令和7年度補正予算が成立し、中小企業・中堅企業向け支援策の全体像が見えてきました。
今回の補正予算の特徴は、単発の補助金を増やすというよりも、
- 成長投資
- 生産性向上・省力化
- 新事業・事業転換
といった政策目的ごとに、既存制度を整理・再編しながら継続的に実行していく構成になっている点です。
本記事では、補正予算資料をもとに、来年度に実行が見込まれる主な補助金・支援策を体系的に整理します。
来年度補助金の全体像(まずは整理)
令和7年度補正予算における中小企業向け支援は、大きく次の3つに分類できます。
- 成長投資支援
- 生産性向上・省力化投資支援
- 新事業・革新的取組支援(既存基金の活用)
以下、それぞれを具体的に見ていきます。
成長投資支援(「成長する企業」を明確に後押し)
中小企業成長加速化補助金(拡充)
売上高100億円規模を目指すなど、明確な成長戦略を持つ中小企業を対象とした補助金です。
- 大型設備投資
- 生産能力の拡張
- 高付加価値分野への展開
など、従来の補助金よりも一段大きな投資が想定されています。
大規模成長投資補助金(中堅・中小企業向け)
こちらは、工場新設・大規模設備投資など、数十億円規模の投資を対象とした補助金です。
- 中堅企業
- 成長意欲の高い中小企業
- 一部スタートアップ
が対象となり、地域経済の中核となる企業の投資を強力に後押しします。
生産性向上・省力化投資支援(人手不足への本命対策)
デジタル化・AI導入補助金
IT導入補助金の拡充・再整理と考えられる補助金です。IT導入補助金は、
- 会計・販売管理・生産管理
- AI・RPA・データ活用
- 業務の自動化・効率化
といった、中小企業のDXを支援する補助金です。
従来のIT導入補助金をベースに、AI活用や高度なデジタル化まで射程に入れた制度へと進化していくと見込まれます。
小規模事業者持続化補助金
小規模事業者向けの定番補助金も、引き続き実行が見込まれます。
- 販路開拓
- 業務効率化
- 経営基盤の強化
など、小さな改善を積み重ねる取組を支援する位置づけです。
省力化投資補助金
人手不足への直接的な対策として、省力化投資支援も大きな柱です。
- ロボット・自動化設備
- 自動搬送・検査装置
- 省人化につながる機械・システム
を対象とし、
「人を増やす」ではなく「人に依存しない」経営への転換を支援します。
事業承継・M&A補助金
事業承継やM&Aを通じた生産性向上を支援する補助金です。
- 親族内・従業員承継
- 第三者承継(M&A)
- 承継後の設備投資・体制整備
など、引き継ぎ後の成長・改善までを支援します。
新事業・革新的取組支援(既存基金の活用)
革新的製品等開発支援
= ものづくり補助金の継続枠
補正予算では「革新的製品等開発」と整理されていますが、
これはものづくり補助金が名称や要件を調整しつつ継続されるものと考えられます。
- 新製品・新サービス開発
- 生産プロセスの高度化
- 付加価値向上投資
といった、中小企業の競争力強化を目的とする王道の補助金です。
新事業進出支援
= 新事業進出補助金の継続枠
事業再構築補助金の流れを汲む新事業進出補助金も、整理された形で継続が見込まれます。
- 新市場への進出
- 既存事業とは異なる分野への展開
- ビジネスモデル転換
など、「守り」ではなく成長のための転換が評価される制度です。
今後の補助金活用で重要な考え方
今回の補正予算を見ていると、国が補助金に込めている考え方が、これまでよりもはっきりしてきたと感じます。
まず、「古くなったから入れ替える」といった設備更新は、以前より評価されにくくなっています。
その代わりに重視されているのが、
- 事業を成長させるための投資か
- 仕事のやり方が変わり、生産性が上がるか
- 将来的に賃上げや人材確保につながるか
といった点です。
難しく考える必要はありませんが、「この投資をすると、会社はどう良くなるのか」を自分の言葉で説明できることが大切になっています。
また最近の補助金では、申請書の出来栄え以上に、経営の方向性が整理されているかが見られる傾向も強まっています。
補助金は、「もらえるかどうか」から考えるものではなく、やりたいことを実現するために、上手に使うサポート資金として考える時代に入っています。
これから補助金を初めて使う方も、すでに何度か活用している方も、「自社はこれから何を目指すのか」を一度整理してみると、補助金選びや申請がぐっと楽になるはずです。
経営戦略を実行するための手段として使う時代に入っています。
まとめ
令和7年度補正予算では、これまで個別に見えがちだった補助金が、「何を目指す企業を支援するのか」という考え方で整理されてきました。
ポイントとなるのは、
- 会社を大きく成長させるための投資
- 日々の仕事を効率化し、生産性を高める取組
- 新しい事業や分野にチャレンジする取組
この3つが、今後の補助金の大きな柱になっている点です。
また、多くの補助金は、補正予算に加えて、これまで積み立てられてきた基金を活用する形で、引き続き実行される見込みです。
制度の名前や細かな条件は変わることがありますが、「支援の方向性そのものがなくなる可能性は低い」と考えてよいでしょう。
これからは、「どの補助金が使えるか」だけを見るのではなく、自社はいまどの段階にあり、次に何を目指すのかを考えることが大切になります。
そのうえで補助金を選ぶことで、無理のない計画になり、補助金もより活かしやすくなっていきます。
