観光地・観光産業における人材不足対策事業の公募が開始します(締切:2025年5月30日)

2025年3月10日に、観光地・観光産業における人材不足対策事業の公募要領が公開されました。
この補助金は、人手不足が顕著な宿泊業にスポットをあて、宿泊施設が実施する人手不足の解消に向けた機械化・DX化推進のための設備投資を支援をするものです。
本記事では、対象となる宿泊事業者がスムーズな申請に繋げられるようにするために、補助金の制度についてわかりやすく説明いたします。

観光地・観光産業における人材不足対策事業の概要

観光地・観光産業における人材不足対策事業は、近年、宿泊業ではインバウンドをはじめとする観光需要の急速な回復に伴い人手不足が顕著となっていることから、今後更なる増加が見込まれる観光需要を着実に取り込み、地方への旅行者数・旅行消費額等の増加といったインバウンドによる経済効果を最大限にするためにも、受け皿となる宿泊業の人手不足の解消に向けた取り組みを支援するものです。

観光地・観光産業における人材不足対策事業の活用イメージ

このため、本補助金の補助対象者は、宿泊事業者に限定されます。

観光地・観光産業における人材不足対策事業のスケジュール

観光地・観光産業における人材不足対策事業の申請は、2025年3月24日(月)~2025年5月30日(金)17時の間で受付が行われます。
二次公募以降の情報は公開されていませんが、2024年は4次公募まで実施されました。とはいえ、補助金は基本的に予算が潤沢な最初の方が採択率は高い傾向にありますので、利用したい事業者は早めに申請することをお勧めします。

手続きの流れは下記のとおりです。補助金の対象となるのは、交付決定後に発生した費用(契約・発注~支払の一連の取組)のみが対象となります。事前に契約したものや既に購入したものなどは補助対象とはなりませんのでご注意ください。

観光地・観光産業における人材不足対策事業のスケジュール

観光地・観光産業における人材不足対策事業の申請要件

観光地・観光産業における人材不足対策事業で対象となるのは、下記全ての要件を満たす宿泊事業者です。

要件
要件①:旅館業法第3条第1項に規定する許可を受けた宿泊事業者
要件②:下記いずれかの要件を満たす事業者
宿泊業の高付加価値化のための経営ガイドラインの登録を受けた方、又は同制度の登録申請をされた方
・上記申請をしていないが、有価証券報告書を内閣総理大臣に提出する会社又はその関連会社であり、かつ観光施設における心のバリアフリー認定制度の認定を取得済み又は 1 年以内に取得予定である方
要件③:地域(DMO、地方公共団体等)と連携し、地域一体での求人活動等、人手不足解消のための具体的な取組を行っていること

第三条 旅館業を営もうとする者は、都道府県知事(保健所を設置する市又は特別区にあつては、市長又は区長。)の許可を受けなければならない。ただし、旅館・ホテル営業又は簡易宿所営業の許可を受けた者が、当該施設において下宿営業を営もうとする場合は、この限りでない。
(旅館業法第3条第1項)

なお、旅行業法第2条では、旅行業を下記のように定義しています。

第二条 この法律で「旅館業」とは、旅館・ホテル営業、簡易宿所営業及び下宿営業をいう。
2 この法律で「旅館・ホテル営業」とは、施設を設け、宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業で、簡易宿所営業及び下宿営業以外のものをいう。
3 この法律で「簡易宿所営業」とは、宿泊する場所を多数人で共用する構造及び設備を主とする施設を設け、宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業で、下宿営業以外のものをいう。
4 この法律で「下宿営業」とは、施設を設け、一月以上の期間を単位とする宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業をいう。
5 この法律で「宿泊」とは、寝具を使用して前各項の施設を利用することをいう。
(旅行業法第2条)

このため、旅館、ホテル、民宿、カプセルホテル、簡易宿所営業として許可を受けた民泊などが対象になるかと思います。

補助事業を実施する宿泊施設の所有者と運営者が異なる場合においては、宿泊事業者でない者も、当該宿泊施設を所有又は運営する宿泊事業者と運営委託関係又は賃貸借関係等にある場合に限って、補助対象事業者になり得るとしています。ただし、補助事業を実施する宿泊施設の所有者又は運営者のどらかが旅館業法(昭和 23 年法律第 138 号)第 3 条第 1 項に規定する許可を受けていることが必要です。

宿泊業でも補助対象外となる要件

  • 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(昭和23年法律第122号)第2条第6項に規定する店舗型性風俗特殊営業を営む者である
  • 住宅宿泊事業法(平成29 年法律第 65 号)第 3 条第 1 項に規定する住宅宿泊事業を営む者である
  • 本補助金で申請する設備について、国や地方自治体の補助金を重複して受けている(または受ける)
  • 申請時点で未開業である
  • 申請時点で休業中であり、完了実績報告時までに再開しない
  • 申請時点で閉業・売却・営業許可の承継の予定がある
  • 補助事業により人手不足の解消が見込まれない

観光地・観光産業における人材不足対策事業の補助金額・補助率

観光地・観光産業における人材不足対策事業の補助金額・補助率は、下記のとおりです。
1事業者(法人・個人)あたり3施設を上限とし、複数施設についての申請が可能です。

補助上限額補助率
1施設あたり500万円1/2

観光地・観光産業における人材不足対策事業の補助対象経費

観光地・観光産業における人材不足対策事業で補助対象となるのは、下記経費です。

月額・年額で使用料金が定められている形態の製品(システムのサブスクリプション販売形式等)
及びその保守は、最大 2 年分の費用が補助対象となります。

また、「中小企業省力化投資補助金(カタログ注文型)」のカタログに掲載されている製品で、かつ申請事業者が省力化投資補助金の申請要件を満たしている場合は、対象製品の本体価格・導入関連費については補助対象外となります(省力化投資補助金を申請してほしいということかと思います)。

区分A:特定製品

宿泊施設における下記システム、設備及び備品の購入、導入及び設置に要する経費(システム、設備及び備品の購入、導入及び設置に附随する経費を含む。)

※印の製品については、省力化投資補助金のカタログに掲載されている可能性があるため、事前にご確認ください。

  • 自動チェックイン機 ※
  • スマートロック・カードロック
  • 施設内情報表示システム
  • 翻訳・通訳システム
  • POS レジ
  • 電子宿帳システム
  • キャッシュレス決済端末
  • PMS(ホテル管理システム)
  • PMS(ホテル管理システム)オプション
  • 宿泊予約システム
  • サイトコントローラー
  • チャットボット
  • SMS 送信サービス
  • レベニューマネジメント
  • 会計ソフト
  • 清掃ロボット ※
  • コンドルポリシャー(床洗浄機)
  • 清掃管理システム
  • オゾン脱臭機
  • インカム・無線通信機
  • 監視カメラ
  • 温度管理システム
  • ビジネス電話システム
  • 混雑状況可視化システム
  • 労務管理システム
  • 在庫管理システム
  • スチームコンベクションオーブン ※
  • オーダーシステム
  • 冷凍庫
  • 真空包装機
  • 配膳ロボット ※
  • 小荷物専用昇降機

区分B:それ以外の投資

A 以外で、宿泊施設において実施する人手不足の解消に資するシステム、設備及び備品の購入、導入及び設置に要する経費(システム、設備及び備品の購入、導入及び設置に附随する経費を含む。)
※ 宿泊施設の運営に必要不可欠である人手不足の解消に資する設備・備品に限る

観光地・観光産業における人材不足対策事業の申請に必要な書類等

観光地・観光産業における人材不足対策事業の申請にあたって必要となるものについては、下記のとおりです。「宿泊業の高付加価値化のための経営ガイドライン」と「有価証券報告書等」についてはいずれか一方の提出が必須です。

様式名概要
事業計画書申請システムにて記入
設備等導入前の写真任意様式で作成し提出
旅館業法上の営業許可証の写し地方公共団体が交付する許可証等の写し
見積書(2者以上)導入を予定している設備・備品等のカタログで、省エネ効果が明示されているものを添付
宿泊業の高付加価値化のための経営ガイドライン(登録番号または登録申請送信メールの写し)任意様式
・有価証券報告書
・観光施設における心のバリアフリー認定制度(取得計画表または認定通知書の写し)
任意様式
見積書・相見積書見積書には可能な限り「一式」のようなまとめた表現を用いないこと
一社分しか提出できない場合は、相見積もり書の代わりに選定理由書を提出すること
カタログ等導入予定の設備等の概要が明示されているもの
【任意提出】その他、申請内容を補足する参考資料
【該当時】宿泊施設の運営委託関係又は賃貸借関係等を示す証跡補助事業を実施する宿泊施設の所有者と運営者が異なる場合
【該当時】履歴事項全部証明書「中小企業省力化投資補助金」の補助対象者の要件を満たさない事業者が、「中小企業省力化投資補助金」のカタログ(令和 7年 3 月 10 日時点)に記載されている商品を補助対象として計画申請する場合は提出
優先採択:【資料 A】宿泊施設の損益管理実態が分かる資料令和6年4月1日から令和7年5月30日までの期間内の1カ月分。
売上と費用の月次(週次)目標を設定し、当月実績と比較して、達成度合いを管理している資料を理想とするが、売上と費用の実績を管理していることが分かる資料の提出で代用可。
優先採択:【資料 B】集客促進を目的とした顧客情報の管理や統計分析等を実施していることが分かる資料令和6年4月1日から令和7年5月30日までの期間内の1カ月分以上。
公式HPや公式SNSのインサイトにて閲覧数等の統計を管理している資料を理想とするが、マーケティング戦略を構築する際に利活用する顧客属性(アンケートや予約情報から集計した情報)を Excel や
PMS 上で集計・グラフ化していることが分かる資料の提出で代用可。

提出する資料や、満たす要件、申請の速さによって順次優先的に審査が行われていきます。
出来る限り優先採択される方法で申請が行えるとベストです。

宿泊施設サステナビリティ強化支援事業の審査方法

さいごに

省力化投資補助金(カタログ型)と補助対象が重複するため少しややこしい感じもしますが、基本的に省力化投資補助金の方が手続きが簡単で、販売店からの支援も受けられるため、検討中の製品が省力化投資補助金のカタログに掲載されている場合は、迷わず省力化投資補助金をご利用ください。(省力化投資補助金カタログ型は常時申請を受け付けています)

省力化投資補助金のカタログに掲載されていない製品も数多くありますので、そちらを導入したいという場合には、この観光地・観光産業における人材不足対策事業を活用いただければと思います。

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