補助金獲得の鍵!公募要領解読マニュアル:必読の5つのポイント

補助金獲得の鍵!公募要領解読マニュアル:必読の5つのポイント

はじめに

国の補助金、市区町村の補助金、各種団体が行う補助金など、補助金の種類はさまざまですが、どの補助金を活用いただくにあたっても、公募要領の理解は必要不可欠です。
しかし、公募要領は公的な文章ですので、どうしても補助金に慣れていない方にとっては非常に長く、読みづらい、理解しづらいものであることが多いというのが実情です。
そのため、この記事では、公募要領を効果的に解読する方法を、5つの重要なポイントに焦点を当ててご説明いたします。

公募要領とは?

「公募要領」は、一言でいうと「補助金の説明書」のようなものです。公募要領を読むことで、補助金の目的を始め、申請が可能な事業者の要件(条件)、補助金の対象となるもの、補助金の対象とならないもの、スケジュール、申請に必要な書類、審査項目などを理解することができます。

言い方を変えると、公募要領を理解せずに「出せば通るだろう」と申請をしても、採択を目指すことは難しいですし、たとえ採択を受けても不備があって補助金がなかなか振り込まれない(場合によっては補助対象外となってしまう)ということも十分に考えられます。

補助金の申請支援を行うコンサルタントは多くいますが、細かいことはコンサルタントが理解していれば良いというわけでは決してありません。多くの補助金の原資は税金です。正しく効果的に活用いただくためにも、必ず公募要領を読んでご理解いただくことをおすすめします。(当事務所でも、少額の補助金であっても申請に当たっては必ず事業者様と公募要領の読み合わせを行わせていただいております)

以下、具体的な公募要領を見ながらご理解いただくほうがわかりやすいと思いますので、「商工会議所地区 小規模事業者持続化補助金(一般形)第14回公募」の公募要領を例としてご説明いたします。

公募要領のチェックポイント1 – 申請要件の把握

各種補助金には申請要件が定められています。この要件を満たしていない場合は、どんなに素晴らしい事業計画を提出しても補助金が採択されることはなく、無駄な申請となってしまいます。そのため、必ず自社が当てはまるかどうかをご確認ください。申請要件は複数定義されていることが多いため、かならず全ての要件に目を通すようにしてください。

例えば中小企業向けの補助金であって、自社が中小企業の定義に当てはまっていても、株主に大企業が含まれている場合は補助対象外ということもあります。(みなし大企業)

また、過去に同一の代表が同一の補助金を利用している場合は、別の法人であっても同一法人が利用済という判断となり、申請をできないという場合もあります。(みなし同一法人)

公募要領:補助金の申請要件

公募要領のチェックポイント2 – 補助対象の確認

自社が補助金の対象となることを無事確認できましたら、次に何が補助金の対象となるのか(補助対象経費)、いくら補助金がもらえるのか(補助率・補助上限額)を確認します。

補助対象経費

どの経費が補助対象となり、何が補助対象外となるのかの詳細な説明が、どの公募要領においても必ず記載されています。補助金の活用を検討されている事業者様においては、一番重要な個所かもしれません。

補助金によっては「機械装置費」は対象になっても「器具備品」は対象外の場合があります。また「機械装置」1台についても、見積を取るとさまざまな項目が記載されていますが、そのうち「運送費」や「据付費」は対象になっても「トレーニング費」「保守費用」「マニュアル費」、設備と共に一緒に納品された「消耗品」などは対象外となる場合が多くみられます。

他、「ソフトウェア」が対象の場合、ソフトウェア本体の費用のみが対象で「保守費用」は対象外となることが多いです。サブスクリプション形式の場合は補助対象金額が「1年間分」の場合や「事業実施期間中のみの料金のみ対象」となる場合など、さまざまですので、細かい部分ですがご注意ください。

また機械装置もソフトウェアも「新規購入」は対象となっても「既に導入済みの機械(ソフト)のカスタマイズ(アップデート)」は対象外となることがあります。

公募要領:補助金の補助対象経費

持続化補助金の場合は、「広報費」とひとくくりに言っても、「取組の対象となる製品やサービス」に関する広報費が対象となり、「自社(申請事業者)」についての広報費は対象外となっています。

このように「経費区分」としては補助対象となりそうだと思っても、よくよく読んでみると対象外という場合が多くあります。しっかりとご確認いただければと思います。

補助率・補助上限額

「ではいくら補助金を貰えるのか」というのもまた、事業者様にとって重要な観点かと思います。
補助金は一般的には補助率が設定されており、その範囲内で補助を受けることができます。(たまに補助率が10/10、すなわち全額補助という補助金もあります)

下図の持続化補助金の例だと、通常枠の補助率は2/3で、補助上限額は50万円です。
これは「かかった費用のうち、2/3を国が補助します。残りの1/3は自社で負担してください。60万円の費用が発生した場合は40万円補助金が出ます。例え90万円の費用が発生したとしても、2/3の60万円を補助することは出来ず、50万円が上限となります」という意味です。申請すれば必ず50万円がもらえるというわけではありませんので、ご注意ください。

一般的には消費税はこの計算に含まれず、消費税部分は全額自腹となります。補助金が出るからとあれもこれもと買おうとしたら、消費税分が思いのほか大きかったという話も時折聞きます。

補助金の補助率・補助上限額

公募要領のチェックポイント3 – 事業計画書に盛り込むべき内容(審査基準の理解)

一般的な補助金は、申請に際して補助金で何をしたいのか(補助事業)について、「事業計画書」を作成し提出することが求められます。

補助金は助成金のように「申請要件を満たせばだれでも利用できる」のではなく、この事業計画書を審査員が審査し、審査の上で選ばれた(採択された)事業者が利用することができます。

つまり、「他社よりも素晴らしい(国として応援したい)」事業計画を作成する必要があります。ここでいう「素晴らしい」というのは、オリジナリティに溢れた唯一無二の事業計画ということではありません。では具体的に何をもって審査員は審査しているかというと、それも公募要領にしっかり記載されています。

事業の目的

事業計画作成にあたって、まず最初に必ず確認いただきたいのは、「事業の目的」、つまり、その補助金は誰のどんな課題(問題)を解決することを目的としているのかについてです。補助金で行う取組は、必ずこの目的と一致している必要があります。

公募要領:事業の目的

この公募要領の例ですと、「小規模事業者等が取り組む販路開拓等の経費の一部を補助することで、地域の雇用や産業を支える小規模事業者等の生産性向上と持続的発展を図ることを目的とします」と書かれています。

このため、事業計画書には「自社は地域の雇用や産業を支える事業者であること」「補助金で行う取り組みは、販路開拓に関する取組であること」「その結果、生産性向上や持続的発展が見込まれること」をアピールする必要があるのだなということがおおまかに理解できます。

補助対象事業

次に公募要領をもう少し読み進めていくと、補助対象となる事業(取組)は具体的に何であるのかの説明があります。「補助金の目的」をより具体的に掘り下げた項目と考えていただければと思います。

公募要領:補助対象事業

持続化補助金の場合はまず「販路開拓等の取組であること」と書かれています。販路開拓の方法はさまざまです。「新規顧客を獲得する」のか「新たな販売方法を開拓する」のか、何を目的として、どんな取り組みを行うのかを具体的に説明する必要があることがわかります。

補助金によっては、具体的な取組の例がいくつか記載されています。「審査員に選ばれる事業計画」となるには、取り組み例をそのまま書くのでは弱い(例をそのまま計画書としてもごく一般的な取組にしかならず、優れた計画とはなかなか判断されづらい)ことも多いのですが、具体的イメージを掴むためにはぜひご参考いただければと思います。

審査の観点

公募要領を更に読み進めていくと、審査員がどんな観点で審査を行うのかがそのものずばり記載されています。公募要領の後半の方に書かれていることが多いため、なかなかここまで読まれない方も多いのですが、非常に重要です。この内容は公募毎に少しずつ変わることも多いため、たとえ昨年採択を受けた事業計画書であっても、それをそのまま新たな取組用に書き換えれば採択を受けられるとは限りません。

公募要領:審査の観点

持続化補助金においても、このように具体的に審査の観点が書かれているため、「自社の経営状況」「自社の製品・サービスの強み」「自社の強み」「経営方針」「経営目標」「今後のプラン」「計画と自社の強みの関連性」「対象とする市場の特性」を事業計画に盛り込む必要があるのだな、といったことを読み取ることができます。

このように公募要領のさまざまな個所を読み進めていくことで、事業計画書の骨子が浮かび上がってくるかと思います。

公募要領のチェックポイント4 – スケジュールの確認

補助金は常時利用できるわけではなく、補助金毎に定められたスケジュールに従って進める必要があります。場合によっては、補助金が出るからと定められたスケジュールに従って行うよりも、全額自費であったとしても一刻も早く取り組むべき取組もあります。行いたい取組が補助金のスケジュールに合わせることができるかどうかを、必ずご確認ください。

公募締切

公募要領には、必ず公募期間(申請期間)について記載がされています。いつまでに申請する必要があるのか、申請方法は郵送なのか電子申請なのかを確認した上で、締め切りから逆算して準備を進める必要があります。

公募要領:公募締切

補助事業実施期間

事業計画に記載した取り組みを、いつからいつの間に取り組む必要があるのか、補助事業実施期間の項目で確認をすることができます。

公募要領:補助事業実施期間

この持続化補助金の例だと、採択発表日から2024年8月31日までの間に行った取組(発注・納品・支払のワンセット)が補助対象となります。また、取組の結果は2024年9月10日までに報告書によって報告することということも定められています。

この期限を無視して事前に発注したものや、この期間内に支払ができなかったもの、報告書を出さなかった場合などについては全て補助金を受けることはできませんのでご注意ください。

補助事業の流れ

公募要領:補助金の流れ

補助事業は申請してから補助金が入金されるまで、さまざまなステップがあります。
持続化補助金の場合は、

  1. 計画書を作成したら商工会議所(商工会)に持ち込み、事業支援計画書を作成してもらう
  2. 申請書類を提出する
  3. 採択発表で、自社が採択されていることを確認する
  4. 補助事業を実施する(計画書に記載していたものの契約(発注)~納品~支払いまで実施)
  5. 実績報告書(事業の完了報告書)を提出する
  6. 報告書を基に最終的な補助金額が確定する
  7. 補助金支払の請求を行う(振込先の口座番号等を伝える)
  8. 補助金が入金される
  9. 1年後、その後の状況報告を行う

という流れとなります。どの補助金も一般的には後払いであり、最初は全額自社で支払う必要があります。自腹は1/3で良いとはいってもそれは最終的な話であり、一度は全額支払うための資金が必要ですので、ご注意ください。

また補助金を受け取った後はそれで終わりではなく、この場合のようにその後の状況報告を1~5年程度求められることが一般的です。この報告を行わなかった場合には補助金の返還を求められることもありますので、事務局から報告依頼があった場合には忘れずに報告を行いましょう。

また補助金によっては、採択後にあらためて「交付申請」(具体的に何を購入したいのか、見積書や相見積書などを添えて申請)や面接を実施したり、事業開始後も中間検査(事務局が事業の進行状況をオンラインや現地訪問にて確認)を行う場合があります。補助金によってさまざまですので、しっかり確認を行いましょう。

公募要領のチェックポイント5 – 申請時に必要な書類等や加点項目の確認

最後に確認をしておきたいのは、申請の際に必要となる書類等や、補助金を優先して採択を受けるための加点項目についてです。

申請時に必要な書類等の確認

申請に際して必要な書類等を確認します。事業計画書は様式が決められていて事務局ホームページからダウンロードできる場合や、フリーフォーマットの場合、その合わせ技(指定の様式に記載した上で、補足を添付資料で行う場合)など様々です。

補助金によって履歴事項全部証明書(法務局で取得)や法人税/所得税の納税証明書(税務署で取得)など、時間を割いて取りに行かなければならない書類などありますので、何が必要なのかは早めにご確認いただくことをおすすめします。

【参考】別紙「応募時提出資料・様式集」

公募要領:申請時提出書類

加点項目の確認

せっかく補助金を申請するのであれば、採択されたいというのが当たり前です。
多くの補助金では、加点(文字通り、審査員による審査結果(点数)に点数が追加される)項目が用意されています。下図は持続化補助金ではなくものづくり補助金のデータですが、加点が0個の場合の採択率と、加点を複数取った場合の採択率が大きく違うことがご理解いただけるかと思います。

公募要領:加点のススメ
参考:ものづくり補助金総合サイト

持続化補助金においても、いくつかの加点が設けられています。中には数日~数週間程度で要件を満たすことができる加点が用意されていることもあります(特定の計画を国に提出して認定を受けるなど)ので、自社が獲得できる加点については積極的に獲得していただくことをお勧めします。

公募要領:加点項目

最後に

このように、公募要領は一見言葉は難しく複雑に見えても、理解することで採択の確立を大幅に上げることができるさまざまな役立つ情報が詰まっています。

これらのポイントを踏まえながら公募要領を読み進めることで、ぜひ積極的に補助金を活用いただければと思います。

中小企業診断士+2児の母。 もともとはIT系を得意としていたはずが、補助金の申請支援のご希望が多いため、最近はすっかり補助金支援専門家になりつつありますが、どんなご相談でも歓迎です。1件1件について常により良い結果を目指し、全力で事業者様をご支援しております。