中小企業成長加速化補助金の第1回公募要領と申請様式が公開されした。
中小企業成長加速化補助金は、現在の売上が10億以上100億未満の企業が、売上100億を超える企業に成長するための大胆な投資を補助するものです。
今までの延長線上ではなく、一段階上の事業を行うために必要な機械設備や建物費(工場、倉庫、販売施設等)などについて幅広く補助対象となることが特徴です。
本記事では、対象となる企業がスムーズな申請に繋げられるようにするために、中小企業成長加速化補助金の制度についてわかりやすく説明いたします。
目次
中小企業成長加速化補助金の目的
日本経済は、賃上げ率・国内投資ともに30年ぶりの高水準にあり、変化の兆しが現れる中、多くの中小企業は、物価高や人手不足などの経営課題に直面しています。経済の好循環を全国に行き渡らせるためには、中小企業全体の「稼ぐ力」を底上げするとともに、地域にインパクトのある成長企業を創出していくことが重要です。
特に売上高が100億円に及ぶ企業は、一般的に賃金水準が高く、輸出による外需獲得やサプライチェーンへの波及効果も大きいなど、地域経済に与えるインパクトも大きいものとなります。中小企業成長加速化補助金は、こうした観点から将来の売上高100億円を目指して、大胆な投資を進めようとする中小企業の取組を支援することを目的とします。
(「中小企業成長加速化補助金 公募要領」より)
中小企業成長加速化補助金は、地域経済に大きなインパクトを与えるような規模(売上高100億)の中小企業を多く創出するため、その規模への成長を目指す企業の大胆な投資を補助する補助金です。
あくまで【売上100億を目指す企業】を応援するものですので、補助事業期間に100億を達成することまでは求められていませんが、とはいえその成長戦略は絵に描いた餅では足りず、第三者が見て納得感があるものでなければなりません。
会社のビジョンをこの機会にあらためて整理し、取引先や従業員などのステークホルダーに自社の意気込みを知っていただくためにも活用できる補助金であるかと思います。
中小企業成長加速化補助金の活用イメージ
国からは、具体的な活用イメージとして下記が挙げられています。
工場、物流拠点などの新設・増築 | イノベーション創出に向けた設備の導入 | 自動化による革新的な生産性向上 |
”大胆な投資”を期待されていますので、活用方法についてもそれなりの規模のものが想定されています。既存の製造方法を大胆に変更する、流れを大きく変える、人の使い方を大きく変えるなど、今のビジネスモデルを変えるような規模の取組が求められてます。
中小企業成長加速化補助金の事業実施期間
中小企業成長加速化補助金の事業実施期間は、交付決定日から24か月以内となります。
交付決定後に契約・発注が可能となるため、大規模な工事の場合でも24カ月以内に完了し、支払いを終える必要があります。
中小企業成長加速化補助金の事業要件
中小企業成長加速化補助金の対象事業要件は下記のとおりです。
- 補助対象経費のうち建物費・機械装置費・ソフトウェア費の投資額が1億円以上(税抜き)であること
- 補助金の公募の申請時までに補助事業者の100億宣言が100億宣言ポータルサイトに公表がされていること
- 一定の賃上げ要件を満たす今後5年程度の事業計画を策定すること
- 日本国内において補助事業を実施すること
1.補助対象経費のうち建物費・機械装置費・ソフトウェア費の投資額が1億円以上(税抜き)であること
設備投資について、老朽化設備の単なる入れ替えは対象外となります。
事業の実施場所は複数拠点で行うことも可としていますが、取組のテーマは同一である必要があります。
2.補助金の公募の申請時までに補助事業者の100億宣言が100億宣言ポータルサイトに公表がされていること
100億宣言については、下記の記事もご参考ください。
100億宣言申請サイトがまだ公開されていないため、1次公募においては、補助金の公募の申請時に同時に100億宣言の申請を行うことでも要件を満たすことが可能です。
100億宣言を行えるのが売上10億を超えている企業のため、この補助金も必然的に売上10億を超える企業が対象となります。
3.一定の賃上げ要件を満たす今後5年程度の事業計画を策定すること
最大24カ月の事業実施期間(投資活動)を終え、補助金はそのタイミングで支払われますが、そこで終わりではなく、その後5年間の事業計画の策定が必要となります。(投資をいかに売上に繋げて費用回収していくのかという計画です)
また、その計画の際には、合わせて3年間の従業員賃上げ計画の策定が必要です。
補助事業完了年度(全ての投資が完了する年度)を基準とし、事業実施場所の都道府県の最低賃金の成長率を超える賃上げが必要です。ざっくり最低でも毎年3%以上の賃上げが必要となります。(あくまで”最低”なので、採択を目指すとなるともっと意欲的な計画が不可欠になってくるとは思います)
賃上げ計画が達成できなかった場合は、達成できなかった比率に応じて補助金返還が必要となります。
中小企業成長加速化の補助金額・補助率
中小企業成長加速化補助金の補助金額・補助率は、下記のとおりです。
補助率 | 1/2 |
補助上限額 | 5億円 |
中小企業成長加速化補助金の補助対象経費
中小企業成長加速化補助金で補助対象となるのは、下記のとおりです。
対象経費区分 | 概要 |
---|---|
建物費 | 専ら補助事業のために使用される事務所、生産施設、加工施設、販売施設、検査施設、共同作業場、倉庫その他投資計画の実施に不可欠と認められる建物の建設、増築、改修、中古建物の取得に要する経費 ※建物・建物と切り離すことが出来ない建物付属設備・付帯工事(土地造成含む)が対象 ※単なる建物の購入・賃貸・土地代は対象外 ※構築物(門・フェンス・駐車場糖は対象外 |
機械装置費 | ①専ら補助事業のために使用される機械装置、工具・器具(測定工具・検査工具等)の購入、製作、借用に要する経費 ②①と一体で行う、改良・修繕、据付け又は運搬に要する経費 ※「機械及び装置」、「器具及び備品」、「工具」が対象 ※「構築物」、「船舶」、「航空機」、「車両及び運搬具」は補助対象外 ※新規導入とセットでない改修(既存設備の改修など)は対象外 ※「借用」は実施期間中分の費用が対象 |
ソフトウェア費 | ①専ら補助事業のために使用される専用ソフトウェア・情報システム等の購入・構築、借用、クラウドサービス利用に要する経費 ②①と一体で行う、改良・修繕に要する経費 ※「事務機器及び通信機器」、「ソフトウェア」、「電気通信施設利用権」が対象 ※新規導入とセットでない改修(既存システムのアップデートなど)は対象外 ※テーマ外の事業でも利用するものは対象外 ※パソコン・タブレット等の本体費は対象外 |
外注費 | 補助事業遂行のために必要な加工や設計、検査等の一部を外注(請負・委託)する場合の経費 |
専門家経費 | 本事業遂行のために依頼した専門家に支払われる経費 |
となります。
公募要領に補助対象外となる細かい費用についての説明があるため、詳細は公募要領を確認ください。
中小企業成長加速化補助金のスケジュール
中小企業成長加速化補助金の支払い対象となるのは、申請後に審査員による審査を受けて、採択(合格)を受けた企業が、その後事務局に対して見積書等を提出して許可を得た(交付決定を受けた)後の発注分が対象となります。

交付決定を受ける前に発注してしまったものは全て対象外となってしまいますので、特にご注意ください。
中小企業成長加速化補助金の申請に必要な書類等
中小企業成長加速化補助金の申請にあたって準備するものについては、下記のようなものがあります。申請様式はJgrantsからダウンロードできますので、ご確認ください。
おおむね大規模成長投資補助金と似たようなパワーポイントの様式ですが、大規模成長投資補助金と異なり売上100億に向けた具体的な計画が必要となります。
書類名 | 概要 |
---|---|
①投資計画書(様式1_PDF) | 事業計画で最大40ページ |
②投資計画書別紙(様式2_Excel) | 数字計画部分 |
③ローカルベンチマーク(様式3_Excel) | |
④決算書等(3期分_PDF) | 貸借対照表、損益計算書、販売費及び一般管理費の明細、製造業であれば製造原価明細書も必須 |
⑤金融機関による確認書(様式4_PDF) | 金融機関から確認を受けた場合のみ |
⑥リース取引に係る誓約書(様式5_PDF) | リースを利用する場合のみ |
⑦リース料軽減計算書(様式6_PDF) | リースを利用する場合のみ |
さいごに
小規模事業者持続化補助金で小規模企業、ものづくり補助金や省力化投資補助金で小~中規模の中小企業を支援する体制がずっと続いていましたが、昨年から中小企業の中でも規模の大きな企業を支援することで経済の活性化を力強く期待する傾向が見られます。
そのような中で昨年新設された大規模成長投資補助金は、その中でも特に大企業に近いような規模の企業の取組を補助するものでしたが、中小企業成長加速化補助金はその間を埋める補助金となります。申請ハードルも低くなるため競争率は高めになりそうなことと、また、100億宣言との関連性や、プレゼンテーション審査参加が必須となりますので、補助金をもらうための事業計画では採択を目指すことは難しいでしょう。
〆切自体は6月9日と余裕があるようですが、会社のビジョンを整理して40ページの事業計画を作成するとなると、計画書作成自体もかなりの時間・労力が必要となります。申請を検討される場合は、お早目の着手を強くお勧めします。