

実際の補助対象や審査基準が大きく変わるわけではありませんが、制度としてAI活用を推進する姿勢を明確にしたものです。
また、ITツール検索でAIの搭載有無を含む機能概要が確認できる仕組みが新たに設けられています。

変更点③ 補助率引上げ措置の表現が変更

通常枠の補助率引上げ(1/2→2/3)に関する条件表記が変わりました。

令和7年度(改訂後)令和8年度
条件令和6年10月〜令和7年9月の間で3か月以上、令和7年度改定の地域別最低賃金未満で雇用していた従業員が全従業員の30%以上令和6年10月〜令和7年9月の間で、「当該期間における地域別最低賃金以上〜令和7年度改定の地域別最低賃金未満」で雇用している従業員が全従業員の30%以上である月が3か月以上

判定期間(令和6年10月〜令和7年9月)と30%以上の要件は同じですが、2026年版では「地域別最低賃金以上」という下限が明記され、条件が明確化されています。

変更点④ 加点項目に「省力化ナビ」が追加

2026年版で新たに加わった加点項目があります。

加点項目2025年版2026年版
クラウド製品の選定
サイバーセキュリティお助け隊サービスの選定
インボイス制度対応製品の選定
賃上げ計画の策定
IT戦略ナビwithの実施
健康経営優良法人の認定
えるぼし・くるみん認定
成長加速マッチングサービスの登録○(途中追加)
最低賃金近傍の雇用実績○(途中追加)
事業場内最低賃金+63円以上の実績○(途中追加)
省力化ナビの活用×○(新規)

「省力化ナビ」は中小機構が運営する省力化投資の検討支援ツールで、2026年版で初めて加点対象に追加されました。

なお、2025年版の通常枠にあった加点項目のうち一部は、2025年度中に改訂で追加されたものが2026年版では当初から含まれている、という違いもあります。

変更点⑤ 通常枠の賃上げ計画は目標水準が引き上げ

通常枠の賃上げ要件は、補助金申請額が150万円以上の場合は必須、150万円未満の場合は加点項目(任意)という基本構造は2025年版から変わっていません。
一方、2025年までは給与年平均成長率は一律1.5%以上を求められていましたが、最低3%以上に引き上げられたことに加え、過去にIT導入補助金2022〜2025の交付決定を受けているかどうかで、目標水準が変わります。

条件賃上げ計画の扱い目標水準
150万円未満・過去交付決定なし加点項目(任意)給与年平均成長率3%以上+最低賃金+30円以上
150万円未満・過去交付決定あり加点項目(任意)給与年平均成長率3.5%以上+最低賃金+30円以上
150万円以上・過去交付決定なし必須給与年平均成長率3%以上+最低賃金+30円以上
150万円以上・過去交付決定あり必須給与年平均成長率3.5%以上+最低賃金+30円以上

なお、150万円以上で賃上げが必須となる場合、目標未達時には補助金返還のリスクがある点は慎重に判断すべきです。小規模事業者、保険医療機関、介護サービス事業者、社会福祉事業者、学校法人等は賃上げ要件の適用外です。

変更点⑥ インボイス枠(インボイス対応類型)も賃上げ計画の目標水準が引き上げ

インボイス枠の賃上げ要件についても構造は同じです。インボイス枠では通常枠と異なり、賃上げ計画はいずれの場合も加点項目(任意)であり必須ではありません。
ただし、加点を受けるために賃上げ計画に取り組む場合、最低給与年平均成長率3%以上、過去に交付決定を受けた事業者は目標水準が3.5%に引き上がります。

条件賃上げ計画の扱い目標水準
過去にIT導入補助金2022〜2025の交付決定なし加点項目(任意)給与年平均成長率3%以上+最低賃金+30円以上
過去に交付決定あり加点項目(任意)給与年平均成長率3.5%以上+最低賃金+30円以上

まとめ:変わったことと変わっていないこと

変わったこと:

  • 名称が「IT導入補助金」→「デジタル化・AI導入補助金」に
  • 事業名が「サービス等生産性向上IT導入支援事業」→「中小企業デジタル化・AI導入支援事業」に
  • ソフトウェアの定義に「AIを含む」が明記
  • 加点項目に「省力化ナビ」が追加
  • 賃上げ計画の目標水準が引き上げ

変わっていないこと:

  • 枠構成(通常枠・インボイス枠・セキュリティ枠・複数社連携枠)
  • 補助額・補助率の金額
  • IT導入支援事業者との共同事業体の仕組み
  • ITツールの事前登録制度
  • インボイス枠のハードウェア補助の内容

制度の大枠は変わっていないからこそ、細かい変更点の見落としが申請時のリスクになります。特に過去に交付決定を受けた企業が再申請を検討する場合は注意が必要です。

当事務所では、補助金制度の活用に関するご相談を承っています。「自社にどの補助金が合うのか」「申請準備として何をすべきか」といった点から整理したい方は、お気軽にお問い合わせください。

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