事業承継・M&A補助金12次の公募が開始しました(締切:2025年9月19日)

2025年7月18日より、事業承継・M&A補助金の12次公募が開始しました。
この補助金は、事業承継やM&Aの際に発生する様々な費用について補助するものです。11次ではM&Aの際の仲介手数料が補助対象となる「専門家活用枠」のみの申請が行われていましたが、12次では、家族や従業員への事業承継に伴い発生する経費を補助する「事業承継促進枠」と、M&A後の経営統合・事業統合の際のコンサルタントフィー等を補助する「PMI枠」、新たな取組のために既存事業を廃業するための費用を補助する「廃業・再チャレンジ」全ての申請枠について利用が可能です。
本記事では、対象となる中小企業がスムーズな申請に繋げられるようにするために、補助金の制度についてわかりやすく説明いたします。

事業承継・M&A補助金の概要

事業承継・M&A補助金の目的は下記の通りです。

中小企業生産性革命推進事業 事業承継・M&A 補助金は、中小企業者及び個人事業主が事業承継、事業再編及び事業統合を契機とした取り組みを行う事業等について、その経費の一部
を補助することにより、事業承継、事業再編及び事業統合を促進し、生産性向上による我が国経済の活性化を図ることを目的とする。

(事業承継・M&A補助金公募要領より)

申請枠が4つに分かれており、それぞれ補助対象となる取組および経費が異なりますので、自社にとって適切な申請枠を選択する必要があります。併願が可能な枠と、別の公募回で個別に申請をしなければならない枠とがありますので、申請枠の組み合わせにもご留意ください。

事業承継・M&A補助金の申請枠

事業承継促進枠

親族内承継や従業員承継等の事業承継予定の後継者が中心となって取り組む、生産性向上に資する設備投資等を支援する枠です。

専門家活用枠

買い手支援類型(Ⅰ型)

事業を譲り受ける予定の中小企業等が、M&Aを進めるにあたって専門家を活用する際の費用(仲介手数料やDD費用等)の一部について補助を受けることが出来る枠です。

売り手支援類型(Ⅱ型)

事業を譲り渡す予定の中小企業等が、M&Aを進めるにあたって専門家を活用する際の費用の一部について補助を受けることが出来る枠です。

PMI推進枠

事業を譲り受けた又は譲り受ける予定であって、PMI を実施する中小企業者等が、PMI に係る専門家を活用する際の費用の一部について補助を受けることができる枠です。

廃業・再チャレンジ枠

事業の一部を廃業し、新たな取組を行う場合に、廃業のための費用の一部について補助を受けることが出来る枠です。単独申請の場合と、他の枠との併願の場合とで、補助対象となる廃業が異なりますのでご留意ください。

単独申請の場合

M&Aによって事業を譲り渡せなかった中小企業者等の株主や個人事業主が、地域の新たな需要の創造または雇用の創出にも資する新たなチャレンジをするために既存事業を廃業する場合の費用が対象となります。単なる廃業ではなく、新たな取組に紐づくものである必要があります。

併願申請の場合

  • 事業承継促進枠との併用申請:事業承継によって事業を譲り受けた中小企業者等が、新たな取り組みを実施するにあたって、既存の事業あるいは譲り受けた事業の一部を廃業する際の費用が対象となります。
  • 専門家活用枠(買い手支援類型)との併用申請:M&A によって事業を譲り受ける中小企業者等が、事業を譲り受けるにあたって、既存の事業あるいは譲り受けた事業の一部を廃業する際の費用が対象となります。
  • 専門家活用枠(売り手支援類型)との併用申請:M&A によって事業を譲り渡す中小企業者等が、M&A 後も手元に残った事業を廃業する際の費用が対象となります。
  • PMI 推進枠との併用申請:M&A 後の統合等において、既存の事業あるいは譲り受けた事業の一部を廃業する際の費用が対象となります。

事業承継・M&A補助金の申請枠別補助対象経費

申請枠補助対象経費
事業承継促進枠設備費、産業財産権等関連経費、謝金、旅費、外注費、委託費
専門家活用枠謝金、旅費、外注費、委託費、システム利用料、保険料
PMI推進枠謝金、旅費、委託費
廃業・再チャレンジ枠廃業支援費、在庫廃棄費、解体費、原状回復費、リースの解約費、(併願の場合のみ+移転・移設費)

事業承継・M&A補助金の申請可能な組み合わせ

組み合わせ事業承継促進枠専門家活用枠(買い手)専門家活用枠(売り手)PMI推進枠廃業・再チャレンジ枠
事業承継促進枠×××
専門家活用枠(買い手支援類型)×
専門家活用枠(売り手支援類型)××
PMI推進枠××
廃業・再チャレンジ枠〇(いずれか)〇(いずれか)〇(いずれか)〇(いずれか)

事業承継・M&A補助金の流れ

事業承継・M&A補助金の流れは、下記の通りです。

補助金の対象となるのは、交付決定後に発生した費用(契約・発注~支払の一連の取組)のみが対象となります。事前に契約・発注したものなどは補助対象とはなりませんのでご注意ください。

事業承継・M&A補助金の補助金額・補助率

補助金額・補助率は、下記のとおりです。

申請枠補助上限額補助率
事業承継促進枠800万円
賃上げを行う場合1,000万円
中小1/2・小規模2/3
専門家活用枠(買い手支援類型)600万円
DD費用を申請する場合、別途200万円
2/3
専門家活用枠(売り手支援類型)600万円
DD費用を申請する場合、別途200万円
物価高等の影響により営業利益率が低下、もしくは赤字の場合2/3
それ以外は1/2
PMI推進枠150万円1/2
廃業・再チャレンジ枠150万円単願の場合2/3
併願の場合併願枠に応じる

さいごに

事業承継・M&A補助金は申請枠により補助対象経費が大きく異なり、また申請者の属性により市準備に必要な書類も異なるため、少し複雑に見えるかもしれませんが、事務局の資料も丁寧に作成されているため、公式ホームページの内容を参考に手続きを進めてください。

特に専門家活用枠については、昨年までは基本合意書までやり取りを進めているようなM&Aについても補助対象とされていましたが、今年からはあくまで交付決定後に契約締結した費用についてのみ補助対象となっています。

最新の公募要領を確認した上で、ぜひ活用いただければと思います。

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