補助金の相談を受けていると、
「事業計画書は融資用と同じでいいですか?」
「計画書はどこまで作り込めばいいのでしょうか?」
といった質問をよくいただきます。
補助金申請における事業計画書は、金融機関向けの事業計画書とは役割や評価軸が異なります。
このページでは、初めて補助金を検討する方向けに、補助金特有の事業計画書の考え方と注意点を分かりやすく解説します。
補助金申請で「事業計画書」が求められる理由
補助金は、単に設備やサービスを導入すれば支給される制度ではありません。
「その投資が、なぜ今の事業に必要なのか」
「将来どのような成果につながるのか」
を、第三者が理解できる形で説明する必要があります。
そのため、補助金では次の点が重視されます。
- 投資の背景・目的が明確であるか
- 事業としての実現可能性があるか
- 補助金終了後も継続する取り組みか
これらを整理するために、事業計画書の提出が求められています。
補助金用と融資用の事業計画書は何が違うのか
「事業計画書」と聞くと、金融機関向けのものを想像される方も多いですが、
補助金用の計画書は、評価されるポイントが異なります。
融資用の事業計画書の特徴
- 返済能力が最重要
- 過去実績や財務内容が重視される
- 安定性・確実性を重視
補助金用の事業計画書の特徴
- 新しい取り組みであるか
- 政策目的(生産性向上・付加価値向上など)に合致しているか
- 投資による効果が説明できているか
補助金では、「なぜその挑戦をするのか」というストーリー性も重要になります。
よくある誤解|事業計画書=作文ではない
補助金の計画書というと、
「きれいな文章を書けばいい」
「専門用語をたくさん使えば評価される」
と誤解されることがあります。
しかし実際には、
- 課題と施策のつながり
- 投資内容と効果の因果関係
- 数値の根拠が説明できるか
といった論理の一貫性が重視されます。
文章が上手でも、「なぜその投資が必要なのか」が説明できていなければ評価は伸びません。
補助金の事業計画書で特に重視されるポイント
補助金ごとに細かな違いはありますが、共通して重要になるのは次の点です。
- 現在の課題が整理されているか
- 新規の取り組みや業務改善の内容が具体的か
- 投資内容と成果が結びついているか
- 補助金終了後の姿が描けているか
特に近年は、「従来の延長ではない取り組みかどうか」が問われる傾向が強まっています。
よくあるNG例|計画書が形だけになってしまうケース
次のような計画書は、評価が伸びにくい傾向があります。
- 設備の説明だけで終わっている
- 投資額に対する効果が曖昧
- 数値計画が感覚的
- 他社にも当てはまりそうな内容
補助金は競争性のある制度のため、「その会社ならではの理由」が見えないと不利になります。
事業計画書は「補助金のためだけ」に作らなくてよい
補助金用の事業計画書は、申請のためだけに作るものではありません。
- 設備投資の判断材料
- 金融機関への説明資料
- 社内での方向性共有
といった形で、申請後も活用できる内容にすることが重要です。
実務上も、「計画書を作ったことで投資判断が整理できた」という声は少なくありません。
当事務所の支援スタンスについて
当事務所では、「採択される計画書を書くこと」だけを目的とした支援は行っていません。
- 事業として無理がないか
- 補助金を使わない選択肢も含めて妥当か
- 実行後まで見据えた内容になっているか
を重視し、事業全体の整理の一環として計画書づくりを支援しています。
まとめ|補助金の事業計画書は「考えを整理する道具」
補助金申請における事業計画書は、単なる提出書類ではなく、
- 事業の方向性を整理し
- 投資の妥当性を見直し
- 将来の選択肢を広げる
ための道具でもあります。
「計画書が必要だから書く」のではなく、
「事業を考える過程として作る」
という視点を持つことで、補助金申請の質も高まります。
