補助金と助成金は、どちらも国や自治体の支援制度ですが、目的・仕組み・難易度が大きく異なります。

簡単に言うと、

  • 補助金
     👉 新製品・新サービス開発、設備投資など
     👉 事業の成長や挑戦を後押しする制度
  • 助成金
     👉 雇用、教育訓練、労務環境の整備など
     👉 一定の条件を満たせば受給できる制度

「もらえるお金」という点だけで選んでしまうと、制度選びを誤り、結果的に時間も労力も無駄になることがあります。

まずは、それぞれの違いを正しく理解することが重要です。

補助金と助成金の違いを一覧で比較

項目補助金助成金
主な目的新事業・設備投資・付加価値向上雇用促進・人材育成・労務改善
採択方式審査あり(採択制)要件を満たせば原則支給
難易度高め比較的低め
競争あり(不採択あり)基本的になし
必要書類事業計画・数値計画が中心労務書類・就業規則等
主な注意点実績報告・要件逸脱労務不備・書類不足

補助金はどんな制度か

補助金は、「新しい取り組みを行う事業者を選抜して支援する制度」です。

補助金の主な特徴

  • 新製品・新サービスの開発が前提になることが多い
  • 設備投資やシステム導入とセットで申請する
  • 事業計画書による審査がある
  • 不採択になるケースも珍しくない

代表的な補助金には、以下のようなものがあります。

  • ものづくり補助金
  • IT導入補助金
  • 新事業進出補助金
  • 事業承継・M&A補助金 など

補助金は「事業として本当に成り立つか」が厳しく見られるため、単なる設備更新や効率化だけでは対象にならないケースもあります。

助成金はどんな制度か

助成金は、「一定の条件を満たす取り組みを行えば支給される制度」です。

助成金の主な特徴

  • 雇用保険適用事業所であることが前提
  • 就業規則や労務管理体制が重要
  • 条件を満たせば原則支給される
  • 金額は補助金より小さいことが多い

代表的な助成金には、

  • 人材開発支援助成金
  • キャリアアップ助成金
  • 両立支援等助成金

などがあります。

助成金は「簡単」と思われがちですが、労務面の不備があると不支給になるケースも多いため注意が必要です。

どちらを使うべきか?【判断の目安】

ここが、もっとも重要なポイントです。

補助金が向いているケース

  • 新しい製品・サービスを立ち上げたい
  • 事業の柱を増やしたい
  • 付加価値を高める投資をしたい
  • 数値計画を含めた事業計画を作れる

👉 「攻めの投資」を考えている企業向け

助成金が向いているケース

  • 人材育成や研修を行いたい
  • 雇用環境を整備したい
  • 労務管理がある程度整っている
  • 確実性を重視したい

👉 「足元を固める取り組み」を行う企業向け

無理にどちらかを選ばなくてもよい

重要なのは、「今の自社に合っているかどうか」です。

補助金・助成金は、使わなければならない制度ではありません

状況によっては、

  • 今は使わない
  • まず経営計画や体制整備を優先する

という判断も、十分に合理的です。

よくある誤解・間違いやすいポイント

「補助金は申請すればもらえる」

誤りです。
補助金は審査制であり、不採択は珍しくありません。

「助成金は簡単にもらえる」

誤解です。
労務管理や書類不備で不支給になるケースも多くあります。

「とりあえず使える制度を探す」

危険です。
制度ありきで動くと、事業と制度が噛み合わなくなります。

不正・トラブルになりやすいポイントの違い

補助金で多いトラブル

  • 要件を満たさない経費を計上
  • 計画と異なる内容で事業を実施
  • 実績報告が適切にできない

最悪の場合、返還やペナルティの対象

助成金で多いトラブル

  • 就業規則や労務管理の不備
  • 対象外となる従業員を含めて申請
  • 記録・証憑の不足

不支給・支給取消になるケース

迷ったときの考え方

制度選びで迷った場合は、
次の順番で整理するのがおすすめです。

  1. 今、会社として何を実現したいか
  2. 新しい挑戦か、体制整備か
  3. 計画づくりや管理にどこまで対応できるか

その上で、

  • 補助金が合うのか
  • 助成金が合うのか
  • 今は見送るべきか

を判断すると、無理のない選択ができます。

まとめ

補助金と助成金は、似ているようで、目的も考え方も異なる制度です。

  • 補助金:事業成長・新しい挑戦向け
  • 助成金:雇用・人材・労務整備向け

重要なのは、「もらえるかどうか」ではなく「使うべきかどうか」

制度を正しく理解し、自社に合った選択をすることが、結果的に最も大きな成果につながります。

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