2025年4月16日に、【全国の観光地・観光産業における観光DX推進事業】の公募要領が公開されました。
この補助金は、「観光地の販路拡大・マーケティング強化/観光産業の収益・生産性向上」に資するデジタルツールの導入支援やDX活用に向けた専門人材による伴走支援するものです。
本記事では、【全国の観光地・観光産業における観光DX推進事業】のうち、「(1)観光地の販路拡大・マーケティング強化」「(2)観光産業の収益・生産性向上」について、対象となる企業等がスムーズな申請に繋げられるようにするために、補助金の制度についてわかりやすく説明いたします。
目次
全国の観光地・観光産業における観光DX推進事業(販路拡大・マーケティング強化/収益・生産性向上)の概要
全国の観光地・観光産業における観光DX推進事業では、インバウンドをはじめとする観光需要の急速な回復を踏まえ、全国的に「稼げる地域・稼げる産業」を実現するため、DXの推進を通じた、コンテンツの販路拡大、予約・在庫管理の最適化による収益・生産性向上に加え、観光地経営の高度化による地域全体の消費拡大、誘客・再来訪促進等を図ることを目的に、デジタルツールの導入支援を行うものです。

「稼げる地域・稼げる産業」を実現するとしているとおり、特定の1事業者のみを対象とするのではなく、地域一丸となっての取組が求められます。
全国の観光地・観光産業における観光DX推進事業のスケジュール
全国の観光地・観光産業における観光DX推進事業の申請は、2025年4月16日(水)~2025年6月6日(金)17時の間で受付が行われます。
手続きの流れは下記のとおりです。補助金の対象となるのは、交付決定後に発生した費用(契約・発注~支払の一連の取組)のみが対象となります。事前に契約したものや既に支払い済のものなどは補助対象とはなりませんのでご注意ください。

全国の観光地・観光産業における観光DX推進事業(販路拡大・マーケティング強化/収益・生産性向上)の申請要件
1.観光地の販路拡大・マーケティング強化
「観光地の販路拡大・マーケティング強化」枠では、事業計画書を作成し申請作業を行う「計画申請主体」と、その計画を基に取組を行い補助金を受けることができる「補助対象事業者」が共に事業を行うことになります。それぞれの対象となるのは下記のとおりです。
計画申請主体 | 補助対象事業者 |
---|---|
・地方公共団体 ・観光地域づくり法人(DMO) ・観光協会 ・観光事業者 等 | ・地方公共団体 ・観光地域づくり法人(DMO) ・観光協会 ・観光事業者 等 |
計画主体がDMO×補助対象事業者が観光事業者など、原則組み合わせは自由ですが、計画申請主体が観光事業者の場合、単独での取り組みではなく複数の観光事業者と事業を実施する必要があります。
2.観光産業の収益・生産性向上
「観光産業の収益・生産性向上」で対象となるのは、要件①を満たす宿泊事業者で、かつ要件②または要件③いずれか一方の要件を満たす事業者です。(①か②、または①か③の組み合わせが必須で、①のみ満たすという場合は対象外です)
要件 |
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要件①:旅館業法第3条第1項に規定する許可を受けた宿泊事業者 |
要件②:宿泊業の高付加価値化のための経営ガイドラインの登録を受けた方、又は同制度の登録申請をされた方 |
要件③:要件②の登録を受けておらず、有価証券報告書を内閣総理大臣に提出する会社又はその関連会社であり、かつ観光施設における心のバリアフリー認定制度の認定を取得済み又は 1 年以内に取得予定である方 |
旅館業法第3条第1項は下記のとおりです。
第三条 旅館業を営もうとする者は、都道府県知事(保健所を設置する市又は特別区にあつては、市長又は区長。)の許可を受けなければならない。ただし、旅館・ホテル営業又は簡易宿所営業の許可を受けた者が、当該施設において下宿営業を営もうとする場合は、この限りでない。
(旅館業法第3条第1項)
なお、旅行業法第2条では、旅行業を下記のように定義しています。
第二条 この法律で「旅館業」とは、旅館・ホテル営業、簡易宿所営業及び下宿営業をいう。
2 この法律で「旅館・ホテル営業」とは、施設を設け、宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業で、簡易宿所営業及び下宿営業以外のものをいう。
3 この法律で「簡易宿所営業」とは、宿泊する場所を多数人で共用する構造及び設備を主とする施設を設け、宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業で、下宿営業以外のものをいう。
4 この法律で「下宿営業」とは、施設を設け、一月以上の期間を単位とする宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業をいう。
5 この法律で「宿泊」とは、寝具を使用して前各項の施設を利用することをいう。
(旅行業法第2条)
このため、旅館、ホテル、民宿などが対象になるかと思います。
補助事業を実施する宿泊施設の所有者と運営者が異なる場合においては、宿泊事業者でない者も、当該宿泊施設を所有又は運営する宿泊事業者と運営委託関係又は賃貸借関係等にある場合に限って、補助対象事業者になり得るとしています。
宿泊事業者でも補助対象外となる要件
- 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律第2 条第 6 項に規定する店舗型性風俗特殊営業を営む者、また、住宅宿泊事業法第 3 条第 1 項に規定する住宅宿泊事業を営む者である
全国の観光地・観光産業における観光DX推進事業(販路拡大・マーケティング強化/収益・生産性向上)の補助金額・補助率
全国の観光地・観光産業における観光DX推進事業(販路拡大・マーケティング強化/収益・生産性向上)の補助金額・補助率は、下記のとおりです。
補助上限額 | 補助率 |
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1500万円 | 1/2 |
全国の観光地・観光産業における観光DX推進事業(販路拡大・マーケティング強化/収益・生産性向上)の補助対象事業・補助対象経費
1.観光地の販路拡大・マーケティング強化
観光地のコンテンツの販路拡大・マーケティング強化に資する地域一体でのデータ活用に向けたデジタルツールの導入に関する費用が補助対象となります。
そのため、複数の団体が連携して取り組む事業である必要があります。なお、「地域」の範囲については、市区町村単位であることといった制限はありません。「伊勢志摩地方」など特定の地域を対象に、その地域一体の消費拡大、誘客・再来訪促進等に繋がるものである必要があります。
デジタルツール例 |
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・ 観光アプリ ・ CRM(顧客管理システム) ・ 地域サイト等での多言語翻訳・情報発信ツール ・ DMP(データマネジメントプラットフォーム) ・ デジタルマップ ・ マーケティングツール ・ クーポン配布 ・ 口コミ・レビュー管理ツール ・ スタンプラリー ・ アクセス解析ツール ・ デジタルチケット ・ データ可視化ツール ・ 直販及び地域サイト(予約・決済が完結するものに限る)構築ツール ・ レポーティングツール ・ キャッシュレス決済端末 ・ 生成AI(サービスとして既に提供されているものに限る) ・ POS システム 等 |
2.観光産業の収益・生産性向上
観光産業の収益・生産性向上に資するデータ活用に向けたデジタルツールの導入に係る事業が補助
対象となります。
デジタルツール例 |
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・ CRM(顧客管理システム) ・ 宿泊予約システム ・ レベニューマネジメント ・ 清掃管理システム ・ MA(マーケティングオートメーション)ツール ・ 在庫管理システム ・ 自動チェックイン機 ・ 客室 IoT(照明/空調コントロール等) ・ スマートロック・カードロック ・ エネルギー管理システム(EMS) ・ キャッシュレス決済端末 ・ オーダーシステム ・ PMS(顧客予約管理システム) ・ 生成AI(サービスとして既に提供されているものに限る) ・ PMS(顧客予約管理システム)オプション 等 |
月額・年額で使用料金が定められている形態の製品(ハードウェアのレンタル・リース料、ソフトウェアのサブスクリプション販売形式、クラウドサービスの利用料等)は、最大 2 年分の費用が補助対象となります。
全国の観光地・観光産業における観光DX推進事業(販路拡大・マーケティング強化/収益・生産性向上)の申請に必要な書類等
全国の観光地・観光産業における観光DX推進事業(販路拡大・マーケティング強化/収益・生産性向上)の申請にあたって必要となるものについては、下記のとおりです。
1.観光地の販路拡大・マーケティング強化
様式名 | 概要 |
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【様式 1】事業計画書(観光地の販路拡大・マーケティング強化) | 5/15以降は申請システムにて直接記入 |
見積書・相見積書 | できるかぎり「一式」のようなまとめたものにはしないこと |
【様式 2】業者等選定理由書 | 理由があり相見積もりが取得できない場合に提出 |
ツールの概要、カタログ等 | 導入予定のデジタルツールの概要が明示されているもの |
財務状況が分かる資料 | 地方公共団体以外が計画申請主体となる場合は必須 |
その他、申請内容を補足する参考資料 | 任意で提出 |
宿泊施設の運営委託関係又は賃貸借関係等を示す証 跡 | 補助事業を実施する宿泊施設の所有者と運営者が異なる場合において、申請者と旅館業法第 3条第 1 項に規定する許可の名義が異なる場合、提出 |
2.観光産業の収益・生産性向上
様式名 | 概要 |
---|---|
【様式 1 】事業計画書(観光産業の収益・生産性向上) | 5/15以降は申請システムにて直接記入 |
旅館業法上の営業許可証の写し | 地方公共団体が交付する許可証等の写しを提出 |
見積書・相見積書 | できるかぎり「一式」のようなまとめたものにはしないこと |
【様式 2】業者等選定理由書 | 理由があり相見積もりが取得できない場合に提出 |
ツールの概要、カタログ等 | 導入予定のデジタルツールの概要が明示されているもの |
財務状況が分かる資料 | 地方公共団体以外が計画申請主体となる場合は必須 |
その他、申請内容を補足する参考資料 | 任意で提出 |
宿泊業の高付加価値化のための経営ガイドライン(登録番号または登録申請送信メールの写し) | 該当する場合に提出 |
・有価証券報告書の写し ・観光施設における心のバリアフリー認定制度(取得計画表または認定通知書の写し) | 該当する場合に提出 |
さいごに
さまざまなところでデジタル化が当たり前のようになる中、いつかは対応しなければ…と思いつつ、なかなか本業の合間に行おうとしても、どうしても優先順位は後回しになりがちかと思います。
特に観光業界の場合は、関係者との取引の兼ね合い上容易に変更が難しい、内部にデジタルに詳しい人がいないといったこともあるかと思います。
単独ではなく、地域一体で取り組むことで進めやすいという点は多大にあるかと思いますので、思い切って取り組んでみようという地域の方々は、補助金活用を検討いただければと思います。