2025年3月27日に、観光地・観光産業におけるユニバーサルツーリズム促進事業の公募要領が公開されました。
この補助金は、今後増加が見込まれる高齢者等に対し、ユニバーサルツーリズム(誰もが気兼ねなく参加できる旅行)実現のための費用を支援をするものです。
本記事では、対象となる民間企業がスムーズな申請に繋げられるようにするために、補助金の制度についてわかりやすく説明いたします。
目次
観光地・観光産業におけるユニバーサルツーリズム促進事業の概要
宿泊施設サステナビリティ強化支援事業は、観光施設や宿泊施設のバリアフリー化を一層推進してユニバーサルツーリズムを促進する事業を行うことで、国内における新たな交流市場を開拓するとともに、観光地・観光産業の収益性の向上を図ることを目的とするものです。
そのため、高齢者等が気兼ねなく旅行に参加できる環境を整備し、ユニバーサルツーリズムを促進するために、観光施設や宿泊施設のバリアフリー化に必要な施設整備や設備導入等について支援を受けることができます。

観光地・観光産業におけるユニバーサルツーリズム促進事業のスケジュール
観光地・観光産業におけるユニバーサルツーリズム促進事業の申請は、2025年4月10日(木)~2025年5月16日(金)17時の間で受付が行われます。
手続きの流れは下記のとおりです。補助金の対象となるのは、交付決定後に発生した費用(契約・発注~支払の一連の取組)のみが対象となります。事前に契約したものや既に購入したものなどは補助対象とはなりませんのでご注意ください。

観光地・観光産業におけるユニバーサルツーリズム促進事業の補助対象事業者
観光地・観光産業におけるユニバーサルツーリズム促進事業で対象となるのは、下記の宿泊事業者または観光事業者です。まだ現時点で宿泊事業・観光事業を営んでいない場合でも申請要件を満たすことは可能です。
補助対象事業者 | 概要 |
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宿泊事業者 | 旅館業法(昭和 23 年法律第 138 号)第3条第1項に規定する許可を受けた者および申請予定者 ※旅館業法許可の申請予定者については、事業完了実績報告時までに許可証の提出すると共に、公募申請時に許可証取得までのスケジュールを別途提出 |
観光事業者 | 観光施設を所有または運営する者および開業予定者 ※法人の場合は、登記事項証明書等を交付申請時に提出 ※個人事業主の場合は、納税証明書、確定申告書、開業届等、事業目的が確認できる証憑を公募申請時に提出 ※開業予定者については、事業完了実績報告までに上記証明書等を提出 |
旅館業法(昭和 23 年法律第 138 号)第3条第1項については下記のとおりです。
第三条 旅館業を営もうとする者は、都道府県知事(保健所を設置する市又は特別区にあつては、市長又は区長。)の許可を受けなければならない。ただし、旅館・ホテル営業又は簡易宿所営業の許可を受けた者が、当該施設において下宿営業を営もうとする場合は、この限りでない。
(旅館業法第3条第1項)
なお、旅行業法第2条では、旅行業を下記のように定義しています。
第二条 この法律で「旅館業」とは、旅館・ホテル営業、簡易宿所営業及び下宿営業をいう。
2 この法律で「旅館・ホテル営業」とは、施設を設け、宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業で、簡易宿所営業及び下宿営業以外のものをいう。
3 この法律で「簡易宿所営業」とは、宿泊する場所を多数人で共用する構造及び設備を主とする施設を設け、宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業で、下宿営業以外のものをいう。
4 この法律で「下宿営業」とは、施設を設け、一月以上の期間を単位とする宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業をいう。
5 この法律で「宿泊」とは、寝具を使用して前各項の施設を利用することをいう。
(旅行業法第2条)
このため、旅館、ホテル、民宿、カプセルホテル、簡易宿所営業として許可を受けた民泊などが対象になるかと思います。
観光地・観光産業におけるユニバーサルツーリズム促進事業の補助対象施設
観光地・観光産業におけるユニバーサルツーリズム促進事業で補助対象となるのは、下記の施設で、1事業者あたり3施設まで対象とすることが可能です。
施設分類 | 施設例 |
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宿泊施設 | ホテル、旅館、ゲストハウス、民宿等 |
観光施設 ①文化施設 | 博物館、美術館、水族館、植物園、動物園、資料 館、公園・庭園、展示場等 |
観光施設 ② 歴史施設 | 遺跡、名所・旧跡、城郭、歴史的建造物等 |
観光施設 ③ 娯楽施設 | テーマパーク・遊園地、観光農園・牧場、レジャ ーランド、海水浴場、スキー場、スポーツ施設、 郷土芸能関連施設、展望台等 |
観光施設 ④ 食事買物施設 | お土産店、農産物直売所・食堂、レストラン、道 の駅等 |
観光施設 ⑤ 温泉施設 | 温泉、共同浴場、クアハウス、足湯等 |
観光施設 ⑥ その他施設 | 体験施設、観光案内施設、その他 |
自治体所有の施設、高速道路のサービスエリア、主に住民が利用するコンビニ・スーパー・ショッピングセンターは補助対象外となります。
観光地・観光産業におけるユニバーサルツーリズム促進事業の補助対象事業
補助の対象となる事業は、上記施設で行う下記のいずれかの取組です。
補助対象事業 | 概要 |
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① 施設改修 | 施設共用部における施設改修が対象 【整備内容例】 出入口、廊下、傾斜路、エレベーター、トイレ、駐車場、浴室・案内表示等のバリアフリー整備(段差解消・スロープ設置、幅員確保等)、授乳室、キッズルーム、貸し切り浴室、個室あるいは簡易的な仕切りの設置等、自家発電機の導入、防火シャッターの更新等 |
② 客室改修【A:車椅子使用者用客室整備】 | 宿泊施設が行うバリアフリー法に定められる「車椅子使用者用客室」の水準を満たすための施設整備 |
② 客室改修【B:一般客室整備】 | 宿泊施設が行うバリアフリー法に定められる「一般客室」の水準を満たすための施設整備 |
③ 備品購入 | ①または②と共に行う可搬性のあるもの(設置工事を伴わないもの)の導入 【例】 貸出用車椅子、浴槽用手すり、おむつ交換台、電動ベッド、折り畳み式スロープ等 |
①②は、バリアフリー法等の関係法令や高齢者、障害者等の円滑な移動等に配慮した建築設計標準等のバリアフリー化に関する基準を踏まえた改修内容であることが条件となります。
また、③は、ユニバーサルツーリズムに資する備品導入であることが条件となります。
観光地・観光産業におけるユニバーサルツーリズム促進事業の補助金額・補助率
観光地・観光産業におけるユニバーサルツーリズム促進事業の補助率は1/2は、補助上限額は下記のとおりです。
補助上限額に応じて申請枠が異なります。
申請枠 | 補助上限額 |
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グループ A(大規模枠) 自治体と防災協定を締結する宿泊事業者 | 3,000 万円 (うち、「③備品購入」は 500 万円まで) |
グループ A(大規模枠) 上記以外の事業者 | 1,500 万円 (うち、「③備品購入」は 250 万円まで) |
グループ B(小規模枠) | 750 万円 (うち、「③備品購入」は 250 万円まで) |
観光地・観光産業におけるユニバーサルツーリズム促進事業の補助対象経費
観光地・観光産業におけるユニバーサルツーリズム促進事業で補助対象となるのは、下記経費です。
補助対象経費 | 例 |
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① 施設改修 | 建設工事費、設計費等 |
② 客室改修 | 建設工事費、設計費等 |
③ 備品購入 | 設備導入に係る物品購入費等 |
観光地・観光産業におけるユニバーサルツーリズム促進事業の申請に必要な書類等
申請に必要な書類については、別途「公募申請の手引き」で案内があるとのことです。
さいごに
ユニバーサルツーリズムは「誰もが気兼ねなく参加できる旅行」を意味しますので、高齢者に限らず、子供連れの家族や障害をお持ちの方など、誰もにとって意味の高い取り組みだと思います。
時期的には、バブル期のころなどに作られた施設などでは老朽化が進んでいるところも多いのではないでしょうか。ぜひこのような補助金を活用いただくことで、新しい施設も昔ながらの施設も、いずれにおいても気兼ねなく利用できるような場所としていただけたらと思います。